百姓貴族はお呼びじゃないと言われ婚約破棄をされて追放されたので隣国で農業しながら幸せになります!

ユウ

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39神域

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穴に落ちることは初めてではない。
正確には前世で何度かあったけど、転生してからは初めてだったけど。


真っ暗だった。
穴に落ちた私は生き埋めになるのかな?


そんなことをぼんやり考えていた。

いやいや、こんなところで死んでいる暇はないからね!
だって、お兄さんに美味しいものを沢山食べて貰わないと!


女神様にも目を覚ましてもらわないと。


「それでどうする」

「勿論、美味しいものを食べて元気になってもらうんだから」

「それだけでいいのか」

「それ以外に…ってどちら様?」


ふと思った。
私はさっきから誰と話しているんだ。



「お爺さん誰?」


「娘よ。そなたは何故そこまで他人に手を差し伸べる」

「え?」

杖を思った白髭の可愛いお爺さんが私の目の前にいた。


「答えよ」


「何故って…そうしたいから」


理由なんてない。


「人が人を助けるのに理由は必要ないでしょ?」

「では、何故あの小僧の為にここまでする」

「好きだからです。私はアレクがちゃんと笑った顔を見てみたい。きっと素敵な笑顔だと思う」


心から笑った顔を一度でいいから見てみたい。


「娘よ、その者はお前を好いているのか?」

「さぁ?」

「そなたは好いているのであろう」

「私はアレクに好きになって欲しいわけじゃない」


アレクの大好きなお兄さんを助けたい。
そして沢山笑って欲しい。


「ずっと疎まれてきました」



パパが死んでから私はイチロー以外から嫌われていた。
頑張って好きになって欲しいと思ったけど空回りして、領民からも冷たい視線を向けられていた。


言葉にしてなくてもなんとなく察した。


「私は頭が悪くて、人をイラつかせるようで…でも、アレクはこんな私にも優しくしてくれたんです。だからあの人の為にどんなこともしてあげたい…私がそうしたいから」


イチローがいればよかった。

でもそれは寂しいことかもしれない。

同じ人間同士と言葉を交わし笑いあうことの幸福感を知った。


同時に…


「今眠っている女神様のきっと寂しいはずです」

「何?」


「一人ぼっちは寂しいです。美味しいものは皆で食べるから美味しいんです」


一人の食卓はどんなごちそうでも味気ない。
誰かと食べるから美味しく感じるんだから!



「女神様も一人は寂しくて悲しいはずです」


だから目覚めて欲しい。
きっと貴女が目覚めるのを待っているのは沢山るのだから。


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