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58あの日見つけた花~ウィルフレッドside②
しおりを挟む言葉を交わすのは挨拶程度だった。
それでも私は彼女に惹かれて行き、恋心に変わるのは時間がかからなかった。
だがある日。
「父上!私は反対です!」
「ミハイル」
「あんな我儘最低クソガキは妹を金ヅルとしか思っていない!」
その日、アクアパレスに留学に来ていたミハイルと勅使として出向いて来られたユーモレスク伯爵が揉めている声が聞こえた。
「ジゼルをあんな家に嫁がせるなんて」
「解っている。だが…」
「母上が亡くなり、チェイス侯爵が権力を使って来たのは見え見えです。ハルバードは母親がない事でこれ見よがしにジゼルを馬鹿にして自分の母親がどれだけ優れているかなどと馬鹿にして!」
ジゼル嬢が婚約?
不思議ではないし、知らなかった私は何処まで馬鹿なのか。
「ジゼルが可哀想です。愛する母を無駄死にしたなどと言われて…母は戦場の聖女だったのですよ」
「ああ、私も許せない。だが、現段階では婚約解消はできないんだ」
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「父上は出世から外れているからって、好き放題するなんて」
「ミハイル」
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強引にこちらから婚約解消を願い出れば角が立つし、派閥が生じる。
「この婚姻はジゼルも望んでいるんだ」
「それは、これ以上貴族同士が諍いにならないようにでしょう!あの女が何か吹き込んで…」
「だが、貴族派の勢力が強くなる可能性が高い。そうなれば国が二つに割れるのも事実だ」
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貴族同士の婚姻は個人の意思は関係なく、互いの家を守るためだった。
だが…。
「私はあの子に幸せになって欲しいだけだったのに」
「父上…」
ユーモレスク伯爵は権力に執着しない方だ。
分家筋でいらしたから高位貴族との縁談はどうしても必要だと言うわけではない。
いや、私は何を考えているんだ。
「殿下、どうなさいましたの?」
「セラ…何でもない」
私に唯一親しくしてくれているセラビィにもこの思いを語る事はできない。
心に鍵をかけてしまいこもうと思った。
せめて彼女が幸せになれる事を願っていたが、その思いすら叶うことはなかった。
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