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プロローグ
しおりを挟む「いい加減に自覚なさったら?」
冷たく突き刺さる視線。
周りからの敵意を受け、誰も助けてはくれない状況下で耐えるしかなかった。
「所作もみすぼらしくて美貌もない、教養も低く、使用人は何人いまして?」
「お父様は職人風情で汚らわしい血が流れている自覚はおありですの?」
南部に位置するユーランダ領地。
作物を育てて生計を立てており、社交界ではこう呼んだ。
百姓貴族と。
建国前から存在する国であるが政治に全く介入しておらず政治的にも全く利用できない吹けば飛ぶと囁かれているのが我がユーランダ家だった。
先祖代々から畑を耕し生計を立てていたこともあり裕福ではない。
貴族と言っても名ばかりで外交手段は作物で財を誇る貴族からは疎まれ嫌われ百姓貴族という不名誉な名まで与えられている。
娘の私も社交界では浮いた存在だったが、そもそもここまで嫌われるには理由があった。
「何で貴方みたいな無能な女があの方の婚約者なのよ!」
「一体どんな汚い手を使ったのよ!」
「下品で汚らわしいドワーフの血を受け継いだ蛮民が!」
私の母はドワーフだった。
人間とドワーフの間に生まれたのが私で、種別を超えて私の両親は結婚した。
故に私の体にはドワーフ血が流れている。
混血を毛嫌いする貴族は多く、私を汚れた存在として見る目は幼いころからだ。
「どうしてウェッジウッド侯爵家の…エリオット様が!」
そしてもう一つ。
私の婚約者が社交界で今をときめく王子様だからだ。
王侯貴族の中でも名門中の名門のウェッジウッド家。
文武両道で財は王家以上だと言われる程で誰もが彼の婚約者になりたいのだが…
「どうして貴女みたいな人がエリオット様の婚約者なのよ!」
「そういわれましても」
彼女達が私を嫌う理由は血筋と、家柄と婚約者にある。
本来ならば私との婚約にデメリットはあれどメリットはないのだけど。
「何をしている」
「エリオット様!」
「えっと…」
令嬢達に詰られている最中、颯爽と現れたのは噂の人物だ。
「一人を囲んでみっともない」
「なっ…そんな」
「社交場の品位を汚すとは、いかがなものか」
氷のような冷たい視線。
涙で訴える令嬢に残酷無慈悲な言葉を投げつける。
「他家を侮辱する権利は誰にもない。国王陛下のご意向に背く気か?」
「何を…」
「常日頃から陛下が申しておられる言葉だ。辺境地に住まう貴族をないがしろにしてはならない。彼らいてこその国とな?」
「あっ…でも」
「何より私の婚約者に対する無礼は我がウェッジウッド侯爵家への挑戦だ」
これ以上言い返しもできない。
氷の目で射抜かれ、尚且つ威圧する声で彼女達を黙らせてしまった。
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