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第三章雇われ国王物語
閑話10正当な跡継ぎ②
しおりを挟む執務室で騒ぎ立てるマリアンナに困り果てたエクトルは使用人を呼んで部屋に押し込むように命じた。
「しばらく部屋から出すな」
「お待ちくださいお父様」
「お前はどうやら気を病んでいるかもしれない。直ぐに医師に」
「私は病気ではありません」
マリアンナの行動は正常とは思う者はこの邸にいなかった。
不貞行為を疑われる前から、マリアンナに思う事があった使用人は度々報告をしていたのだから。
「お父様、お呼びですか」
「なっ…フレデリカ!」
執務室に呼ばれたフレデリカはマリアンナに睨まれるも傍にいたニコルが前に出る。
「そんな目で見るな」
「ニコル!」
まるで魔女から姫を守る騎士のようだった。
従妹に向けるような表情ではない。
この場にエクトルがいながらもマリアンナに対して配慮などなかった。
「お父様!」
何時もなら庇ってくれる。
こんな無礼な事が許されるはずがないと思った。
「すまないニコル」
「お父様!ニコルは私を汚辱したのですよ!」
「先にフレデリカを睨み敵意をぶつけたのはお前だ。すまないニコル。マリアンナは精神を病んでいる…許せとは言わない」
「いいえ、叔父上が謝られる理由はありません」
「お父様、私は大丈夫ですわ」
普段から控えめのフレデリカはマリアンナを責める事はなかった。
むしろ立て続けに起きた事件に胸を痛め、心配していたのだが、その態度がマリアンナの癪に障った。
(この女!いい子ちゃんぶって!)
内心でマリアンナはフレデリカの事を憎んでいた。
(何でよ…上手く行かない!何もかも!)
全ては自分自身の行いなのにも関わらず、マリアンナは未だに誰かの所為にしていた。
「お姉様…」
「触らないで!汚らわしい!」
下を向いて震えるマリアンナを心配して手を伸ばそうとするも、触られることそら不愉快だったマリアンナは手をはたき、爪が当たりフレデリカの腕から血が流れる。
「うっ…」
「フレデリカ!」
「マリアンナ!なんて事を」
気を病んでいると言えど、許される事ではない。
「私は…」
「申し訳ありません。触れようとした私の所為で…」
「何を言うんだ。君は汚くなんかない。君の母君は貴族だ…身分が高くなくとも」
腕をハンカチで押さえながらニコルはフレデリカを庇う。
ずっと身分が低かった理由だけ蔑まれ誤解をされ続けて来たのを傍に見ていた。
従兄として守ってあげたい思いは愛情に変わるまで時間はかからなかった。
それでも強く出れなかったのは、フレデリカがナツメを思っていたからだ。
「男に泣きつくなんて汚い女ね」
「マリアンナ!」
「そうやって悲劇のヒロインぶって私から奪う気ね!」
既にマリアンナは自分以外は敵だと思い込んでいた。
フレデリカが控えめなのは、養子であるがゆえに遠慮しているだけなのに、その控えめな性格さえも演技も見えてしまったのだった。
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