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エリザベート嬢はあきらめない
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新しい学年になって私の周りは少し変わった。
アメリアの他にマルティナが何時ものメンバーに入ったから。
あれから毎日、彼女は私のクラスに話をしに来た。ロリエッタの取り巻きメンバー達に『裏切り者』と呼ばれても全く気にした様子もなく、いつも楽しそうにやってくる。
アメリアとも打ち解けて、「アメリア」「マルティナ」「エリザ」と名前で呼び合うようになっていった。
マルティナとは友達になったけれど、残念ながら私の周りから、少しずつ友人がいなくなっていった。
我が国の次期聖女のロリエッタ・トリエール男爵令嬢と、金髪の貴公子ウィリアム王太子殿下の恋を邪魔するエリザベート・ノイズ公爵令嬢。
「エリザベート様は幼い頃から最有力婚約者候補ではあるけれど、まだ婚約はしていないわ」
「彼女のワガママな性格に、ウィリアム殿下も嫌気がさしているのだとか」
「最近はウィリアム殿下も、優しく気取らないロリエッタ様に心惹かれているらしいわ」
「私も聞きましたわ」
「それに嫉妬したエリザベート様が、ロリエッタ様に辛く当たっていらっしゃるらしいわよ」
「まあ!怖い!」
貴族のご婦人方や学園の噂好きな生徒達は、この楽しい噂話に花を咲かせる。
ウィリ様、エド、サウスパールの2人、と、アメリア、マルティナ。
それと聖女レティシアの誕生パーティーで『幸運を呼ぶお守り』をもらって、そっと身体に付けている人達。
その他の皆さまは、彼女に魅了され、噂を信じて私から離れて行ってしまった。
マルティナもどうやら、あの誕生パーティーに参加していたようだ。
「幸運を呼ぶお守り」がなかったらどうなっていただろうと、考えただけで怖くなる。お祖母様(レティシア様)守って下さってありがとうございます。
私はこの『幸運を呼ぶお守り』の発案者がお兄様だという事をしらなかった。
お兄様が私達に起こった『1度目の惨劇』を聞いて、私を守るために、『幸運を呼ぶお守り』をパーティーの参加者全員に渡す事をレティシア様に提案して下さっていたのだ。
そして残念な事がもう一つある。私とアメリアはもう生徒会の会長には行っていない。『アル』は『アルベール会長』に戻ってしまった。いや、以前よりも、もっと遠い存在になってしまった。
生徒会の会長室の前で、ロリエッタがドルマンの声と共に消えて行った日を最後に、アルは私を避けるようになった。せっかく『エリザ』『アル』そう呼び合って心を通わせる事が出来たのに。
あの日、お兄様が現れてアルと話をしている。その数日後にまるで人が変わったように、ロリエッタの言いなりになってしまったのだ。
魅了魔法とは、こんな風に人を変えてしまうのか。
だとしたら、あれはアルの本心ではない。魅了の力で心を操られているだけ。人の心はその人のものだ。許せない!
私はフツフツと怒りが込み上げて来るのを止めれなかった。人の心を操る彼女が許せなかった。
何かがプツリと外れた。
それが何なのか分からなかったけれど、沢山の情報が急に私の中に流れてきて、魔力が驚くほど強くなっていくのを感じた。
「エリザベート!」
その時、レティシア様が現れて私の名前を呼んだ。
私は急に身体の力が抜けて、レティシア様の腕の中に倒れ込んだ。
どれくらい時間が経ったのだろう。先ほどのアレは、夢だったのだろうか?目覚めた時には身体も魔力もいつもと変わっていなかった。
けれど、アレは本当にあった事だ。何故なら先ほど流れて来た莫大な情報が、今も私の中に残っているから。
私は自分の生まれた日の、レティシア様と両親の話し合いを見ていた。先ほど流れてきた膨大な情報の中にあったのだ。
『「マーガレット、アフレイド様、少しお話しないといけない事があります」』
レティシア様は話し始めた。
『「この赤ん坊、エリザベートは光魔法が使えるわ。ヴァイオレットの瞳を持つ聖女。私と同じ存在になり得る子供です」』
『「マーガレットが産んだエリザベートも、ヴァイオレットの瞳を持つけれど、小さな光魔法しか使えない」
両王家にこう伝えて、マーガレットと同じく光魔法は使えないと公表する事もできるわよ』
『「ドリミア王国には、聖女はもう一人現れます。これこそ神託でわかっている事です。神託がなかったのは、この子の存在。
どうしますか?
アフレイド・ノイズ魔法騎士団総団長殿。」』
『「私は手元で育てたいわ。身内の聖女様はお母さま一人で充分です。娘まで教会に渡してしまいたくは、ありませんわ。」
「レティシア様にきちんと光魔法の魔力を封印して頂き、普通の娘として育てる事を希望致します。」』
『「光魔法は使えるけれど、聖女様になれるレベルではなく、小さな光を操れるだけ。屋敷の外でその力を使うと、聖女様と間違えられて、世間が混乱するから、外では絶対に使ってはいけません。」
両王家にも、エリザベート本人にも、このように話せば良いではありませんか。』
『本当の事を話せば、王家に囲われてしまいますよ。それほど、魅力的な存在なのですから。』
『「後悔など致しませんわ
「レティシア様。宜しくお願い致します」』
何ということだろう。私はこれほど両親やお祖母様に大切にされて来たんだ。
「お祖母様」
私は側(そば)で見守ってくれているレティシア様に声をかけた。
「まだ、その時ではないわ」
レティシア様が言った。
「何かあったのね。私の封印が解けるほど、貴方は憤って(いきどおって)いたわ」
それももう分かってしまった。『魔法騎士団の特別室』での様子も、全て頭の中に流れて来たから。
「お祖母様、ロリエッタ様ではなくて、私が瘴気の浄化をしてはいけませんか?」
そう尋ねてみた。私なら出来る。それならアルはあの人の側から離れられるではないか。
「それは出来ないの。時間が戻る前に瘴気を浄化したのがロリエッタ様だったから。貴方が浄化してしまうと、力が大き過ぎて、これからの全ての流れが変わってしまうのよ。
でも、もし、アルベール様が側にいても、ロリエッタ様が聖女としての自覚をなさらず、瘴気を浄化しようとしなかったら、その時はエリザベート、貴方にお願いするわ」
「お祖母様、私を普通の娘として育てて下さって、ありがとうございます。2回目だという事も、はっきり思い出しました。
お父様もお母様もお兄様も、ウィリさまも。皆んなが笑っています。勿論、お祖母様も。この様子を夢みていたんです。ずっとずっと、夢に見ていたんです。届かない願いだと思っていました。お祖母様・・」
お祖母様が私を抱きしめて下さった。
「貴方が頑張ってくれたから、私もこうして笑って過ごせるのよ。貴方の母、マーガレットが生きて笑って、私に話しかけてくれるんですもの。これほど、嬉しい事はないのよ。エリザベート。本当にありがとう」
この世界を護らなければ。
今は、今できる事を頑張ろう
アル、ゴメンね。力になれなくて。
私も負けないわ。
「もう大丈夫そうね。」
そう言ってお祖母様は帰っていかれた。
ありがとうございました。
お祖母様。
アメリアの他にマルティナが何時ものメンバーに入ったから。
あれから毎日、彼女は私のクラスに話をしに来た。ロリエッタの取り巻きメンバー達に『裏切り者』と呼ばれても全く気にした様子もなく、いつも楽しそうにやってくる。
アメリアとも打ち解けて、「アメリア」「マルティナ」「エリザ」と名前で呼び合うようになっていった。
マルティナとは友達になったけれど、残念ながら私の周りから、少しずつ友人がいなくなっていった。
我が国の次期聖女のロリエッタ・トリエール男爵令嬢と、金髪の貴公子ウィリアム王太子殿下の恋を邪魔するエリザベート・ノイズ公爵令嬢。
「エリザベート様は幼い頃から最有力婚約者候補ではあるけれど、まだ婚約はしていないわ」
「彼女のワガママな性格に、ウィリアム殿下も嫌気がさしているのだとか」
「最近はウィリアム殿下も、優しく気取らないロリエッタ様に心惹かれているらしいわ」
「私も聞きましたわ」
「それに嫉妬したエリザベート様が、ロリエッタ様に辛く当たっていらっしゃるらしいわよ」
「まあ!怖い!」
貴族のご婦人方や学園の噂好きな生徒達は、この楽しい噂話に花を咲かせる。
ウィリ様、エド、サウスパールの2人、と、アメリア、マルティナ。
それと聖女レティシアの誕生パーティーで『幸運を呼ぶお守り』をもらって、そっと身体に付けている人達。
その他の皆さまは、彼女に魅了され、噂を信じて私から離れて行ってしまった。
マルティナもどうやら、あの誕生パーティーに参加していたようだ。
「幸運を呼ぶお守り」がなかったらどうなっていただろうと、考えただけで怖くなる。お祖母様(レティシア様)守って下さってありがとうございます。
私はこの『幸運を呼ぶお守り』の発案者がお兄様だという事をしらなかった。
お兄様が私達に起こった『1度目の惨劇』を聞いて、私を守るために、『幸運を呼ぶお守り』をパーティーの参加者全員に渡す事をレティシア様に提案して下さっていたのだ。
そして残念な事がもう一つある。私とアメリアはもう生徒会の会長には行っていない。『アル』は『アルベール会長』に戻ってしまった。いや、以前よりも、もっと遠い存在になってしまった。
生徒会の会長室の前で、ロリエッタがドルマンの声と共に消えて行った日を最後に、アルは私を避けるようになった。せっかく『エリザ』『アル』そう呼び合って心を通わせる事が出来たのに。
あの日、お兄様が現れてアルと話をしている。その数日後にまるで人が変わったように、ロリエッタの言いなりになってしまったのだ。
魅了魔法とは、こんな風に人を変えてしまうのか。
だとしたら、あれはアルの本心ではない。魅了の力で心を操られているだけ。人の心はその人のものだ。許せない!
私はフツフツと怒りが込み上げて来るのを止めれなかった。人の心を操る彼女が許せなかった。
何かがプツリと外れた。
それが何なのか分からなかったけれど、沢山の情報が急に私の中に流れてきて、魔力が驚くほど強くなっていくのを感じた。
「エリザベート!」
その時、レティシア様が現れて私の名前を呼んだ。
私は急に身体の力が抜けて、レティシア様の腕の中に倒れ込んだ。
どれくらい時間が経ったのだろう。先ほどのアレは、夢だったのだろうか?目覚めた時には身体も魔力もいつもと変わっていなかった。
けれど、アレは本当にあった事だ。何故なら先ほど流れて来た莫大な情報が、今も私の中に残っているから。
私は自分の生まれた日の、レティシア様と両親の話し合いを見ていた。先ほど流れてきた膨大な情報の中にあったのだ。
『「マーガレット、アフレイド様、少しお話しないといけない事があります」』
レティシア様は話し始めた。
『「この赤ん坊、エリザベートは光魔法が使えるわ。ヴァイオレットの瞳を持つ聖女。私と同じ存在になり得る子供です」』
『「マーガレットが産んだエリザベートも、ヴァイオレットの瞳を持つけれど、小さな光魔法しか使えない」
両王家にこう伝えて、マーガレットと同じく光魔法は使えないと公表する事もできるわよ』
『「ドリミア王国には、聖女はもう一人現れます。これこそ神託でわかっている事です。神託がなかったのは、この子の存在。
どうしますか?
アフレイド・ノイズ魔法騎士団総団長殿。」』
『「私は手元で育てたいわ。身内の聖女様はお母さま一人で充分です。娘まで教会に渡してしまいたくは、ありませんわ。」
「レティシア様にきちんと光魔法の魔力を封印して頂き、普通の娘として育てる事を希望致します。」』
『「光魔法は使えるけれど、聖女様になれるレベルではなく、小さな光を操れるだけ。屋敷の外でその力を使うと、聖女様と間違えられて、世間が混乱するから、外では絶対に使ってはいけません。」
両王家にも、エリザベート本人にも、このように話せば良いではありませんか。』
『本当の事を話せば、王家に囲われてしまいますよ。それほど、魅力的な存在なのですから。』
『「後悔など致しませんわ
「レティシア様。宜しくお願い致します」』
何ということだろう。私はこれほど両親やお祖母様に大切にされて来たんだ。
「お祖母様」
私は側(そば)で見守ってくれているレティシア様に声をかけた。
「まだ、その時ではないわ」
レティシア様が言った。
「何かあったのね。私の封印が解けるほど、貴方は憤って(いきどおって)いたわ」
それももう分かってしまった。『魔法騎士団の特別室』での様子も、全て頭の中に流れて来たから。
「お祖母様、ロリエッタ様ではなくて、私が瘴気の浄化をしてはいけませんか?」
そう尋ねてみた。私なら出来る。それならアルはあの人の側から離れられるではないか。
「それは出来ないの。時間が戻る前に瘴気を浄化したのがロリエッタ様だったから。貴方が浄化してしまうと、力が大き過ぎて、これからの全ての流れが変わってしまうのよ。
でも、もし、アルベール様が側にいても、ロリエッタ様が聖女としての自覚をなさらず、瘴気を浄化しようとしなかったら、その時はエリザベート、貴方にお願いするわ」
「お祖母様、私を普通の娘として育てて下さって、ありがとうございます。2回目だという事も、はっきり思い出しました。
お父様もお母様もお兄様も、ウィリさまも。皆んなが笑っています。勿論、お祖母様も。この様子を夢みていたんです。ずっとずっと、夢に見ていたんです。届かない願いだと思っていました。お祖母様・・」
お祖母様が私を抱きしめて下さった。
「貴方が頑張ってくれたから、私もこうして笑って過ごせるのよ。貴方の母、マーガレットが生きて笑って、私に話しかけてくれるんですもの。これほど、嬉しい事はないのよ。エリザベート。本当にありがとう」
この世界を護らなければ。
今は、今できる事を頑張ろう
アル、ゴメンね。力になれなくて。
私も負けないわ。
「もう大丈夫そうね。」
そう言ってお祖母様は帰っていかれた。
ありがとうございました。
お祖母様。
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