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エリザベート嬢はあきらめない
エリザ、悪役令嬢にされる
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「ウィリさま、次の授業は同じ教室よ。一緒に行きましょ」
ロリエッタはそう言って、廊下で出会ったウィリ様の腕に自分の手を絡めた。
「おい!その手を離せ」
エドは今日も彼女に注意をする。
「え~?エドったらウィリ様にヤキモチを焼いているの?」
「はあ?」
「エドって子供ね。子供って素直じゃなくて、好きな女の子には意地悪なのよね?」
「?!」
どうして、そう言う解釈になるのか分からないけれど、彼女の中では、ウィリ様もエドも自分に夢中になっているらしい。
何時の間にか私やアメリアと同じように、『ウィリ様』『エド』と呼んでいるし・・
彼女がウィリ様やエドを上目遣いに見上げると、何故か周りにいる男子生徒の瞳にハートが浮かぶ。そして彼らは、次々に彼女の信者になっていくのだ。
そんな日々が続き、最近ではウィリ様とエドに疲れが見えてきた。
今日の特別授業の先生もすでに彼女の信者だった。ロリエッタをまるで聖女のように扱って、光魔法と聖女様の話を夢中でしていた。
ロリエッタが何か発言する度(たび)に、先生もクラスメイト達も目を輝かせて、大袈裟(おおげさ)に頷く。
A組で入学当時と変わらないのは、私とエドとウィリ様だけのようだ。
この厚かましい女生徒の何処に、皆が酔いしれるような魅力があるのだろう?私には全くわからない。
ただ、このままにしていたら、ウィリ様とエドが精神的に参ってしまうのでは?と心配だった。
お昼ご飯を食べたあと4人で寛いでいる時も、まるで毎日の日課のように、ピンクブロンドの髪をふわふわとさせながら、ロリエッタが私達のところにやって来るようになった。
私達?いや違う。
ウィリ様とエドの所にやって来るのだ。
「ウィリさま~」
私とアメリアの前をサッと横切り、まるで見えていないかのように無視をして、ウィリ様の腕を持つ。
「ロリエッタ嬢、腕を持つのはやめてくれないか」
ウィリ様はそう言って、彼女の手を外そうとした。
「もう、ウィリ様は恥ずかしがり屋なんだから~。本当は嬉しいくせに」
相変わらず伝わらない。ウィリ様は私の方を見た。
(もうウィリ様が注意するしかないわよ。頑張って!)
私は心の中でそう言いながら、ウィリ様を見つめた。その時、ブルーの瞳が頷いたような気がした。
「ロリエッタ嬢、いい加減にして欲しい。今まで黙っていたけれど、君は何か勘違いをしているようだね。
僕は君を歓迎していないし、友人達も困っている。僕達の寛ぐ時間の邪魔をしないでほしい」
ロリエッタの手を自分の腕から外して、今まで見た事もないような、冷めた目で彼女を見た。
「ウィリさま~」
それでも彼女はあきらめない。
外された手をもう一度、ウィリ様の腕に伸ばした。
「ロリエッタ様、ウィリアム殿下は嫌がっておられますわ。それ以上の押し付けは失礼ですわよ。
私達、今から大切な話を致しますの。申し訳ありませんが、貴方は外して頂けません?」
私は出来るだけ冷静にそう言った。
「ウィリさま~」
ロリエッタはもう一度、上目遣いにウィリ様を見上げて、名前を呼んだ。
けれどウィリ様は珍しく先ほどの冷めた表情を崩さない。エドも同じような表情で彼女を見ている。
「私達が場所を変えましょう」
アメリアはそう言って私を引っ張って歩き始めた。エドとウィリ様もあとに続く。
ロリエッタはキッとエリザを睨んだ。けれどエリザは彼女を見ていないので気が付かない。
「なぜなの?2人とも私に夢中のはずよ。どうしてその女と行ってしまうの?
悪役令嬢のくせに・・エリザベート・ノイズ!許さないわ!」
そんな独り言を言いながら、去っていく4人を見ているロリエッタの身体は怒りで震えていた。
その翌日から、『エリザベート・ノイズ公爵令嬢が、光の聖女ロリエッタ嬢に嫉妬して、かなり酷いイジメをしている』という噂が、学園内に広がっていった。
「ウィリ様やエド様と親しく話をしていたら、エリザベート様に睨まれて怖かった」
「ウィリ様はエリザベート様が見ている所では私に冷たくなさるの。私が彼女に嫉妬されないように、気を配っての事ですわ」
「エド様もエリザベート様には気をつかっているみたい。だからストレスが溜まって、いつも私に八つ当たりしておられるの。」
「アメリア様は、すっかりエリザベート様に感化されてしまっているわ」
ロリエッタの言葉は学園中に広がっていった。
「私の教科書が破られて捨てられてたの。私を嫌っている人の仕業だわ。もしかしたら、エリザベート様かしら?」
彼女が言ったらしく、私は彼女の教科書を破り捨てた犯人にされてしまっていた。(私の耳に入らなかったので、アメリアに聞くまで知らなかったのだけれど。)
ある日、先生に頼まれて、下の階の教室に書類を運んでいる時だった。
荷物を持って、階段をゆっくり降りていたら、上から駆け降りて来たロリエッタが、私の横に並んだ。
そして、そこから三段ほど滑り落ちたのだ。もちろん私の身体は彼女に触れていない。
「エリザベート様が私を突き落としたのかしら?私あの方に嫌われているから・・」
けれど、助けに来た男子生徒にそう言っている、彼女の声が聞こえた。
きっとその男子生徒の瞳にもハートが浮かんでいるのだろう。彼は憎々し気に私を見たあと、甲斐甲斐しく彼女の介抱をしていた。
両手で書類を持っている私が、どのようにしたら、彼女を突き落とせると言うのだろう?身体に触れてもいないのに。
どんどん話はエスカレートしていく。
「私、エリザベート様に嫌われているの。毎日、毎日、1人の時に呼び出されて注意をされるの。
男爵令嬢のくせに光属性だなんて、生意気だって言われた事もあるわ」
ロリエッタがそう言うと、私に確認することもなく噂は広がっていく。
エリザベートの悪役令嬢ぶりは、生徒会室にも届いていた。
(エリザベート嬢、相変わらず忙しそうだね。)
あのプライドの高い令嬢が、噂のような詰まらないイジメをするとは考えられなかった。
むしろ、入学式で見たあの光属性の女生徒ロリエッタ・トリエールこそ、何か怪しいものを感じた。(それは彼女が魅了魔法を使っている気配だとは、知らないはずだけれど。)さすがアルベール・ロレーヌだ。
あの光属性の女生徒、何かあるのだろうか?
アルベールは時間が戻る前の自分が、彼女に陶酔していたとは知らない。レティシア様の加護の印の紫の薔薇が、彼の右手の指輪の下で鈍く輝いていた。
何も事件は起こっていないのに胸騒ぎがする。
アルベールはロリエッタ・トリエールという女生徒について、調べてみる事にした。何か起こってからでは取り返しがつかない。
リアム先輩の妹のエリザベート・ノイズ嬢。傲慢で自分勝手なわがままな令嬢。ウィリアム王太子殿下と婚約するのは秒読みと噂で聞いている。
ドリミア学園で何度も会って話をしたエリザベート嬢は、噂とは違っていた。
周囲が彼女に甘いのは本当だったけれど。
誰よりも心優しく正義感に燃えた女性のように感じた。その育ちゆえに、その正義感ゆえに、彼女の言葉は厳しくも傲慢にも取られてしまうのだろう。ハッキリと自分の意見を話す、あの凛としたプライドの高さ。
そんな彼女のヴァイオレットの瞳を思い出して、自分の胸の鼓動が高まっている事に気がつかないアルベール・ロレーヌ。
(学園の噂の事をリアム先輩に報告しておこう。そうすれば、何かあったらあの兄が放っておかないだろう。)
あの華やかで見ていて飽きない公爵令嬢は、今ごろどうしているだろう?
黒い瞳が恋に揺れる。そうと気づかずにその女性の事ばかりが頭に浮かぶ。ダークブロンドの髪。ヴァイオレットの瞳。1学年下のその女生徒は尊敬するリアム先輩の妹だ。
自分がその『見ていて飽きない公爵令嬢』のことばかり考えている事に、まったく気がつかないアルベールだった。
ロリエッタはそう言って、廊下で出会ったウィリ様の腕に自分の手を絡めた。
「おい!その手を離せ」
エドは今日も彼女に注意をする。
「え~?エドったらウィリ様にヤキモチを焼いているの?」
「はあ?」
「エドって子供ね。子供って素直じゃなくて、好きな女の子には意地悪なのよね?」
「?!」
どうして、そう言う解釈になるのか分からないけれど、彼女の中では、ウィリ様もエドも自分に夢中になっているらしい。
何時の間にか私やアメリアと同じように、『ウィリ様』『エド』と呼んでいるし・・
彼女がウィリ様やエドを上目遣いに見上げると、何故か周りにいる男子生徒の瞳にハートが浮かぶ。そして彼らは、次々に彼女の信者になっていくのだ。
そんな日々が続き、最近ではウィリ様とエドに疲れが見えてきた。
今日の特別授業の先生もすでに彼女の信者だった。ロリエッタをまるで聖女のように扱って、光魔法と聖女様の話を夢中でしていた。
ロリエッタが何か発言する度(たび)に、先生もクラスメイト達も目を輝かせて、大袈裟(おおげさ)に頷く。
A組で入学当時と変わらないのは、私とエドとウィリ様だけのようだ。
この厚かましい女生徒の何処に、皆が酔いしれるような魅力があるのだろう?私には全くわからない。
ただ、このままにしていたら、ウィリ様とエドが精神的に参ってしまうのでは?と心配だった。
お昼ご飯を食べたあと4人で寛いでいる時も、まるで毎日の日課のように、ピンクブロンドの髪をふわふわとさせながら、ロリエッタが私達のところにやって来るようになった。
私達?いや違う。
ウィリ様とエドの所にやって来るのだ。
「ウィリさま~」
私とアメリアの前をサッと横切り、まるで見えていないかのように無視をして、ウィリ様の腕を持つ。
「ロリエッタ嬢、腕を持つのはやめてくれないか」
ウィリ様はそう言って、彼女の手を外そうとした。
「もう、ウィリ様は恥ずかしがり屋なんだから~。本当は嬉しいくせに」
相変わらず伝わらない。ウィリ様は私の方を見た。
(もうウィリ様が注意するしかないわよ。頑張って!)
私は心の中でそう言いながら、ウィリ様を見つめた。その時、ブルーの瞳が頷いたような気がした。
「ロリエッタ嬢、いい加減にして欲しい。今まで黙っていたけれど、君は何か勘違いをしているようだね。
僕は君を歓迎していないし、友人達も困っている。僕達の寛ぐ時間の邪魔をしないでほしい」
ロリエッタの手を自分の腕から外して、今まで見た事もないような、冷めた目で彼女を見た。
「ウィリさま~」
それでも彼女はあきらめない。
外された手をもう一度、ウィリ様の腕に伸ばした。
「ロリエッタ様、ウィリアム殿下は嫌がっておられますわ。それ以上の押し付けは失礼ですわよ。
私達、今から大切な話を致しますの。申し訳ありませんが、貴方は外して頂けません?」
私は出来るだけ冷静にそう言った。
「ウィリさま~」
ロリエッタはもう一度、上目遣いにウィリ様を見上げて、名前を呼んだ。
けれどウィリ様は珍しく先ほどの冷めた表情を崩さない。エドも同じような表情で彼女を見ている。
「私達が場所を変えましょう」
アメリアはそう言って私を引っ張って歩き始めた。エドとウィリ様もあとに続く。
ロリエッタはキッとエリザを睨んだ。けれどエリザは彼女を見ていないので気が付かない。
「なぜなの?2人とも私に夢中のはずよ。どうしてその女と行ってしまうの?
悪役令嬢のくせに・・エリザベート・ノイズ!許さないわ!」
そんな独り言を言いながら、去っていく4人を見ているロリエッタの身体は怒りで震えていた。
その翌日から、『エリザベート・ノイズ公爵令嬢が、光の聖女ロリエッタ嬢に嫉妬して、かなり酷いイジメをしている』という噂が、学園内に広がっていった。
「ウィリ様やエド様と親しく話をしていたら、エリザベート様に睨まれて怖かった」
「ウィリ様はエリザベート様が見ている所では私に冷たくなさるの。私が彼女に嫉妬されないように、気を配っての事ですわ」
「エド様もエリザベート様には気をつかっているみたい。だからストレスが溜まって、いつも私に八つ当たりしておられるの。」
「アメリア様は、すっかりエリザベート様に感化されてしまっているわ」
ロリエッタの言葉は学園中に広がっていった。
「私の教科書が破られて捨てられてたの。私を嫌っている人の仕業だわ。もしかしたら、エリザベート様かしら?」
彼女が言ったらしく、私は彼女の教科書を破り捨てた犯人にされてしまっていた。(私の耳に入らなかったので、アメリアに聞くまで知らなかったのだけれど。)
ある日、先生に頼まれて、下の階の教室に書類を運んでいる時だった。
荷物を持って、階段をゆっくり降りていたら、上から駆け降りて来たロリエッタが、私の横に並んだ。
そして、そこから三段ほど滑り落ちたのだ。もちろん私の身体は彼女に触れていない。
「エリザベート様が私を突き落としたのかしら?私あの方に嫌われているから・・」
けれど、助けに来た男子生徒にそう言っている、彼女の声が聞こえた。
きっとその男子生徒の瞳にもハートが浮かんでいるのだろう。彼は憎々し気に私を見たあと、甲斐甲斐しく彼女の介抱をしていた。
両手で書類を持っている私が、どのようにしたら、彼女を突き落とせると言うのだろう?身体に触れてもいないのに。
どんどん話はエスカレートしていく。
「私、エリザベート様に嫌われているの。毎日、毎日、1人の時に呼び出されて注意をされるの。
男爵令嬢のくせに光属性だなんて、生意気だって言われた事もあるわ」
ロリエッタがそう言うと、私に確認することもなく噂は広がっていく。
エリザベートの悪役令嬢ぶりは、生徒会室にも届いていた。
(エリザベート嬢、相変わらず忙しそうだね。)
あのプライドの高い令嬢が、噂のような詰まらないイジメをするとは考えられなかった。
むしろ、入学式で見たあの光属性の女生徒ロリエッタ・トリエールこそ、何か怪しいものを感じた。(それは彼女が魅了魔法を使っている気配だとは、知らないはずだけれど。)さすがアルベール・ロレーヌだ。
あの光属性の女生徒、何かあるのだろうか?
アルベールは時間が戻る前の自分が、彼女に陶酔していたとは知らない。レティシア様の加護の印の紫の薔薇が、彼の右手の指輪の下で鈍く輝いていた。
何も事件は起こっていないのに胸騒ぎがする。
アルベールはロリエッタ・トリエールという女生徒について、調べてみる事にした。何か起こってからでは取り返しがつかない。
リアム先輩の妹のエリザベート・ノイズ嬢。傲慢で自分勝手なわがままな令嬢。ウィリアム王太子殿下と婚約するのは秒読みと噂で聞いている。
ドリミア学園で何度も会って話をしたエリザベート嬢は、噂とは違っていた。
周囲が彼女に甘いのは本当だったけれど。
誰よりも心優しく正義感に燃えた女性のように感じた。その育ちゆえに、その正義感ゆえに、彼女の言葉は厳しくも傲慢にも取られてしまうのだろう。ハッキリと自分の意見を話す、あの凛としたプライドの高さ。
そんな彼女のヴァイオレットの瞳を思い出して、自分の胸の鼓動が高まっている事に気がつかないアルベール・ロレーヌ。
(学園の噂の事をリアム先輩に報告しておこう。そうすれば、何かあったらあの兄が放っておかないだろう。)
あの華やかで見ていて飽きない公爵令嬢は、今ごろどうしているだろう?
黒い瞳が恋に揺れる。そうと気づかずにその女性の事ばかりが頭に浮かぶ。ダークブロンドの髪。ヴァイオレットの瞳。1学年下のその女生徒は尊敬するリアム先輩の妹だ。
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