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第一章廃嫡と婚約解消
10託す思い
しおりを挟む謹慎中だと言うのに何だこの状況は。
質素に慎ましやかに過ごすと思いきや、王宮にいるよりも至れり尽くせりだ。
そもそもこの離宮は先代国王。
俺の祖父が俺が三歳の時に誕生日プレゼントに新しくリフォームしてくれた。
普通ないだろ。
マリーアントワネットかよ!
とか思った。
作りはプチトリアノンに似ている。
離宮は俺にとって隠れ家でもあって、祖父と一緒に釣りをしたり。
祖父は異色の経緯で王となった人なので庶民的考えを持っていたので一部の貴族からは良く思われていなかった。
だけど俺はそんな祖父が大好きだった。
この離宮は祖父との思い出がたくさん詰まっているんだ。
大切な場所ではあるが。
いいのだろうか。
「フィル様、さぁちゃんと召し上がってください。すっかり食が細くなって」
ジェフがテーブルに置いた料理は宮廷料理ではない。
フルコースではなく手軽に食べれる物だ。
「フィルベルト様は焼き鳥が好きでしたでしょう?良い鳥が手に入りましたので」
「今のうちにしっかり召し上がってください。北の領地は海岸沿いで極寒の地ですから栄養をしっかり取っていただかないと」
何を言っても無駄だ。
俺に彼等を止めるなんて不可能だったので、もう止めるなんて無駄な努力はしない。
今すべき努力はフルーデルト公爵に詫びを入れて早々に慰謝料を支払う手続きをしなくてはならない。
後はアルセウスの今後の為に裏工作が必要だが、母上がいるのだから問題ない。
後は――。
「お許しください叔父上」
王弟殿下であり俺の叔父だ。
あの人が不在の間にこんな事になったと知ったら怒るだろうが、早々に辺境地に行くことになるので挨拶もできないだろう。
祖父にも最後に挨拶をしたかったが。
せめてできるのは。
「誰が手便箋を思って来てくれ」
俺の思いを手紙に残そうと思う。
公爵家に関しては俺の持っている財産を公爵家、マリアンナ嬢に譲る事ととこれまでの非礼を詫びる事を伝えた。
直接会う事は難しい。
きっと門前払いをされるだろうから父上に手紙を頼むことにした。
「これで皆幸せになれるかな…」
「フィルベルト様」
ただ願うのは、俺の所為で沢山の人に迷惑をかけてしまった事への後悔。
そしてもう一つ。
「ステラは大丈夫だろうか」
こんな事になって彼女は傷ついていないか。
何もできず別れの言葉もちゃんと言えなかった俺にできる事は少ない。
「レック。俺の私物を売ってお金にしてくれないか」
「待ってください、そちらの品々は亡くなられた母君の形見ではありませんか」
「俺の私物はそんなにないだろ?領地や俺個人の財産のほとんどは慰謝料にする。だから母の形見の一部を売って俺に仕えてくれた他の使用人の給金にしてくれ」
少ないが退職金だ。
きっと今回の件で暇を出されるのは、身分が彼等よりも低い使用人だ。
職を失えばどうなるか。
「頼む」
「かしこまりました」
レックは辛そうに頷いた。
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