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17.王太子妃の思い~エラノーラside
しおりを挟む婚約破棄事件から一週間。
社交界では未だに噂が消えることはなかった。
王宮内の舞踏会に行けば、必ずその噂で持ち切りだった。
他人の不幸は蜜の味とは良く言ったもの。
けれど他人の不幸を楽しむような人間が待っている先はろくなものではない。
「殿下」
「エラ」
噂を耳にする度に心を痛めるお優しい王太子殿下。
普段なら切り替えをできるのでしょうけど、側近のお一人が国外追放となってしまった事がこの方を苦しめている。
「ここは空気が悪うございます。参りましょう」
「ああ、すまない」
無責任な噂を流す者。
恋に夢を見る現実が見えない令嬢達に私は頭が痛かった。
「殿下、大丈夫ですわ」
「エラ…」
「アイリス様は芯が強く聡明な方ですわ。そしてユーリも」
私にとってアイリス様は数少ない友人だった。
他国から嫁いで王太子妃となった私にとって信頼できる人間は少なかったけれど、アイリス様は故郷を恋しがる私に故郷の音楽を奏で、詩を読んでくださった。
どれ程慰められたか。
私は決まりも習慣もすべて違うブリチア王国に戸惑い馴染めなかった。
我が国では母が国を治め、女帝と呼ばれ。
女性ながらも政治を行っていたけれど、未だに男尊女卑が当たり前だった。
ブリチア王国も同様だった。
貴族令嬢の価値は結婚して子供を作る事が最優先で女性が政治に口出しするのは論外だと言われていた。
ただ例外が存在するのは辺境地だった。
王都とは異なり外敵を守る彼等にとって留守を守るのは妻の役目。
豊かではない領地で財を確保をしなくてはならず、妻の手腕が問われるのだ。
北方領地は同じ国内でも独立していると言っても過言ではなく、王族も無視できないのだ。
国の最後の砦と言われる領地を守っている彼等は国の守りでもある。
ユーリ様の母君は大帝国の第二皇女であらせられた方で国一番の才女だった。
母も尊敬の念を抱く程の政治的手腕を持つ方。
そんな方が一目置くアイリス様は素敵な令嬢だったけれど家庭環境が悪いと聞かされ、実際姉妹の差別に驚いたものだわ。
長女が大事にされるのは当然。
でも次女だけがないがしろにされるなんてありえない事だわ。
なのに何時も笑って耐えておられたアイリス様は他国に嫁ぎ心細い思いをしていないか気遣ってくださる優しい方。
だから私は決めたの。
彼女を守ってあげたいと。
祖国では強い者が弱い者を守るのが当然だった。
アイリス様は弱くもないけど、家族の事で苦しまれている。
だから私がお守りしなくては!
そう思っていたのにあろうことがあの家族は姉の婚約が破談になったら今度はアイリス様の婚約者を据え置くような最低最悪だった。
姉の方も悪びれた素振りもなく、私の彼女の性悪を改めて確認できたわ。
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