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64.困った末娘~ステンシル侯爵夫人side
しおりを挟む式典当日、支度を整え馬車の準備ができたので馬車に乗ろうとするも。
皇太子妃となるイライザにみすぼらしい馬車を乗せるわけには行かなかったので、新しい方の馬車を用意した。
もう一台あるのは、質素であるが機能性を重視したもの。
アイリスが使用していた馬車だった。
処分しようとも思ったが、こちらの馬車の方が早いので夫が王都から領地に行くのも便利だと残していあった。
残しておいてよかったわ。
今日のイライザの装いは衣装も繊細だから、四人で入って形が崩れては大変だもの。
馬車の中には侍女を伴わせて常に美しい状態をキープさせなくてはならない。
その為にも私達と侍女を乗せれば定員オーバーになるし、この馬車は短距離しか走れない仕組みになっている。
その代わり外装が豪華だった。
「どうして…私だけ一人で馬車に乗るの!」
最後の最後まで駄々をこねるロースマリーにイライザは優しく諫めた。
流石は私の娘ね。
我儘を言うどうしようもない妹にも優しく接して。
これでこそ私の娘よ。
本当ならば王室側から馬車を出してもらえるはずだったのに、連絡もなかった。
だからこそ、我が家から馬車を出さなくてはならなくなったのに。
「時間がないわ、急ぎましょう。ローズマリー…そんなに嫌なら邸にいなさい。これ以上の我儘は許しません」
「お母様!」
「貴女は別に来なくてもいいのよ。イライザだけでいいわ」
今日の主役はあくまでイライザなのだから。
「ローズマリーはどうしたんだ?」
「何でもありませんわ」
「そ、そうか…」
今まではそこまで我儘を言わなかったのにどうしたのかしら?
最近は問題行動が多いし、先日も社交界で我が家に泥を塗るような言葉を吐いていた。
「あの子も、お年頃ですから…婚約が破談になった事で精神的に落ち着かないのでしょうか」
「ならいいが、王宮で粗相をすれば問題になる。解っているな」
「ええ、心得ておりますわ」
あの一件以来、厳しく𠮟りつけたし。
まさか王宮で粗相をする事はないでしょう?
そこまで世間知らずじゃないし。
姉を敬う事をしないなんてそんな事は…。
ガタン!
「きゃあ!」
「お嬢様!」
その時だった、馬車が急に止まったのは。
「ちょっと、イライザのドレスが崩れたりしていないでしょうね」
「はっ…はい」
「何の為に乗せているの!役に立たないわね」
「申し訳ありません」
イライザも先程の事もあり、イラついていたけど。
無能な侍女が悪いのだわ。
けれど侍女の同行も無しだと軽んじられるわ。
だから若くてイライザを引き立てられる侍女を連れて来たのだから。
それにしても、どうして馬車は止まっているのかしら?
「何があった」
「申し訳ありません。前方にすごい行列でして…なんでもすごい馬車が」
窓から馬車を見ると、ダイヤモンドを散りばめらた美しい白い馬車が通り過ぎた。
そこに乗っていたのは――。
ウィンディア辺境伯爵夫人だった。
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