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16.ぶっ飛び伯母上
しおりを挟む先行きが心配になって来た。
この二人は変な所で気が合っているの様な気がする。
「はぁ…ん?」
ゆっくり過ごす時間が二人によりぶち壊しにされた俺はせめて景色を眺めて心を打ちつかせようと思ったのだが…
「ブッ!」
飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。
「ユーリ様!大丈夫ですか?」
「ゲホゲホ!大丈夫だ…」
「行儀が悪いですよ」
咽てしまった俺の背をさすってくれるアイリスに感謝しながらも俺は見なかった事にしよう。
そうだ、何かの間違いだ。
「何やらすごい船が見えますわね?大砲付きだなんて」
「本当ですわ。何かお祭りでもあるのかしら?」
俺は何も見ていない。
そうだ、気のせいだ。
「そろそろ船が到着したな。人混みが酷いから早めに降りようか」
「え?」
のんびりしていられない。
俺は早く船から降りてこっそり港を出ようと考えた。
「何やら真っ赤な服装の兵士が多いですわね」
「ええ、色鮮やかで」
外ではラッパの音が鳴り響いている。
クソっ、何だってこんな事を。
「お前達、早く荷物を纏めろ!」
「何を言っているんですかユーリ様…」
「いいから早く!」
冗談じゃない。
早く船を降りなくては悲惨な事態になる。
「何故そんなに急いでいるのです?」
「それは…!」
ふと聞こえた声に俺は冷や汗を流しながら振り返る。
「折角迎えに来たのに、冷たいですわね」
「伯母上…」
「え!」
最悪だ。
何で船の中にいるんだ?
「折角船に忍び込んでびっくりさせようと思いましたのよ?歓迎の印にパレードもしましたのに」
「伯母上、何故」
歓迎って何だ?
挨拶はするけど、公爵家に滞在するつもりはない。
「嫌ですわ。可愛い甥を歓迎しないわけありませんわよ?貴方みたいな堅物の妻になってくださる慈悲深い方ですもの。精一杯歓迎してさしあげなくては」
「くっ…」
どうせ俺は堅物だ。
兄上と違い容量も良くないし、気の利いた言葉は言えない。
「あっ…あの、お初にお目にかかります。アイリスと申します」
「まぁ!可愛らしいわ。私の好み」
「伯母上!」
伯母上は美しい物が好きだ。
人であろうとも花であろうとも、可憐で綺麗な物を好む。
危険だ!
危険すぎる!
「あっ…あの」
「緊張しなくて良くてよ。これから貴女は私の家族となるのだから」
「はぁ?」
意味が解らず思わず声をあげてしまった。
パチン!
伯母上は指を鳴らすと何処からともなく騎士達が現れる。
「すぐに荷物を運びなさい」
「「「ハッ!」」」
敬礼する姿はまるで軍人の如くだった。
「彼女達は私の部下で乙男軍団よ」
「は…」
「大丈夫よ。ちゃんと乙女の儀式もしているから」
よく見ると骨格が…女性にしては声も低いと思ったが。
ダラダラと冷や汗が流れる。
彼女達は全員元男で自称乙女であるということか。
「さぁ行くわよ」
「「「ハッ!」」」
いや、敬礼するな!
普通に従わなくていいからなアイリス!
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