巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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60唯一の我儘~セラビィside

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私にとってウィルフレッド様は大切な兄のような存在でもあり時には弟であり戦友だった。


我が、アクアパレス王国は資源に恵まれているけど、問題が多かった。
人間絶対主義の国が多い中、他種族の受け入れを活発にしている事から敵も多かった。


豊かな自然に囲まれ美しい深海にある珊瑚は国の大事な財源だった。
国を狙おうとする者も多くいる。


だからこそ、ウィルフレッド様は慎重に行動されていた。
ご自分の幸せを顧みずに。


だけど、私は知っていた。


あの方が長い間お慕いしている令嬢がおられることを。

なんとかして差し上げたい。


そんな時だった。
急ぎで手紙が届き、意中の人と婚約をしたいとの事が書かれていた。


ただ、そうなった経緯を聞いた時は。


「今すぐ海に…」

「セラ、落ち着いてくれ」

「婚約者を傷物にするとはなんという最低な男ですの?絶対に許しませんわよ」


何処の世界に浮気をして婚約者を殺そうとする男がいるのか。
聞けば聞く程許せなかったけど、ウィルフレッド様との婚約を成立させるために私達は作戦を考えた。


背中の傷は火傷は治せても風の魔法で受けた傷は簡単に消せないけれど、国にも戻れば可能だわ。


何よりウィルフレッド様に婚約者ができた事は何よりも嬉しい事だったけど。

思わぬ誤算はジゼル様が大変優秀でいらしたことだ。
財務大臣よりも数字に強く、宰相のピッコロよりも博識で学びに精通している。


王妃陛下としてこれ以上望ましい方はいない。
私はジゼル様が王妃に相応しい事を知らせるために大臣達を説得してから再び隣国に向かった。




「なんとか間に合いそうですわ」

「お疲れ様、セラ」

「ええ」

ピッコロに苦労をねぎらわれたけど、国の為でもあるのだから。


「邪魔者は排除しました。今後彼女が地下牢から出ることがない様にしてくださるそうですわ」

「あのナターシャという女、本当に何処かの国のスパイか?」

「私も、スパイにはあまりにも…」


高位貴族の事情に詳しいから最初は危険視していたけど、自白をしなかったと聞く。

誰かを庇っているわけでもないし。
組織を庇うような人間にも見えないと判断した。


「おかしなことばかり言っていますから、既に尋問は意味がないとされました」

「どうせ、一生日の目を見る事はない」


あの女がジゼル様に手を出す事はできないわ。
そしてあの男も。


これで安心して帰国できるわ。


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