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27. シンデレラは真実を言う?
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二人が出逢った思い出の場所の生け垣は意外なことに直されてはいなかった。
手入れが行き届いた素晴らしい庭園なのに、生け垣だけが無惨な姿のままで、ポッカリと人が通れるほどの穴が空いている。
「スナイル様、これはこのままでいいのですか?」
これでは『王家は庭園もまともに手入れ出来ないのか』と他の貴族から軽んじられてしまうのではないだろうかと心配になる。
「ああ、このままでいい。ここはリリィに会えた奇跡の場所だからな」
確かにあんな出会いは二度とないだろう。
あの日のスナイル様とのやり取りを思い出すと『ふっふふ』と自然と笑みが溢れる。
「奇跡というと聞こえはいいですけれども、あの時のスナイル様の口の悪さと言ったらなかったですわ」
本当に王子とは思えない発言で、聞いたときはなんて酷い人だろうと腹が立った。
でも今はそれも忘れがたい思い出になっている。発情期の雌猿に例えられた令嬢達には申し訳ないけれども…。
「確かにな、だがリリィの直球もかなり強烈だったぞ。あれには俺も慌てた。でもこうして今があるのだから、あれは必要だったんだな。俺の口の悪さとリリィの計算しない素直さに感謝だな」
「ふふ、本当にそうですね」
二人で笑い合っていると彼はいきなり跪き私の左手をそっと取る。
『スナイル様、どうしたのですか?』と訊ねる前に彼が口を開く。
「リリミア・ムーア、心から君のことを愛している。どうか俺と結婚して欲しい」
まったく予想していなかった王子からの求婚。
求婚が嫌なのではない、むしろ今すぐ抱きつきたいくらいに嬉しい。
でも心の準備が出来ていないというか、このタイミングでの求婚を受けていいのだろうか。
…だってスナイル様はまだ絶賛錯乱中よね?
だからこそシンデレラに結婚を申し込んでいる。
それでいいの…私?
このまま彼の病気に便乗して幸せなって…。
そこに彼の本当の幸せはあるの?
『便乗婚』という新しい言葉が頭をよぎる。
今まで自分の気持ちに正直に生きてきた。彼が錯乱していると知っていながらも、とにかく後悔だけはしたくないと思って、ただ前だけ真っ直ぐに見てきた。
後悔はしていない。
ちょっとあれなスナイル様だけれども、心から愛している。
その愛は減ることはなく、どんどん増えていく。
だからこそ、愛する彼には本当に幸せになって欲しいという思いが日増しに強くなっていた。
今までは『いつか幸せになれるわ』と前向きに生きてきた私。
でも今はそれが『愛する人を幸せにしたい』に変わっている。
そうじゃない、根本は変わっていない。
彼が幸せではなかったら、私も笑っていられない。
彼が本当に幸せになることが、私の幸せに繋がっていく。
もう偽りはやめましょう。
スナイル様には幸せになって欲しい。
嘘の中ではなく、元の自分を取り戻して真実を見つけて…。
覚悟を決める。深く息を吸ってからスナイル様の目をまっすぐ見つめて話し出す。
「スナイル様、どうか落ち着いて聞いてください。驚かれると思いますが、あなたは今正常な状態ではありません!」
「……リリィ?」
いきなりこんなことを告げられても分からないだろう。でも今言わなければ、彼は偽りの気持ちのまま突き進み、いつか私との結婚を後悔することになる。
「スナイル様はずっと錯乱状態にあります。
本当にごめんなさい、知っていたのに今まで黙っていて。私のことを愛しているのも心の病ゆえと分かっていながら、その気持ちが嬉しくて黙っていました。
でもこれだけは信じていください、どんなあなたでも心から愛しています。病んでいてもいいし、もしモグラだとしても絶対に鍋には入れません」
愛の告白の先に待ち受けているのが別れだとしても、この想いの深さだけはちゃんと伝えたかった。
「ち、ちょっと待ってくれ!リリィの愛は勿論信じているし嬉しい。だが前半部分の錯乱とか後半部分のモグラに例えるとか意味が全く理解できないんだが…」
王子が理解できないのは当然だった。
『モグラになっても鍋に入れない』という表現で伝わる思いなんて…きっとない。
「いいの、今すぐに理解できなくても錯乱中なのだから仕方がないわ。
でも愛しているからこそ、あなたが偽りの求婚をしているのを見過ごせないの。
どうかスナイル様、目を覚ましてくださいませ!
現状の正しい解釈は『あなたは錯乱中、私は片思い中』…なんです」
言ってしまったわ、もう偽りの恋は終わる…。
私の言葉に彼は目を見開き固まっている。
その表情に浮かんでいるのは真実を知っての驚きだけ。
「…………どういうこと…だ…?ケイ」
なぜかスナイル様は真実を告げた私にではなく、後ろを振り返ってそう呟いた。
そこにいるのは護衛騎士のガードナー様だけ。
「どうやらスナイル様が行った裏工作が誤解を生んでいるようですね。正々堂々とせずに外堀から埋めようとなさるから変なふうに拗れてしまったのだと思います。
王子もさきほど仰っていた通り、リリミア様は大変に素直な方ですから…」
ガードナー様の言葉を聞いたスナイル様はそれから『誤解だーー!』と大きな声で叫んだあと必死になって自分は正気だと訴えてくる。
手入れが行き届いた素晴らしい庭園なのに、生け垣だけが無惨な姿のままで、ポッカリと人が通れるほどの穴が空いている。
「スナイル様、これはこのままでいいのですか?」
これでは『王家は庭園もまともに手入れ出来ないのか』と他の貴族から軽んじられてしまうのではないだろうかと心配になる。
「ああ、このままでいい。ここはリリィに会えた奇跡の場所だからな」
確かにあんな出会いは二度とないだろう。
あの日のスナイル様とのやり取りを思い出すと『ふっふふ』と自然と笑みが溢れる。
「奇跡というと聞こえはいいですけれども、あの時のスナイル様の口の悪さと言ったらなかったですわ」
本当に王子とは思えない発言で、聞いたときはなんて酷い人だろうと腹が立った。
でも今はそれも忘れがたい思い出になっている。発情期の雌猿に例えられた令嬢達には申し訳ないけれども…。
「確かにな、だがリリィの直球もかなり強烈だったぞ。あれには俺も慌てた。でもこうして今があるのだから、あれは必要だったんだな。俺の口の悪さとリリィの計算しない素直さに感謝だな」
「ふふ、本当にそうですね」
二人で笑い合っていると彼はいきなり跪き私の左手をそっと取る。
『スナイル様、どうしたのですか?』と訊ねる前に彼が口を開く。
「リリミア・ムーア、心から君のことを愛している。どうか俺と結婚して欲しい」
まったく予想していなかった王子からの求婚。
求婚が嫌なのではない、むしろ今すぐ抱きつきたいくらいに嬉しい。
でも心の準備が出来ていないというか、このタイミングでの求婚を受けていいのだろうか。
…だってスナイル様はまだ絶賛錯乱中よね?
だからこそシンデレラに結婚を申し込んでいる。
それでいいの…私?
このまま彼の病気に便乗して幸せなって…。
そこに彼の本当の幸せはあるの?
『便乗婚』という新しい言葉が頭をよぎる。
今まで自分の気持ちに正直に生きてきた。彼が錯乱していると知っていながらも、とにかく後悔だけはしたくないと思って、ただ前だけ真っ直ぐに見てきた。
後悔はしていない。
ちょっとあれなスナイル様だけれども、心から愛している。
その愛は減ることはなく、どんどん増えていく。
だからこそ、愛する彼には本当に幸せになって欲しいという思いが日増しに強くなっていた。
今までは『いつか幸せになれるわ』と前向きに生きてきた私。
でも今はそれが『愛する人を幸せにしたい』に変わっている。
そうじゃない、根本は変わっていない。
彼が幸せではなかったら、私も笑っていられない。
彼が本当に幸せになることが、私の幸せに繋がっていく。
もう偽りはやめましょう。
スナイル様には幸せになって欲しい。
嘘の中ではなく、元の自分を取り戻して真実を見つけて…。
覚悟を決める。深く息を吸ってからスナイル様の目をまっすぐ見つめて話し出す。
「スナイル様、どうか落ち着いて聞いてください。驚かれると思いますが、あなたは今正常な状態ではありません!」
「……リリィ?」
いきなりこんなことを告げられても分からないだろう。でも今言わなければ、彼は偽りの気持ちのまま突き進み、いつか私との結婚を後悔することになる。
「スナイル様はずっと錯乱状態にあります。
本当にごめんなさい、知っていたのに今まで黙っていて。私のことを愛しているのも心の病ゆえと分かっていながら、その気持ちが嬉しくて黙っていました。
でもこれだけは信じていください、どんなあなたでも心から愛しています。病んでいてもいいし、もしモグラだとしても絶対に鍋には入れません」
愛の告白の先に待ち受けているのが別れだとしても、この想いの深さだけはちゃんと伝えたかった。
「ち、ちょっと待ってくれ!リリィの愛は勿論信じているし嬉しい。だが前半部分の錯乱とか後半部分のモグラに例えるとか意味が全く理解できないんだが…」
王子が理解できないのは当然だった。
『モグラになっても鍋に入れない』という表現で伝わる思いなんて…きっとない。
「いいの、今すぐに理解できなくても錯乱中なのだから仕方がないわ。
でも愛しているからこそ、あなたが偽りの求婚をしているのを見過ごせないの。
どうかスナイル様、目を覚ましてくださいませ!
現状の正しい解釈は『あなたは錯乱中、私は片思い中』…なんです」
言ってしまったわ、もう偽りの恋は終わる…。
私の言葉に彼は目を見開き固まっている。
その表情に浮かんでいるのは真実を知っての驚きだけ。
「…………どういうこと…だ…?ケイ」
なぜかスナイル様は真実を告げた私にではなく、後ろを振り返ってそう呟いた。
そこにいるのは護衛騎士のガードナー様だけ。
「どうやらスナイル様が行った裏工作が誤解を生んでいるようですね。正々堂々とせずに外堀から埋めようとなさるから変なふうに拗れてしまったのだと思います。
王子もさきほど仰っていた通り、リリミア様は大変に素直な方ですから…」
ガードナー様の言葉を聞いたスナイル様はそれから『誤解だーー!』と大きな声で叫んだあと必死になって自分は正気だと訴えてくる。
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