君の紡ぐ言葉が聴きたい

月内結芽斗

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番外編

番外編1. 見届け人村田ひな子

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お久しぶりです! 番外編最初は村田ひな子の視点から、2人が付き合い始めて最初の月曜日のお話です。
新しい登場人物が出ます。
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「ひな子! ちょっと!」

 廊下を歩いていたら、他クラスの恵那に呼び止められた。こっちに走ってきて腕を取られる。

「何? 今からお昼買おうかなって思ってたんだけど」
「緊急会議だよ!」

 恵那についていくまま入ったのは、テニス部の部室になっている部屋だった。そこにはすでに二人、二年生の女子が集まっていてただならない空気を感じた。

「それで緊急会議って宮本くんたちのこと?」

 集まった女子たちはよく知っている。一人は宮瀬組のゆうか、一人は宮本組の奈々美だ。

「そうなんだよ。ひな子は女子の中じゃ一番宮本くんと仲良いし、緊急で呼んだんだよ!」

 恵那が椅子を引っ張ってきて私に座るように促してきた。

「緊急会議っていってもあれでしょう? 付き合い始めたことをお祝いするだけの場でしょう?」

 目の前のテーブルにホットスナックが並んでいたので、勝手に手に取って食べることにした。結局購買に寄れなかったから。
 肉まんを手に誰かが話し始めるのを待っていると、恵那が語り始める。

「私、宮本くんが髪を切って初めて登校した日、宮瀬くんの言動を見て、これはあれですなって思ったわけ。宮宮組をそれとなく広げていたわけだけど……」
「「「知ってる」」」

 私たち残りの三人の声が重なった。

 その日のうちに、両方の組のグループメッセージに入った恵那がそれはもう本当にすごい勢いで、二人が両思いだと主張し始めたから。それが――

「それが二人の日誌を見て確信したわけだけど」
「「「それも知ってる」」」

 木曜日に熱から復活した私は、その日の放課後に日誌を書こうとして、宮瀬くんの書いたものを見てしまった。宮瀬くんは宮本くんのことが恋愛的に好きなんだろうな、と思っていたから、それが事実だとわかって、宮瀬くんの甘いメッセージに、私はニヤニヤが止まらなかった。止めなければと思っていたのだ。

思っていたら、目の前に恵那が現れて、「なんでニヤけてるの?」と手元の日誌を奪って、悶えた。

「……はい。やっぱり二人はベストオブカップルでした。私の念願叶いました」
「まだカップルじゃないんじゃない?」

「いやこれは時間の問題でしょ? 宮本組と宮瀬組、両方から発生していたカップル推しの子たちが全米で泣くわ」
「発生させたのは恵那でしょ?」
「えー、そうだけどさー」

 恵那の言い回しが面白くてつい笑ってしまった訳だけれど、そのあいだに恵那が宮本組と宮瀬組のメッセージに近況報告をしていたとは思わなかった。

 帰りのバスの中でそのことに気づいても時すでに遅し。宮瀬くんの気持ちは宮本組と宮瀬組からまたいろんなところに拡散されていた。

 もうこうなってしまったら私も動くしかない。外野がとやかく言って恋路の邪魔をする前に、二人が自分たちで近づけるように応援するしかない。

 宮本くんが復帰した金曜日の図書室で、それとなく宮本くんに他の人の日誌を読むように言った。しばらくしてから、シャッター音が鳴って、宮本くんが日誌にスマホを向けているのが見えた時の私の心境は、もうどんな言葉を使っても表せない。
 がんばれ、と拳を握った。

 宮本くんがその日に書いた日誌もどういうわけか拡まっていた。聞くところによると、ここでも恵那が関係しているらしかった。恵那は自分も図書委員なのをいいことに、図書室が閉まったあと忘れ物をしたといって中に入り、日誌を覗いたらしい。

 宮本くんの好きな人は、すぐに修学旅行のグループを調べ上げられて気づかれた。これはもう両思いだと、恵那を筆頭にみんながグループメッセージ上で騒ぐ中、私は控えめに拍手をした。

 それと同時に宮本くんたちのプライバシーが本格的に心配になったので、一応、今後は少し節度を持って見守りましょうということをメッセージした。

――もちろんだよ!

 みんなはこんなふうに返してくれたが、それでも興奮は抑えられないらしく、しばらくの間、妄想話と考察で盛り上がっていた。

 でも本当に恐るべし、恵那の行動力の暴走。

 恵那の暴走によって、二人は晴れて勝手な公認カップルになったわけだけど、それからしばらく二人は話していないようだった。心配で仕方なくて、何度も宮本くんに話しかけに行ったけれど、元気がなくて今にも泣きそうな表情に、どうしてあげることもできなくて、困ったのだ。

 恵那にそのことを話したら自分が盛り上げすぎたせいで邪魔をしたかもしれないと気をもんでいたけれど、そこは気にしてもどうにもならないし、二人が関係を改善できるのを待つしかないと思った。

 そしたら今度はバスケ部が、二人が付き合いだしたと、カフェにいる二人の盗撮付きで拡散した。これには学校中、大騒ぎだ。一年も二年も三年も狙っていた宮瀬くんがついに恋人を作ってしまって、女子たちは荒れに荒れた。普段は一切稼働せず、存在すら忘れていた二年生全体のグループメッセージは大騒ぎだったし、きっと一年、三年のメッセージも同じようなものだったと思う。

 荒れる女子たちを他所に、バスケ部たちが次々と祝いの言葉を送る中、普段は全体グループには絶対に参加しない宮瀬くんが一言送った。

――ありがとう。俺今すごく幸せ。

 リア充爆発しろと思ったのは内緒だ。宮瀬くんが爆発してしまっては宮本くんが悲しんでしまうから、思ったことはそのまま飲み込んだ。

 このシンプルで核心的なメッセージに、女子たちも黙ってしまった。好きな人が幸せと言っていて、それでもとやかく言う女子はいない。

 まだ良かったのはこの学年全体のグループメッセージに宮本くんが入っていなかったことだ。多分宮本くんがいたら、もっとメッセージ画面は荒れていただろう。

「まあ、というわけで、私は記念すべき彼らのお付き合いを祝って、これからは陰ながら支えていきたい所存なのですよ。意義はありませんね」

 恵那がおかしな口調で、議長のようにステンレスの水筒をカンカンカンと鳴らした。

「いや、意義はないよ。だって私たち宮瀬組はどちらかというと付き合いたい人たちの集まりじゃなくて、ファンとして応援する集まりだったしね。女子に取られるより全然良いわけなんだよ」

 ゆうかが複雑な表情を浮かべながら言う。彼女のいうように、宮瀬組も宮本組も二人と付き合いたい人の集まりというより、推したい人の集まりだったから、取られて悔しいという気持ちにはならないのだ。

「私も意義ない。なんならあの宮本くんを守れるのは宮瀬くんしかいない気がするし……。ゆうか、マジで宮瀬くんが宮本くん泣かしたら、抗争だよ」

「えっうん。それはそう。宮本くん泣かすのは普通に大罪でしょ? 最推しでも許せないなあ」

 ゆうかと奈々美があれこれと言い合っているのを眺めながら、私はまだ肉まんを食べていた。これ私が呼ばれた意味あったのかな。

「はい! ということでですね。私たちは二人を見守っていきましょうということで、ここで合併しましょうや」

 恵那が二人に手を差し出して、二人はそれに応えるように握手をした。

 私の役目はどうやら宮瀬組と宮本組の吸収合併見届け人だったらしい。





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