嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ

文字の大きさ
39 / 46
【R15】番外編

5

しおりを挟む
空き部屋に入って荷物を開けていると、廊下からパタパタ誰かが来る音がした。
僕の部屋の前まで来たみたいで、コソコソした話し声が聞こえる。
扉が薄いから丸聞こえだけど。

「おい、まだ来たばかりなんだから迷惑じゃないか?」

「でもガロ座長はいいって言ってたじゃん。」

どうやら知らない男女の声だ。
入り口まで歩いてドアを開ける。

「どうしたの?君たちが新人さん?」

2人は僕を見て驚いた顔をした。
まだ10代後半くらいの女の子と男の子だ。

「はじめましてルネさん!私先月入団したカンナと言います!」

「あ、やっぱり?はじめまして。ルネです。」

「わー!本物だぁ。間近で見ても本当に美人!男の人って思えない。肌も綺麗だし……。」

「ありがとう。カンナもすごく美人さんだね。舞台映えすると思う。」

実際、カンナと名乗った子は中々目を惹く美少女だ。榛色の髪と白い肌に自然に視線がいく。なのにまとってる雰囲気はイメージが決まりきらない所がいい。
オペレッタで出てくる若い女性の役は何でもハマりそうだ。
こういう子は、どんな役をやらせても印象に残るんじゃないかな。

「わぁ!嬉しい!ありがとうございます!」

ばっと勢いよく手を握られた。

「っおい!迷惑だろ!」

一緒にいた男の子が慌ててカンナの手を掴んで僕から引き剥がす。
おやおや。

「君は?」

「……フランツです。」

男の子の方は、長い手足がこれまた舞台では目立ちそうな細身の少年だ。
顔立ちも華やかじゃないけど、目が切れ長で涼やか。
地味さは化粧で何とかなるから、この体の存在感は貴重かも。
流石ガロ座長の入れた新人だなぁ。
数年後が楽しみだ。

「フランツ、君もいい役者になりそうだね。ようこそカペラ座へ。」

笑って言えば、フランツは眉間にしわを寄せてこちらを見た。

「あ、あんたは舞台より、地味だな。」

おやおやぁ。

「ちょっと!フランツこそルネさんに何失礼なこと言ってるのよ!ルネさんごめんなさい。この子素直じゃなくて……」

「そうかな?分かりやすいよ。」

だからあんまり君が僕を庇わない方がいいと思うな。

「本当ですか?あれだけでフランツがルネさんの大ファンだって分かったんですか!?私もルネさんの大ファンだからやっと会えて嬉しくて……」

「なっ……カンナ!」

うんうん。共通の話題が欲しくてカンナちゃんに適当に話合わせたんだね。

「それで、ひょっとして稽古のお誘いかな。」

尋ねるとカンナがぴょんと飛び跳ねた。

「そうです!あの、今からお時間空いてますか?」

「うん。稽古室は取ってある?」

「あ、まだです!空いてるのは来る時確認してるので、私予約表に書いてきますね。2人は先に行っててください!」

カンナが小走りで事務室に向かって行ったので、フランツと2人残される。
眉間にしわを寄せたままのフランツがちらりとこちらを見るのと目が合った。
こちらの視線に気付くとぱっとそっぽを向いてしまう。

「君ぃ、僕のファンなんだ?」

ちょっとからかうつもりで言った。
地味って言われた仕返しだ。

「っ……そうだけど……」

あはは。一応まだそういう事にしとくんだ。
可愛いなぁ。でも指導の時にいちいち妬かれたんじゃたまらないから言っとくか。

「残念でした。僕、旦那さんにメロメロだから。」

耳元でこそっと言うと、フランツは飛び跳ねて僕から距離を取った。

「あっ、あんた意地悪だなっ!」

目を見開いて顔を真っ赤にしている。
意地悪したつもりじゃないけど、からかう気持ちはちょっとあった。
確かにそれは良くなかったな。
真面目にやろう。

「ごめん、僕はただ自分の夫以外にそういうつもりになることは一切ないってフランツにわかって欲しかっただけなんだ。」

「まだダメ押しするのかよ!?」

結局フランツの機嫌を損ねたまま僕たちは稽古室に向かった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【完結】異世界召喚されたのに命を狙われまくるなんて聞いてない。

u
BL
裏タイトル『執着の檻から逃げ出して、』 いつも通り大学から帰ってきてご飯を食べて眠って目が覚めたら、なぜかそこは異世界だった。どうやら俺、鵺野心翔(ヌエノミト)は、異世界召喚というものをされたらしい。 異世界召喚をしたペンドリック王国の王様から第一王子のライナスと結婚し、子をなせと言われる。男である俺に何を言い出すんだと思ったが、どうやら異世界人は子が生めるようになるらしい。 俺は拒否した。だってどう見てもライナス王子も嫌そうな顔をしているし、毎日違う女を閨に呼ぶような奴と結婚どころか仲良くなれるはずがない。そもそも俺は一夫多妻制断固反対派だ。 どうやら異世界召喚した本当の理由、陰謀に巻き込まれていることに気付かない俺は異世界に来てしまったなら学ばねばとこの世界のことを知っていく。 この世界はピラミッド型をしていて上から神界、天界、魔界、妖精界、妖界、獣人界、そして俺が召喚された元・人間界であり現・底辺界と呼ばれる7つの層に分かれた世界らしい。 召喚される理由があるから召喚されたはずなのに、なぜか俺はあらゆるところから命を狙われ始める。しまいには、召喚したはずの当人にまで。………え?なんで? 異世界召喚されたミトは護衛で常にそばにいる騎士、アルウィン・シーボルトに一目惚れのような思いを寄せるようになる。しかし彼には幼い頃からの婚約者がおり、ミトはアルウィンに命を守られながらも叶わない恋心に苦しんでいく。どうやら彼にも何か秘密があるようで……。さらに最初は嫌われていたはずのライナス第一王子から強い執着心を持たれるようになり……。 次第に次々と明らかになるこの世界における様々な秘密。そして明かされる、異世界召喚の衝撃の真実とは――――。 訳あり一途ド執着攻め×努力家一途童顔受けが様々な問題を乗り越え2人で幸せを掴むお話。 ※複数攻めですが総受けではありません。 ※複数攻めのうち確定で一人死にます。死ネタが苦手な方はご注意ください。 ※最後は必ずハッピーエンドです。 ※異世界系初挑戦です。この世界はそういうものなんだと温かい目でお読み頂けると幸いです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

処理中です...