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6.兄の怒り~ミハイルside
しおりを挟む妹の事を聞かされ、急いで学園に向かった俺は今すぐにでもあの男を殴りたかった。
殴るだけでは我慢できない。
今すぐ殺してやりたいのを我慢していた。
学園内で起きた騒動は既に騎士団が事件性に関して調べている。
シャーロット嬢を筆頭にこれまであの女の所為で問題が起きていたが周りは焚きつけるような真似をしながら二つの勢力に別れて派閥争いをしていた。
とは言えだ。
婚約者がいながら彼女に友好的に接していたのは一部だ。
中立側であくまで友人として接していた生徒もいたが、噂を面白おかしく飛躍させた生徒もいるのも確かだ。
だが、噂に踊らされてしまった彼女達も悪い。
そして、婚約者を蔑ろにした彼等も悪いとは思うが一番問題なのはあの男だ。
「今回の事でチェイス侯爵家との婚約は白紙になるだろう。妹が死ねば君の願い通りになるだろうな」
「なっ…そんな言い方」
「既に学園中の噂だ。我が妹は婚約者に捨てられ、殺された悲劇の令嬢とな?万一一命を取り留めても全身に火傷を負ってしまっている。我が国の医療では救うのは難しい…今はウィルフレッド殿下が妹を救うべく死力を尽くしてくださっているが」
「は?何故ウィルフレッド様があの女を!」
あの女?
この恥知らずは何処までも馬鹿なんだ。
「口の利き方を知らないのか。それとも男爵令嬢は何時から伯爵令嬢をそれとかあの女呼ばわりするようになったのか」
「えっと…」
俺に睨まれ口ごもるが許す気はない。
「君の教育をした者を再教育するように報告する必要があるな」
「待ってください…」
「話は以上だ。チェイス侯爵家には君から婚約破棄したと伝えておく。手続きもすべて俺がするから気にすることはない」
「そんな!待って下さ…」
これ以上の話し合いは無意味だ。
「待ってくださいミハイル様」
生徒会室を出た俺を引きとめたのはジゼルと親しいしシアン嬢だった。
「ジゼルの様態は…」
「ウィルフレッド殿下の対応のおかげで峠は乗りこえた」
「そうですか」
安堵した表情をするシアン嬢に、これ以上を告げるのは心苦しい。
ウィルフレッド殿下によれば、火傷の傷は癒えたとしても完全に傷を治すことはできないと聞かされた。
「火傷の傷は残るだろう」
「えっ…」
「何より、あの馬鹿の風の魔法の所為で背中に傷跡がくっきり残っている。後遺症は残るだろうし…車椅子で生活する可能性が高いと」
「そんな!」
アクアパレス王国の医療を使っても難しいと判断されている以上、どうにもならない。
「なのにあの男は…」
「許せませんわ。常日頃からジゼルを粗末に扱い死んでもいい等と」
「これも我らが軽んじられているのだろう」
大貴族でのユーモレスク家の分家筋でしかなく。
しかも実家とは縁を切っている所為で見下されているのは否めない。
チェイス侯爵家も同様に。
ならば、その軽んじている家と一切の縁を切っやろう。
こっちからな!
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