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第三章雇われ国王物語
29ハッピーエンド
しおりを挟む会議が終わり広間を出ると。
「ステラ」
「殿下」
最近は俺の事を愛称で呼ぶことはなくなった。
特に他の使用人の目がある間は俺を名前ですら呼ばなくなった。
「ステラ、さっきはありがとう」
「いいえ、私は言いたいことを言っただけです」
「三十分だけ、裏庭をお使いください。人払いをしますので」
ナツメはこっそり耳打ちしてくれた。
「殿下…私は」
「すまないステラ」
もう俺はリーシェの婚約者となったので二人きりで話す事はできなくなった。
ステラも察しているのだろう。
「俺は独身を貫くつもりだった。だがそれは俺の自己満足で我儘だった」
「殿下…私は」
「だけど、君と過ごした時間は真実だ。俺が俺でいられた時間だ」
あの日の時間は忘れない。
苦しみ続けた中で理解者を得たのだから。
「フィルベルト様、この日を最後にして私をふってください。あの日断罪の場で私を拒絶されました。ですがこの場でもう一度…そうすれば私は貴方の戦友として臣下として」
「ステラ」
きっとステラの中で俺への思いは恋よりも穏やかな感情だったのだろう。
恋もあったが、今は違う。
「ステラ、君を友として信頼している。これからもこの先も、だから幸せになって欲しい」
君の隣にいるのは俺じゃない。
共に高め合い競い合い時には向上心を高め合えるライバルなのではと思う。
「ありがとうございます。私はフィルベルト様に出会えて幸せでした」
「俺もだ」
手を差し出すとステラは俺の手を握り返してくれた。
それが答えだ。
「俺はこの国の王となる。良き王になる為に」
「優しい王にお誓い申し上げます。永久の忠誠を」
これが俺とステラのハッピーエンドだ。
共に友人として、時には君主と臣下として生きて行く。
乙女ゲームの世界ではなく。
現実での俺達の物語はこれがハッピーエンドなのだから。
「さようなら私の王子様」
「さようなら俺の大切な少女」
傷ついて疲れ切ったあの頃。
一人だった俺達は心が半分だった。
だから惹かれ合ったんだ。
だけど俺達は恋にすべてを捧げられなかった。
捨てきれない物が多すぎた。
でもそれこそが必要で、絆を捨てる事は俺達の心を壊す事になる。
ステラはそのまま去って行き。
俺は一人見送った。
「さようならステラ…」
風が吹き花弁が彼女を包むようだった。
「フィル」
「リーシェ」
裏庭を出るとリーシェが腕を組んで待っていた。
「どうして」
「どうもこうもないわ」
聞かれてしまっていたのか。
「うわぁ!」
腕を引かれて抱きしめられる。
「今日だけは彼女の為に悲しむのを許すわ」
「は?」
「今日だけ、今夜だけよ。でも明日から許さないわ」
敵わないな。
本当に。
リーシェの方がよっぽど王子様に見える。
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