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90.本当の敵は身内~エラノーラside
しおりを挟む当初から、この男とは相容れない気がしていましたわ。
ええ、本能的に相容れない何かを感じてましたけど。
「まさか、貴方が異常なほどの兄を愛している変態だっとは」
「兄を好きで何が悪い!俺は幼い頃から兄上を一途に慕っていたんだ…なのに妃がこんな猪女だなんて!」
「王太子妃に向かって無礼ですわね」
「俺は第二王子だ」
この男、開き直りましたわ。
さっきまでの態度は何処に行ったのか。
「ルゴニス様、落ち着いてください」
「ローゼ、君だって思わないか?アイリス妃のような方が姉君だったら」
「何を言ってますの」
「素晴らしい響きですわ」
こっちも同じですの?
私の第一印象を壊しましたわ。
「いや…まぁ、解ってはいたが」
「兄君の為に泥を被るようあ真似をされる時点で、かなりのお兄様大好きなのは解ってましたが」
呑気ですわね!
特にアイリスは解っていたような口ぶりだわ。
「気性が激し過ぎる。自己主張も強いし」
「王太子妃たるもの、他者に負けてはなりませんわ。舐められます」
「そういうのは心の底に秘めてこそだろう。女性はひっそりと戦う者だ。彼女のように」
ここでアイリスを引き合いに出すとは何事ですの。
「前言撤回ですわ!やっぱり貴方とは分かり合えません」
「同感だ。俺もだ」
やはり国外に追放した方が良いのではないかしら?
王子に戻してもトラブルの元のような気がしますけど。
「二人共その辺にしてくれ」
「殿下…」
「ルゴニス、私の妻をあまり苛めないでくれ」
「はい、申し訳ありません」
この男!
なんて切り替えの早い男なんですの!
「とにかく、害虫は駆除した。宴を始めようではないか」
「ええ、仕切り直しよ」
両陛下の支持により、中断された宴は再開され事になりました。
「踊ろうか」
「はい」
色々騒動はありましたが、これはシメリス帝国と同盟を結べました。
私達を敵視していた貴族派のほとんども罪に問う事ができましたし、私に服薬していた不妊の毒もローゼさんのおかげで解毒する事もできました。
クレイル殿下の病気も、遠くない内にシメリス帝国で開発している薬が完成すれば、治す事も出来ると知らされ安堵しました。
「こうしてみると、イライザは悪魔ではなく天使にも見えるな」
「いいえ、悪魔ですわ」
アイリスが国外追放の身にななたなければ、このような結末にならなかったかもしれませんが。
「私は多かれ早かれあの二人は一介の騎士と妻で終わるとは思っていませんでした。何らかの形で帝国とのパイプ役を担ったかもしれません」
もしなんて考えたとしても意味がないけれど。
アイリスは辛い状況でも生きる道を探すでしょうし、転んでもただでは起きないわ。
「すべては人の為に行動した故です。天は見ていてくださったのですわ」
「そうだな」
この先待っているのは平坦な道ではありません。
私もそうですが、大国の皇太子妃となりアイリスは困難な道が待っているでしょう。
それでも、アイリスならば生き抜ける気がするのです。
「アイリスは私にとって天使でしたが、ただの天使ではありませんでしたね」
「ああ、そうだな」
天使は種を蒔き花を咲かせますが、アイリスは種を蒔くだけはなく花を育てるべく奔走しました。
その花がやがて美しく咲きほこり、次代に伝わる事でしょう。
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