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2婚約者の母
しおりを挟む私の父方の祖父は元は料理人だった。
かつては世界中を旅して料理修行に出ていた。
宮廷貴族では貴族が料理をするのは下品だと言われていたが、下級貴族ならないわけではない。
父方の祖父と母方の祖父は親友だった。
我が家の秘宝である包丁はその昔、ドワーフの技術の結晶だった。
その辺の剣や槍よりも切れ味が抜群だった。
その包丁を使って祖父は人種関係なく料理を振る舞い、数多くの種族を満足させた。
ちなみに祖母はパティシエールだったらしい。
この世で最も不幸なのは心から美味しいと思えるものがないことだというのが口癖だった。
どんな悪人でも美味しいものを食べれば心を通わせられるというのが持論だったそうだ。
私もその言葉を今も信じている。
でも、やっぱり難しいものだ。
領地のお菓子を食べて欲しくても、私自身が拒絶されているので手に取ってもらうことも叶わない。
それどころか、私の父は一部の貴族からドワーフの技術の無駄遣いだと責められている。
本来ドワーフの技術は剣や鎧を作るためにあると言われている。
なのに私の祖父の代で彼らの存在価値を汚したとされているのだから。
確かにドワーフ族はより優れた剣を作ることに誇りをもっている。
でも、私の祖父は人を殺すだけの技術ではなく人を生かす道具を作れることに喜びを感じていると言ってくれた。
でも、周りはそう思わない。
武器を作ってこそドワーフの存在理由だと勝手に決めるのだから。
「モニカ、どうしたんだ?」
「えっ?」
物思いに更けてしまった私を心配そうにのぞき込む。
「えっと…お菓子無駄になったなって!あはは…」
今日の為に用意したお菓子は持って帰るしかない。
食べてもらおうと毎回持ってきては撃沈する私は本当に商売の才能ゼロだな。
「あら?その心配はなくてよ」
「え?」
「そのお菓子はすべて私がいただくもの」
いや、あれ全部食べるの?
とてもじゃないけど、食べきれない気がする。
「母上、太りますよ」
「あら?何か言って?」
「…何でもありません」
おば様がこっそりエリオットの足を踏みつけていたのは見なかったことにしよう。
うん、見ていない。
私は何も見ていないぞ。
本当に仲良し親子だなと思いながら夜も遅くなったので私達は馬車に乗り帰っていく。
いまだに社交界で浮いた存在の私だけど、ずっとこのままではいけない。
分かっているけど、なかなか上手くいかないと思い悩む私に更に問題が起きてしまうのだった。
――脅迫状が届いたのだった。
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