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第一章光の少年と癒しの歌姫
17国王の思い
しおりを挟む雨乞いの義式で雨を降らそうと試みるも、雫が落ちる事はなかった。
それどころか震災が起き始め、東西南北と被害を受けるようになってしまい、手の施しようがなくなる中、氷の魔法の使い手でなんとかその場を凌いだが、付け焼刃だった。
水問題で作物は日に日に枯れて行き、飲む水も汚れ始めた。
トランプ王国はどの国よりも作物が豊作で水不足になった事がないのは水の女神の加護のおかげだった。
水の女神に使者でもあるローレライは美しい声で船乗りを惑わしはするが、時としてすべての者を癒す歌を歌うと言われる。
水の中で生息する生き物に限らず陸地に住まう生き物もローレライの歌を愛していた。
「なんという事だ…」
「お父様」
国王のアルデバランは嘆く。
「これも、全ては私の失態だ」
「お父様、今は嘆くよりもすべきことが御座いますわ」
アンジェリークは父の弱音を叱咤する。
これ以上の後悔は無意味だと解っているからだ。
「何としてもこれ以上の被害を大きくできぬ…宰相」
「はい、引き続き氷の魔力を持つ者を集めております」
「後はクレイン家への詫びと、これ以上オンディーヌ嬢の名誉を傷つける事がない様にせよ」
アルデバランは慈悲深い王だった。
あの場では冷酷な王であったが、慈悲深い人物だった。
「かしこまりました」
「そして一刻も早く無事を確認せよ。そして確認した後に馬鹿共から守るのだ」
「お父様…オンディーヌをどうなさいますの」
アンジェリークが危惧しているのは今後の事だ。
「あんな事があったのだ。社交界に戻るのも酷だ。それにローレライの子孫であるオンディーヌは人間界以外でも生きることはできる…ならば国外で生活する方が幸せかもしれん」
「陛下!それでは…」
「そうです。我が国は!」
宰相や大臣はオンディーヌが国を去ればどうなるか解っているからこそ一刻も早く戻って貰う気でいたが。
「アンが同じ目に合っていれば私ならば王家に復讐を考えるだろう。もしかしたら国を捨てて亡命するぞ」
「なっ…」
「それをしないのはオルフェス殿の情けだ。これ以上政治的に利用する事は許さぬ。オンディーヌはアンの恩人ぞ」
「ハッ!」
宰相や大臣達もオンディーヌをこれ以上苦しめる事を良しとしていない。
だが国の危機的状況故に進言しようとしたのだが、既にそんな状況ではなかった。
「失礼します!」
「何だ、騒々しいな」
「申し訳ありません…ですが」
部屋に入って来たのは王宮勤めの侍女長だった。
「先ほど、連絡がありまして…キャルティ殿下とその一行がクレイン家に押しかけているとの報告が!」
「何だと!」
「あの馬鹿が…何処までも王家に泥を塗る気ですの」
監視をさせていたはずなのに役に立たないと悪態をつくアンジェリークは早馬を用意させるのだった。
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