婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ

文字の大きさ
84 / 101

80.大嫌いな二人~ステンシル侯爵夫人side

しおりを挟む




私をサビィーネと呼ぶアイリスの声が私を過去に引き戻すようだった。


ずっと大嫌いだった。
すました顔で、何でも解っているような表情をする姉が。

両親に我儘を言っても許される私だけど、母が姉を厳しく育てていた理由なんて解っている。


私が姉に劣っているから。

だけど、貴族令嬢は良き家柄の男性と結婚する事こそが一番幸せなのだと。

誰もが羨む大貴族の妻になり、美しく気高くある事こそが女性として最高の栄華だった。


なのに――。


何処で間違えたのだろうか。
ガゼルと婚約できた私は勝ち組だったのに、そのすぐ後に姉を見初めた殿方は大国の王族。


王の甥に当たる方で、公爵閣下だった。
姉に一目ぼれして、同盟の証として婚姻という名目で姉と婚約した。

でも社交界では愛で結ばれた二人がロマンスとして綴られていた。
国を超えて結ばれた二人の愛の物語は若い貴族だけでなく、殺伐とした社交界の空気に癒しを与えたとも言われていた。

愛で結ばれた姉。
政略結婚で結ばれた妹。

この差は数年間付きまとい、結婚した後は最悪だった。


私を嫁として認めない姑。
現当主となる義兄は次の後継者を遠縁から養子に迎えるとまで言って来た。


ガゼルがいるのに何故とも思ったが。


「侯爵家を潰すような男を跡継ぎにするわけには行きません。もちろんお前も」


義母は私を睨んでいた。

だけど義兄は流行り病により若くして亡くなった事で、ガゼルが次の跡継ぎになるのだと思ったが断固として義母は認めず。


義父が亡くなった翌年に、イライザを出産した。
私に似た愛らしい子で、義母も孫に対しては愛情を抱いていた。

結婚当初は不仲だったけど、二年も過ぎれば私に対して厳しい事を言わなくなり。
領地にいることが多くなった。


義父が病にかかり寝たきり状態で王都に頻繁にこれなくなったのだ。


そんな折、姉夫婦から手紙が届いた。
出産の為に里帰りを許されたと言うのだけど、留まるのは王都の貴族街にある別邸で王族に連なる者しか出入りを許されていない場所だった。


嫁ぎ先よりも祖国で出産した方が安心だと言う配慮と、姉は生まれつき体が弱いのでできるだけ安心して出産させたいとの事だった。


同行には姑が付き添う事で挨拶に出向いた私は、期待を膨らませた。

他国から嫁いできた。

しかも恋愛結婚をしたのだ。
きっと酷い嫁いびりをされているのだと思った。

姉が不幸であればいい。
姑に監視され、罵倒浴びせられながら苦しむ姿を見てやりたいと思って挨拶に向かうと。



「お初にお目にかかります。私はエルリーナ・ハルバートと申します」


姑とは思わない程の若々しさを持ちながらも物腰柔らかく、隣で身重の姉を気遣っていた。


「お義母様、大丈夫ですわ」

「ならぬ、今は大事な時と言うたであろう。座っておるのじゃ…そなたの世話は全て私がするから安心せよ」


気取った態度もなく、少し男勝りであるけど。
私から見ても話しやすく優し気な表情で姉の世話を甲斐甲斐しくしていた。


二人のやり取りを見て私は絶望するのに時間はかからなかったのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆小説家になろうにも投稿しています

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

侯爵家を守るのは・・・

透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。 母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。 最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

逆行令嬢の反撃~これから妹達に陥れられると知っているので、安全な自分の部屋に籠りつつ逆行前のお返しを行います~

柚木ゆず
恋愛
 妹ソフィ―、継母アンナ、婚約者シリルの3人に陥れられ、極刑を宣告されてしまった子爵家令嬢・セリア。  そんな彼女は執行前夜泣き疲れて眠り、次の日起きると――そこは、牢屋ではなく自分の部屋。セリアは3人の罠にはまってしまうその日に、戻っていたのでした。  こんな人達の思い通りにはさせないし、許せない。  逆行して3人の本心と企みを知っているセリアは、反撃を決意。そうとは知らない妹たち3人は、セリアに翻弄されてゆくことになるのでした――。 ※体調不良の影響で現在感想欄は閉じさせていただいております。 ※こちらは3年前に投稿させていただいたお話の改稿版(文章をすべて書き直し、ストーリーの一部を変更したもの)となっております。  1月29日追加。後日ざまぁの部分にストーリーを追加させていただきます。

処理中です...