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第一章廃嫡と婚約解消
12恥ずかしい過去
しおりを挟む馬車で一日かけて走った後に船に乗り北の領地に向かう。
北方三領地は同じ国内でも軽はずみに入れる領地ではないので船も厳選する。
そこで問題が発生する。
「マルシェ、あまり窓際側に寄るなよ。気温が低いし冷える」
「大丈夫ですわ」
「ダメだ」
春になったと言えぞ国境付近は冷える。
特に女性は冷え性だし、マルシェは体を冷やすのは毒だ。
マルシェに至ってではないが。
「何だ?何がおかしいんだ」
「いいえ、昔の事を思い出しましたわ」
「ん?」
防寒着を着せると嬉しそうに笑うマルシェ。
「昔風邪をこじらせた私に殿下は国王陛下のマントをひざ掛けに持ってきてくださいましたわね」
「後から陛下が怒っていましたが…」
「まぁ、後から母上が手助けしてくれたが」
毛皮のコート一着もないマルシェの事情を知った母上が防寒着をプレゼントしてくれたんだったか?
「私も覚えておりますぞ。味覚障害になった時にフィルベルト様は王宮を抜け出してお祈りにいかれたそうで…まぁ後から強制的に連れ戻されましたが」
「言うな!」
あれは俺の黒歴史だ。
当時俺は幼過ぎて純情可憐だった。
味覚障害になったジェフが絶望したのでなんとかしたかった。
そこで王都内である噂を耳にしたんだ。
「72日間祈り続ければ願い事が叶う女神像…まぁあれは出産の女神でしたからな」
「お前は俺をそんなに傷つけたいか!」
「ええ、私もありますわ」
「止めろ!」
今度はエヴァが昔話を始めた。
こいつ等は俺をディスるのが好きなのか?
歪んだ愛情だな!
「フィルベルト様はやはり王子様ですね」
「もう王子じゃないぞ」
「そうではありません。幸せな王子とツバメです」
あの童話か。
前世でも似たような童話があったな。
「とある王国に建てられている王子様の像が満月の夜に意思を持ち、傍にいるツバメに自分の金箔を届けさせるんです。貧しい人の為に毎日のように…ついには自分の目まで」
「あーあれな」
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自己犠牲なんて意味がない。
一時の援助では多くを救う事は出来ないと解っていながらもステラの気持ちはありがたかった。
「ありがとうステラ」
「いいえ!そんな…」
だけど本当は違うんだ。
俺は幸福の王子とは違うよ。
彼のように立派ではないのだから。
一人では生きて行けない。
常に誰かに支えられて生きている弱い俺なんだから。
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