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41.守る為に~ルゴニスside
しおりを挟む計画通り、公の場で婚約破棄をした。
最初は罪悪感を感じるかと思ったが、罪悪感よりも失望感が勝った。
イライザは卒業パーティー前にも彼女の妹の事を話していた。
アイリス・ステンシル。
彼女は容姿こそ派手ではないが慎ましやかで騎士の妻には理想的だった。
貴族であることをひけらかすことなく聡明で優しかった。
なのに…
「身分の低い者とまた一緒のようですわ」
「本当に困った子ね?貴族令嬢と友達ができないからと、自ら自分を貶めるなんて」
「イライザ様の評価に関わりますわ」
困った表情をしながらも口元を見れば解る。
姉ならば何故庇わないんだ?
どうしてそんな嬉しそうにしているんだ。
「ですが、あの子はどのみち貴族の奥様として過ごすのではなく騎士の妻として生きて、日陰で過ごしますから」
騎士の妻がそんなにいけないのか!
私は王位継承権を返上し、卒業した後は騎士として兄上を支えるつもりだった。
だが彼女は騎士をまるで汚いゴミのように見ていたのかと思うと怒りがわいた。
「ユーリ様も御気の毒に…侯爵家に遠慮してアイリス様を大事にする振りをなさって」
「そのことに関しては申し訳なく思ってますのよ?でも、跡継ぎであしますでしょう?私の婚約者には地位がねぇ?」
「ユーリ様はイライザ様を慕っているからこそアイリス様を粗末にできないのに…」
こいつ等、喧嘩を売っているのか。
騎士に対しての侮辱は勿論だが、ユーリに対する暴言も酷かった。
この時、罪悪感は消えていた。
ここにいる令嬢達は、反第一王子派を父親に持つ者達だ。
何処までも他者を侮辱すればいいのか。
アイリスが余りにも気の毒でなあなかった。
どんなに酷く言われても健気に笑う彼女を見ていて辛いと兄上もユーリも悩んでいた。
俺だって彼女とは面識がある。
騎士団では彼女は評価されているんだ。
騎士の妻は控えめで聡明でありながらいざという時は夫を支えるべく牙を隠せなくてはならない。
その役目を既に果たしているのだ。
なのに…
こんな傲慢な女と結婚すれば宮廷内は荒れるだろう。
妹のローズマリーも同様だった。
侯爵家は何故アイリスを庇わないんだ。
そう思うと、怒りはイライザだけではなかった。
だから俺は迷いなく彼女を公衆の面前で辱める行為をした。
そして――。
「ルゴニス、お前は何と言う事を」
「申し訳ありません」
茶番劇の後に呼び出された俺は返す言葉もなく謝罪した。
「詫びが聞きたいのではない。婚約が嫌ならば別の方法があったはずだ。言ってくれればなんとでも」
「そうよ、婚約していても結婚が決まっている訳じゃないわ。解消する手立てはあったのに」
父上と母上はそういうが、そんなことをすればどうなるか。
婚約破棄をして俺が暴挙に出たとなれば俺故人の問題にできる。
まったく無関係ではないが。
「お前を廃嫡し、辺境地に謹慎を命じた後に平民とする」
「はい」
できるだけ家族には痛手を負わないようにする方法はこれだけだった。
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