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番外編
番外編4. 修学旅行-2
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次の日、普段の何倍も早く起きて、僕たちは家を出た。薫姉さんも簡単に着替えて最寄り駅まで送ってくれた。
「気をつけるんだよー!」
「はい、薫さん! ありがとうございました!」
薫姉さんとすっかり打ち解けた将吾は、姉さんからハグを受け、僕も姉さんとハグをして別れた。数日間の旅行だけど、ほんの少し寂しくなってしまう。
二人で数駅電車に揺れる。お土産は何がいいか、何が食べたいか話していたらあっという間に空港に直結している駅に着いた。
「奏、おはよう」
改札を抜けるとすぐ、颯人が待っていた。長いフライトでも楽なようにダボっとしたグレーのスウェットを着ているが、その姿はいつも通りかっこいい。
「はっ颯人、おはよう」
「相変わらず、俺には挨拶しないんですか?」
「将吾もおはよう」
「おはよう。駿は?」
「こっちまで歩くの嫌だって。荷物見てもらってる」
颯人が僕からスーツケースを奪ってしまって僕は手持ち無沙汰だ。帽子を深く被った颯人は、母さんが騒いでいた空港でのアイドルみたいで、つい見上げてしまう。
「ん? どうしたの?」
僕の視線に気づいたのか、口角を高く上げて問うてくれる。
「アイドルみたいで、かっかっこいいなって」
「……奏は可愛い」
僕たちを後ろから追いかけていた将吾が、呆れたような笑い声を出す。
「そういえば颯人、奏って朝めっちゃ弱いんだな」
「……喧嘩売ってる?」
「ははは」
修学旅行の一団を見つけた将吾は笑いながら先に行ってしまった。確かに僕は朝、起きるのが下手で、気づいたら洗面所なんてこともあったけど、みんなが話題にあげるほどなのかな?
僕たちも一団に混ざって、スーツケースを置いた。グループ全員が揃っていれば、担任に声をかけて勝手にチェックインをしていいことになっている。ただでさえ多い修学旅行生が固まって行動していたら一般の人の迷惑になるかららしい。だから僕たちも早速荷物を預けて、施設内をぶらぶらすることにした。
四人で歩いていると、僕以外はみんな背が高いからか結構目立つみたいで、何度もすれ違う人たちに見られた。中には話しかけてくる人もいて、颯人は芸能人なのか、連絡先は交換できないか聞かれていた。駿くんにその度に颯人を茶化していた。
颯人はいちいち対応するのが面倒だと言って、途中から帽子をとって、僕の手を握りだした。将吾や駿くんの前ならともかく、人前ではあまり手を繋がないようにして僕を気遣ってくれていたから、これはイレギュラーなことだった。
「奏が俺を守ってね」
男同士が手を繋いでいればそれはもうカップルだ。今度は違う意味で目立ってしまって、僕はもう真っ赤だったと思う。
途中で本屋に寄って、僕と颯人は揃いで本を買った。読み終わったらお互いに感想を言い合おうと約束する。そんな僕たちを横目に駿くんは「恋愛がしたい」と言っていた。
「駿が恋愛してもこんな感じにはならないだろ?」
将吾の指摘に駿くんが顔を顰めた。
本を買って満足した僕たちは、保安検査を済ませて搭乗エリアの方に入った。こっちにもたくさん店があるので、また四人で適当な店を見て回る。そうやって時間を潰していたら、搭乗ゲート集合時間はすぐにきて、僕たちはそっちに向かった。途中で颯人がカフェラテを買った。
ゲート前についてすぐ、颯人は僕のチケットを回収すると、クラスメイトの一人に話しかけに行った。
「何してるのかな?」
「ん? クラスのグループチャット見てない? チケットもらってすぐ颯人のやつ、グループに写真送って、座席交換してくれって言ってたじゃん?」
駿くんの指摘を受けて、スマホを開いた。本当だ。なかなかスマホは見ないから気づかなかった。でもいつの間にそんなことしてたんだろう?
「加藤が、座席の交換は自分たちでしろって言ってたからさ、颯人、どうしても奏と隣になりたいんだなあ」
チケットはチェックイン順だから大抵隣になれるけれど、颯人と僕はちょうど一列前後で離れてしまった。だから颯人は、席を変わってくれる人を探したようだ。
戻ってきた颯人は満足そうに、僕にチケットを返してくれた。
「感謝の印のカフェラテ断られちゃった。奏飲む?」
「う、うん。……ありがとう、嬉しい」
「ふふ、俺が奏の隣じゃないと嫌だったんだよ」
十数時間のフライトは本当に長かった。でも楽しかった。
機内食は僕がチキンを頼んで、颯人がビーフを頼んで、お互いに分け合えたし、映画も同じものを見て感想を言い合った。日付変更線を越える時は、周りの席の子たちと一緒に盛り上がったりした。全部特別で、本当に嬉しかった。
アメリカについた時は全員へとへとだったけれど、ロサンゼルスの空は朝になったばかりで不思議な気分だった。税関では本当に緊張したけれど、颯人に前もって教えられていた通りに書類を見せたら、強面のお姉さんも笑顔で通してくれた。
「緊張した?」
先に税関を通っていた颯人が僕を待っていて、うんうんと頷く。
「俺のとこのおじさん、めっちゃ怖かったんだけど!」
駿くんが大声で叫んだ。
そのあともスーツケースを受け取ったり、スマホの回線を切り替えたり、颯人は何かと助けてくれて、本当に頼りになるなと思った。
「気をつけるんだよー!」
「はい、薫さん! ありがとうございました!」
薫姉さんとすっかり打ち解けた将吾は、姉さんからハグを受け、僕も姉さんとハグをして別れた。数日間の旅行だけど、ほんの少し寂しくなってしまう。
二人で数駅電車に揺れる。お土産は何がいいか、何が食べたいか話していたらあっという間に空港に直結している駅に着いた。
「奏、おはよう」
改札を抜けるとすぐ、颯人が待っていた。長いフライトでも楽なようにダボっとしたグレーのスウェットを着ているが、その姿はいつも通りかっこいい。
「はっ颯人、おはよう」
「相変わらず、俺には挨拶しないんですか?」
「将吾もおはよう」
「おはよう。駿は?」
「こっちまで歩くの嫌だって。荷物見てもらってる」
颯人が僕からスーツケースを奪ってしまって僕は手持ち無沙汰だ。帽子を深く被った颯人は、母さんが騒いでいた空港でのアイドルみたいで、つい見上げてしまう。
「ん? どうしたの?」
僕の視線に気づいたのか、口角を高く上げて問うてくれる。
「アイドルみたいで、かっかっこいいなって」
「……奏は可愛い」
僕たちを後ろから追いかけていた将吾が、呆れたような笑い声を出す。
「そういえば颯人、奏って朝めっちゃ弱いんだな」
「……喧嘩売ってる?」
「ははは」
修学旅行の一団を見つけた将吾は笑いながら先に行ってしまった。確かに僕は朝、起きるのが下手で、気づいたら洗面所なんてこともあったけど、みんなが話題にあげるほどなのかな?
僕たちも一団に混ざって、スーツケースを置いた。グループ全員が揃っていれば、担任に声をかけて勝手にチェックインをしていいことになっている。ただでさえ多い修学旅行生が固まって行動していたら一般の人の迷惑になるかららしい。だから僕たちも早速荷物を預けて、施設内をぶらぶらすることにした。
四人で歩いていると、僕以外はみんな背が高いからか結構目立つみたいで、何度もすれ違う人たちに見られた。中には話しかけてくる人もいて、颯人は芸能人なのか、連絡先は交換できないか聞かれていた。駿くんにその度に颯人を茶化していた。
颯人はいちいち対応するのが面倒だと言って、途中から帽子をとって、僕の手を握りだした。将吾や駿くんの前ならともかく、人前ではあまり手を繋がないようにして僕を気遣ってくれていたから、これはイレギュラーなことだった。
「奏が俺を守ってね」
男同士が手を繋いでいればそれはもうカップルだ。今度は違う意味で目立ってしまって、僕はもう真っ赤だったと思う。
途中で本屋に寄って、僕と颯人は揃いで本を買った。読み終わったらお互いに感想を言い合おうと約束する。そんな僕たちを横目に駿くんは「恋愛がしたい」と言っていた。
「駿が恋愛してもこんな感じにはならないだろ?」
将吾の指摘に駿くんが顔を顰めた。
本を買って満足した僕たちは、保安検査を済ませて搭乗エリアの方に入った。こっちにもたくさん店があるので、また四人で適当な店を見て回る。そうやって時間を潰していたら、搭乗ゲート集合時間はすぐにきて、僕たちはそっちに向かった。途中で颯人がカフェラテを買った。
ゲート前についてすぐ、颯人は僕のチケットを回収すると、クラスメイトの一人に話しかけに行った。
「何してるのかな?」
「ん? クラスのグループチャット見てない? チケットもらってすぐ颯人のやつ、グループに写真送って、座席交換してくれって言ってたじゃん?」
駿くんの指摘を受けて、スマホを開いた。本当だ。なかなかスマホは見ないから気づかなかった。でもいつの間にそんなことしてたんだろう?
「加藤が、座席の交換は自分たちでしろって言ってたからさ、颯人、どうしても奏と隣になりたいんだなあ」
チケットはチェックイン順だから大抵隣になれるけれど、颯人と僕はちょうど一列前後で離れてしまった。だから颯人は、席を変わってくれる人を探したようだ。
戻ってきた颯人は満足そうに、僕にチケットを返してくれた。
「感謝の印のカフェラテ断られちゃった。奏飲む?」
「う、うん。……ありがとう、嬉しい」
「ふふ、俺が奏の隣じゃないと嫌だったんだよ」
十数時間のフライトは本当に長かった。でも楽しかった。
機内食は僕がチキンを頼んで、颯人がビーフを頼んで、お互いに分け合えたし、映画も同じものを見て感想を言い合った。日付変更線を越える時は、周りの席の子たちと一緒に盛り上がったりした。全部特別で、本当に嬉しかった。
アメリカについた時は全員へとへとだったけれど、ロサンゼルスの空は朝になったばかりで不思議な気分だった。税関では本当に緊張したけれど、颯人に前もって教えられていた通りに書類を見せたら、強面のお姉さんも笑顔で通してくれた。
「緊張した?」
先に税関を通っていた颯人が僕を待っていて、うんうんと頷く。
「俺のとこのおじさん、めっちゃ怖かったんだけど!」
駿くんが大声で叫んだ。
そのあともスーツケースを受け取ったり、スマホの回線を切り替えたり、颯人は何かと助けてくれて、本当に頼りになるなと思った。
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