白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!

ユウ

文字の大きさ
105 / 142
最終章白の治癒師

9指名手配の男

しおりを挟む



来週には婚約式が行われる。
その前にアークを捕らえようと考えていた王族。

既に身分は剥奪されてるが、誰かが匿っているならば厄介だった。



「あの男が国境付近にいる目撃証言を得た。商人から馬車を奪った被害届も出ている」


「何所まで迷惑をかければ気が済むんですの」

「アーク…」


まだ罪を重ね続けているのかと思うと頭が痛くなるメアリだったが、何故商人も騙されたのかと思う。


「指名手配は王都内は出回っている」

「はい、伺っています」

「だが、顔を返れば解らない」

「顔を返る…」


姿を変える魔法は存在する。
他には幻覚を使う魔法もあるがどれも高位魔法でアークには使えるはずがない。


「道中で姿を変える薬を買えるとは思わないが…そこで問題だ」

「はい」

「アークは姿を変えて身を隠した後に馬車を奪い逃走した。その商人はそれなりの身分の自分つだったわけだが」

「まさか…」

メアリは嫌な予感がした。
馬車だけでなく奪ったのはまだある可能性が高い。


「あの男は本当に屑だぜ。商人の娘に手を出した」

「何ですって!」

「被害にあった商人に話を聞けば、詐欺にあったらしい…手を出された娘と結婚の約束をして父親にすりより、馬車と金を奪った後にその女は捨てられたそうだ」


(酷い…酷すぎる!)


堕ちる所まで堕ちてしまったアークに同情する気はない。
ただ許せないのは。


(どうしてここまで人の心を!)


自分の欲の為に他人の思いを利用してあっさりと捨てた事が許せない。
己の欲望の為にどれだけの人を傷つけ踏みつければ気が済むのかと怒りを感じる。


「メアリ嬢ちゃん」

「はい…」

「悪い情報を仕入れたんだ。我が国と敵対するラセンドル帝国が動きを見せている」

「ラセンドルが…」


南帝国ラセンドル。
長らく敵対関係にある国で現在は停戦状態にあるが、他国に攻め入り戦争を度々行っており、危険視している。


「帝国では今、帝位継承権の奪い合いをしている…しかも厄介な事にあの馬鹿が関わっている可能性がある」

「ちょっとお待ちくださいな。なぜラセンドル帝国とあの男が…」

「関わっているとは言ったが手を結んでいるとは確定していない。だが、用心しろ」


「はい」


ラセンドル帝国は奴隷、人身売買。
敗戦国の王族をも奴隷にして非道な真似をする危険な国だった。


地位を守る為に平気で民を殺す冷酷な皇族や貴族も少なく無い。
そんな国と手を結ぶなんて信じられなかったが、接触した証言があるならば注意する必要がある。


「婚約式に乗ろこむなんて馬鹿な事はしないだろうがな」

「いくら何でもそんな馬鹿な事をするとは思えませんわね?子供でもしませんわ」


リーシアがいくら頭がおかしくなったとしてもありえないと思ったのだが、そのありえない事が起きてしまうとはこの時、その場にいる者は気づくことはなかった。


しおりを挟む
感想 287

あなたにおすすめの小説

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...