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第二章魔導士の条件
24コパンの思い出①
しおりを挟むコパンは城下町にある小さなパン屋で見習いパン職人として働いていた。
当時はパン職人の知名度はパティシエよりも格段に低く、職人の中でも給金も低く商業ギルドでは貴族や商人からも馬鹿にされていた。
パンは食事に常に出され主食でありながら、馬鹿にされて来た。
それでも戦場に行く時にパンは必要だったのだが、あるパーティーメンバーに侮辱されたのだ。
「職人は星の数ほどいるけど、パン職人が商業ギルドに出入りするのは場違いじゃないかしら」
「確かにギルドの中で一番の無駄だな。第一宮廷料理人がいればパン職人なんて必要ないだな。しかも城下町ではこんな貧相なパンを売っているのか」
「飾り気もないし、お菓子を売ればいいのに…こんなパンを食べる庶民の気が知れないわ」
貴族ではこんな事を言うのは珍しくない。
それでもパン職人の汗と涙の結晶だったのだ。
当時は価格高騰により、パン職人はできるだけ価格を上げないで努力していた。
「やっぱりお菓子の方が良いわ」
「じゃあ隣の店に行くか!」
ドンっ!
パン屋を出ようとした時に剣が当たり、並べられているパンが落ちて行く。
ぐしゃ!
落ちたパンが床に落ちて無残に踏みつけられる。
「お客様!」
「何だ?」
「パンを…」
無残なパンを遠回しに告げようとするも。
「靴が汚れた…どうしてくれるんだ」
「ちょっと!アークの靴にパンが!どうしてくれるの…こんな汚らわしい物を」
「店内に入る時は注意書きを…」
「コパン!止めなさい!」
「はぁ?パン職人如きが貴族に意見する気」
当時のコパンはまだまだ幼かった。
だから間違った事を言ったつもりはなかったが。
「身の程を弁えなさい」
「うっ!」
突き飛ばされた拍子にパンを並べていた棚にぶつかり焼き立てのパンは床に落ちてしまう。
「行きましょうアーク」
「ああ、気分が悪い」
二人は謝る事もなかった。
床に落ちたパンを踏みつけられ、蹴飛ばされたりもした。
(酷い…酷すぎる!)
「コパン!」
「爺ちゃ…酷いよ。酷すぎるよ」
小麦粉の仕入れからどれだけ苦労したか解らないのに。
「酷いな」
「いくら何でも酷すぎる」
「貴族様だからって」
何も言えななかった客達は黙ってパンを拾っていく。
助けたくても助けられなかった。
「ごめんよ親父さん」
「黙っているしかなくて」
「いや、あそこで手を出したらもっと酷くなる」
泣きじゃくるコパンはパンを抱きしめた。
一生懸命作ったパンを踏みつけられるものは幼い少年に深い傷をつけた。
掃除を大方終えた頃だった。
「パンください!」
元気よく扉が開かれる。
店に入って来たのは騎士団の治癒師の制服を着た少女だった。
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