嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ

文字の大きさ
10 / 46
出会い編

10, フリルがいっぱい

しおりを挟む
「さあさ、こちらが奥様のお部屋です。旦那様をお呼びするまで少し寛がれませ。」

乗り込んだ自動車は排煙を散らしながら貴族の邸宅が立ち並ぶセレン第7区に辿り着き、ひときわ立派な屋敷の前で止まった。

屋敷内の一室に通されルパートさんが弾むような軽い足取りで椅子を引いてくれる。

部屋に入ったとたんつい二の足を踏んだ。
なんか、フリフリな部屋なんだ……。
カーテンとか、ランプシェードとか、ベッドカバーとか、フリフリで落ち着かない。
全然今の流行りじゃない。フルドールの市民革命前かな?って感じ。
当たり前だけど僕の趣味でもない。
僕の今の質素なラウンジジャケット姿だと完全にちぐはぐだ。
女装でも僕はシンプルなデザインばかり着るから馴染むか怪しい。

こんな部屋、わざわざ僕のために用意したわけじゃないだろう。
時代遅れなのはそのせいかもしれない。
キョロキョロ辺りを見回しながら、引いてもらったピンクの布地の周りにレースの刺繍がこんもりされたチェアに座った。

「奥様、実は私、お伝えしなくてはいけない事があるのです。」

僕を座らせたルパートさんがすまなさそうに眉を下げる。

「はあ、何でしょう。」

「貴方を訪ねたのは旦那様の命ではないのです。」

「はあ……。」

僕を呼び出したのはリリック伯爵じゃないのか?

「旦那様が貴方を迎えにいくかどうかずっとうじうじ……いや、もたもた……いや、まあ、とにかく、旦那様の様子があまりに鬱陶し……いや、哀れ……いや、いじらし……いや、まあ、とにかく、見かねて我々家臣達の独断で貴方をお迎えに上がったのです。」

「はあ。」

何だろう。主人に使うと思えない語彙ばっかり飛び出してきた気がするけど。

「だからですね、今から研究室にいらっしゃる旦那様に奥様がいらした事をお伝えするんですが、少し説得に時間がかかるかもしれません。用意ができましたらお呼びしますので気長にお待ちいただけますか?」

「はあ。」

何なんだ。別に嫌嫌だったら会わなくていいけど。
離婚だけしてくれれば。

「あと、旦那様とお話しする時は2メートルくらい離れて下さいましね。初夏の川にいきなり飛び込んだら心臓がビックリしてしまうでしょう?ちょっとずつ慣らして下さいね。」

「???」

わけがわからない。僕冷水なの?
近づかれたくもないってこと?

「旦那様はとても可愛らしい方なので、きっとお二人は仲良しになれますよ。」

その言葉に更に訳が分からなくなる僕を横目に、ふふっと笑って彼は部屋を去った。


自分で言った通り、それきりルパートさんは中々帰ってこない。
かれこれ半刻くらい待っている。
その間僕は退屈だったので勝手に棚の本を物色していた。
そこには戯曲やそれの原作になっているような有名な小説のタイトルばかりが並んでいる。
僕が出たタイトルは全部あるし、気になってるやつもたくさん。

この部屋を作った人、インテリアの趣味は合わないけどお芝居の趣味はバッチリ合いそう。
あとお花の趣味ね。
華やかな柄が散りばめられた陶磁器の花瓶には、エドヴァル様からよく贈られて来たのと同じ匂いのライラックを基調とした淡い紫の花束が綺麗に活けられている。

誰なのかな。女性の部屋みたいだから、元々はリリック伯爵のお母さんか姉妹の部屋だろうか。

リリック伯爵か……。結婚する時も書面でサインを見ただけだったし、単にエドヴァル皇帝に命じられて表面上結婚しただけだろうからどんな人か気にしたこともなかった。
僕がいる間一度も王宮に来たって話も聞かなかったし。
まあそれは僕の耳に入らなかっただけかもだけど。

可愛いってどんな感じなんだろう。
神話に出てくるアモールみたいな?
いや、流石に僕と結婚できる年齢なんだからそれはないか。
じゃあ絶世の美少年ヤドニスとか?

でも、だとしたら王宮の貴婦人たちが噂をしないはずなさそうだけどな。

伯爵の姿を考えているうちにようやくルパートさんがやって来て、僕は伯爵の書斎に向かった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【完結】異世界召喚されたのに命を狙われまくるなんて聞いてない。

u
BL
裏タイトル『執着の檻から逃げ出して、』 いつも通り大学から帰ってきてご飯を食べて眠って目が覚めたら、なぜかそこは異世界だった。どうやら俺、鵺野心翔(ヌエノミト)は、異世界召喚というものをされたらしい。 異世界召喚をしたペンドリック王国の王様から第一王子のライナスと結婚し、子をなせと言われる。男である俺に何を言い出すんだと思ったが、どうやら異世界人は子が生めるようになるらしい。 俺は拒否した。だってどう見てもライナス王子も嫌そうな顔をしているし、毎日違う女を閨に呼ぶような奴と結婚どころか仲良くなれるはずがない。そもそも俺は一夫多妻制断固反対派だ。 どうやら異世界召喚した本当の理由、陰謀に巻き込まれていることに気付かない俺は異世界に来てしまったなら学ばねばとこの世界のことを知っていく。 この世界はピラミッド型をしていて上から神界、天界、魔界、妖精界、妖界、獣人界、そして俺が召喚された元・人間界であり現・底辺界と呼ばれる7つの層に分かれた世界らしい。 召喚される理由があるから召喚されたはずなのに、なぜか俺はあらゆるところから命を狙われ始める。しまいには、召喚したはずの当人にまで。………え?なんで? 異世界召喚されたミトは護衛で常にそばにいる騎士、アルウィン・シーボルトに一目惚れのような思いを寄せるようになる。しかし彼には幼い頃からの婚約者がおり、ミトはアルウィンに命を守られながらも叶わない恋心に苦しんでいく。どうやら彼にも何か秘密があるようで……。さらに最初は嫌われていたはずのライナス第一王子から強い執着心を持たれるようになり……。 次第に次々と明らかになるこの世界における様々な秘密。そして明かされる、異世界召喚の衝撃の真実とは――――。 訳あり一途ド執着攻め×努力家一途童顔受けが様々な問題を乗り越え2人で幸せを掴むお話。 ※複数攻めですが総受けではありません。 ※複数攻めのうち確定で一人死にます。死ネタが苦手な方はご注意ください。 ※最後は必ずハッピーエンドです。 ※異世界系初挑戦です。この世界はそういうものなんだと温かい目でお読み頂けると幸いです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

処理中です...