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53.同じ被害者
しおりを挟む時は遡る事に時間前の事。
私は、王妃陛下により、ロゼッタさんの現在の状況を知らされた。
「ロゼッタさんが、お祈りを」
「ええ、彼女は貴女に対しての罪の意識に苦しみながらも、逃げることなく向き合う道を選びました。元より優しい性格の持ち主で、信仰心が強かったようです」
「そうだったのですか」
「あの日、王宮で顔合わせをした日に貴女の存在を知ったのでしょう。それまでは噂や間接的に婚約者がいる事は知っていても、ティエゴが余計な事を言って惑わせたか、もしくはあの馬鹿騎士が変な入れ知恵をした事も考えられるわ」
既に名前で呼ぶ事さえ嫌悪感を抱かれているのね。
相当、根に持っていることが解るけど。
無理もないわ。
「彼女は、良く言えば一途で真っすぐ、悪く言えばその場の勢いに突っ走る考えのようね。だけど、貧しいながらも両親の手助けをして、一番最優先にするのは自分の欲ではなく両親の安全と考える時点で、善良な心を持っているわ」
「はい…」
もし、身勝手すぎる女性ならば。
私は彼女を心配なんてしなかった。
これが、下級貴族の令嬢達ならば私を見下し。
顔合わせの時に勝ち誇った視線を送って私を侮辱しただろうけど、初めて顔を合わせた時の事を思い出す。
「彼女は紹介された時、戸惑っているようでした。そして、広間での時もただ驚いていたようにも見えます」
「彼女も巻き込まれたにすぎません。黒幕はあの屑騎士だけど」
馬鹿から屑にまで落とされたわ。
「平民で何も知らない少女が何も言えるわけがないわ。大方両親の事を引き合いに出して黙らせたのでしょう?本当に何処まで見下げ果てたのかしら?そんな女の子を妃に迎えようと考えるあの愚弟もありえないわね」
王弟殿下はティエゴ様を傀儡にしてどうする気だったのだろうか。
あの方が次の王座に就いたとしても、国を動かすには無理があるし、騎士団の皆様から疎まれ、嫌われているのに。
野心家であるけど、君主としての器もなければ政治家としての才能もない。
陛下は優秀ではなくとも、周りの人の心を掴む才能と、多くの人の言葉に耳を貸せる柔軟性も持ち合わせている。
故に、王妃陛下を始めに他国との貿易をすべきだという。
開国を望む貴族達の声も聴いている。
だけど、王弟殿下は独裁者のような考えを持っているがゆえに、周りはついて来ないだろう。
「この状況で、あの男の好きにさせるのは危険です」
「はい…ですが」
「ティエゴ以外にも相応しい者はいますのよ。ただ血筋を重視しなければの話」
良き血筋を最優先するか、改革ができる優秀な方を優先するか。
難しい所だった。
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