君の紡ぐ言葉が聴きたい

月内結芽斗

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番外編

番外編4. 修学旅行-3

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お久しぶりです。いかがお過ごしでしたか?
最近は本当に寒いですね。体調に気をつけていきましょう

修学旅行の続き、アメリカに着いてからです。
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 初日はホテルに荷物を預けたあと、再びバスに乗って、名所を回った。うちのクラスは仲が良くて、事あるごとにクラス写真が増えていく。クラス別でルートを変えているから、そこまで生徒で混んでいるというわけではないけれど、ちょうど観光に来ていた外国の人は、僕たち日本人の多さに何事かと目を向けていた。

 颯人はよく声をかけられていて、特に若い女の人たちからが多い。流暢な英語で相手をする颯人に、彼が春にしていた英語の発表を思い出した。今の颯人はあのとき単語がわからないと言っていたときとはまるで別人のように見えた。

「しゅ駿くん、颯人って英語……」

 遠巻きに見ていた僕は、近くでスマホをいじっていた駿くんに聞いた。

「えっ? ああ。春の英語の授業の時のあれ、演技だよ。憎たらしいよな」

 駿くんがいうには颯人はあの時、他の班が誰も準備が済んでなかったなかで、自分が最初に発表すれば、みんな後に続きやすいし、自分がトム先生に色々と聞いている姿を見れば、自分たちも聞きやすいだろうと思ったんじゃないの、ということだった。

 確かにできるのに本領を発揮しなかった颯人は憎たらしい。でも、周りのことを考えてあの場ですぐに動く颯人の気遣いも憎たらしいなと思った。
 僕はまた、今まで以上に颯人が好きになってしまう。

 僕たちは何の団体なのか颯人に聞いてきた女の子が去っていくと、駿くんが大笑いしながら颯人に近づいてその腕を小突いた。

「ナンパされてたわけ? やっぱりアメリカじゃなくて韓国行ってたら、今頃スカウトされてたんじゃね?」
「ナンパじゃない。それにスカウトされたいのは駿の方だろ?」

「それにしても颯人の顔の良さは世界共通なんだな」

 写真を撮っていると思っていた将吾も感心したように口を開く。僕も激しく同意した。
 颯人はふっと笑って下を向いた。少し照れているのかもしれない。


 一日目はすぐに終わって、僕たちはホテルに着いた。思ったよりも綺麗なホテルで、先生たちがホテル代を吟味しながら頑張って探してくれたことがわかった。

 ホテルの部屋は将吾と一緒だ。

 班になって部屋割りを決めたとき、他のグループの子たちが僕たちの席に来て言ったのだ。将吾と同室になった方がいいって。それで、将吾を見たらすごく困った顔をしていて、颯人はすごい顔でみんなを睨んでいた。

「宮本、修学旅行はな、友達との思い出作りなんだぞ」

 その時後ろから声が掛かって振り返ったら、腕を組んだ加藤先生が僕ではなく颯人を見ながらにっこり笑っていた。

 確かに修学旅行は友達との思い出作りの場だ。僕の一番仲のいい友達は将吾だし、颯人の一番仲のいい友達は駿くんだ。
 先生のアドバイスに従って、僕は将吾に同室になってくれるようお願いした。

 僕たちの部屋と、颯人たちの部屋は向かい同士だった。ドアの前で、別れを告げて、部屋に入る。ベッドが二つ、少し窮屈そうに並んでいた。スーツケースを広げるスペースは十分にあったから、僕は部屋の端の方で荷物を開けさせてもらった。

 明日は現地の学校との交流会で、それが終わったらそのままホームステイだから、荷物はなるべくスーツケースから出さない方がいいだろう。コンパクトに動きながら寝る支度をしていたら、後ろから将吾に声をかけられた。

「ほんとに颯人と同じ部屋じゃなくてよかったの?」

 すでにベッドの一つに横になって寝釈迦像のようなポーズをとっている将吾が尋ねてきた。

「どうして?」
「どうしてって彼氏じゃん。普通に他の男と同じ部屋なの、颯人いやなんじゃない?」

 その考えはなかった。班決めの時だって颯人は将吾と同室なのを認めてくれたし、将吾だってあの時何も言わなかった。今更変わるって言っても、飛行機と違って、先生もそれは許してくれないだろう。

「でも、将吾が一番仲良い友達だし……」
「ああ、加藤の鶴の一声ねえ」
「鶴の一声?」
「みんなそう言ってた」

 よくわからないなと思っているとドアをノックする音が聞こえた。

「奏、俺だけど」
「オレオレ詐欺じゃん」

 ドアの向こうから聞こえてくる颯人の声に、将吾が笑う。駿くんといる時間が増えたからかわからないけれど、最近将吾が少し駿くんみたいになっている気がしておもしろい。
 ドアを開けると颯人が目を細めて立っていた。

「詐欺じゃない」

 聞こえていたらしい。駿くんもちょうど向かいのドアから出てきて、こっちに入ってきた。

「修学旅行といえば集団で雑魚寝でしょ? それができないから四人でとりあえずトランプだけでもしようっていうことで、お邪魔しまーす」
「もうとっくに部屋に踏み込んできてるよ」

 二人の掛け合いに笑いながら、颯人の手を取ると颯人も嬉しそうに笑ってくれた。
 四人でトランプをしていたら、いつの間にか全員寝落ちしてしまったらしい。


 朝、話しかけてくる声が耳に届いた。
「奏、起きて。ほら寝起き悪いんだから誰よりも早く起きておかないと」
 まだ眠かったから、枕だと思うものを引き寄せて顔を埋めたら小さな笑い声が聞こえた気がした。

「そんなに寝てたいの?」
「んんんん」

 ぎゅっは? と耳元で声が囁いてきたから手を伸ばした。

「これ以上奏の可愛いお寝坊は誰にも見せたくないからね」

 濡れたタオルが顔に触れるのを感じて、僕はやっと目覚めた。洗面所にいた。

「おはよう」

「……おっおはよう」

 視界に広がる颯人の蕩けるような笑顔に僕は朝から窒息しそうだった。

「俺も自分の部屋で支度してくるから、朝食で会お」
「……うん」

 絡められた指先が遊ぶように僕の爪を撫でた。それだけで僕は不思議な気分になってしまう。
 洗面所から去った颯人の駿くんを叩き起こす声が聞こえてくる。鏡に映った自分から僕は目を逸らした。

「おいっいい加減っ、おいっ駿、お前支度長いんだから早く起きろって!」
「いったいなあ! 起きてるって!」
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