18 / 26
18.つかの間の幸せ
しおりを挟む
おれが釘を刺したのが効いたのか、本邸からの誘いは一切なくなった。
あの女も大人しくしているところをみると、どうやら本邸での生活に満足しているようだ。
侯爵夫妻は現金なもので、あれほど石女だと虐げていたリズの懐妊を知るや否や媚びるような態度で接してくる。今日も前触れもなく勝手にやって来た。本当は追い返そうとしたが、『少しだけでも』とリズが言ったから渋々招き入れてた。
「本当にめでたい事だな。エリザベスの子供の誕生が今から楽しみだ。きっと愛し合うお前達からはロザリンの子より魔力の高い優秀な子が生まれるはずだ。
そうなったら、あちらの子は廃嫡してエリザベスの子を嫡男にしなくてはな。
なあに、私がすべて上手くやるからお前達は何もしなくていい。
ワッハッハ、礼などいらんぞ。可愛い孫の為なんだからこれぐらい当然だ」
「エリザベス、妊娠中は気を付けなさいね。お腹の子は侯爵家の跡継ぎになるのだからちゃんと産むのよ。
子爵家出身のロザリンよりきっとあなたの方が優秀な子を産めるはず、だって伯爵家出身ですものね」
勝手にやって来て、勝手な事ばかり言う二人に心底怒りが沸いてくる。
こいつらどうしてくれようかっ!
証拠を残さない方法…消し炭でいいか。
目の前で消し炭になる侯爵夫妻を想像し、自然と笑みが零れる。それを見て馬鹿なあいつらは増々図に乗って捲し立ててくる。
やはり、やるか。
そんな俺を見て隣にいるリズが口元を片手で隠しながら口パクでなにか言っている。
『だ・め・よ・ア・レ・ク』
やはりリズには敵わない、俺の物騒な考えはお見通しのようだ。腕を俺の手に絡ませ落ち着かせようとしてくれている。
ああなんて可愛いんだ。
困ったようでいて少し怒っているのか?
そんな表情もリズなら最高だ。
うん、天使だな!
目の前の屑よりも隣の天使を優先する、決まりだ!
「胎教に悪いのでもうお引き取りをお願いします」
そう言って彼らが座っている椅子の脚を魔力で折ると、転げ落ちた彼らは慌てて別邸から去って行った。
これで平穏が戻った、愛するリズとの時間を満喫できる。
「もうアレク。あんな事をしては駄目でしょう」
「いいだろう、あれくらい。あいつらは口で言っても理解できないから仕方がないのさ」
「お腹の赤ちゃんもびっくりしているわよ。
お父様が乱暴なのは嫌よね?そうでしょう?赤ちゃん」
リズが母親の顔をして最近膨らみ始めたお腹に向かって優しく声を掛けている。
その声は俺に掛ける声よりも格段に優しくて少し妬けてしまうが、俺達の子なので我慢する。
俺もお腹に顔を寄せて声を掛ける。
「そんなことはないよな。あんな奴らは嫌いだよな?
うんそうか!同じ気持ちか!偉いぞ、流石俺達の子だ」
「生まれる前から親ばかになって…」
「仕方がないだろう、こんなに可愛いんだから」
リズがお腹を撫でている手に自分の手を重ね、一緒に優しく撫でる。
自然とお互いに顔を寄せ合い、軽く口づけを交わす。リズと結婚して愛する人を得た。これ以上の幸せなんてないと思っていたけど、まだまだ彼女となら幸せを増やすことが出来るのを知った。
あの女も大人しくしているところをみると、どうやら本邸での生活に満足しているようだ。
侯爵夫妻は現金なもので、あれほど石女だと虐げていたリズの懐妊を知るや否や媚びるような態度で接してくる。今日も前触れもなく勝手にやって来た。本当は追い返そうとしたが、『少しだけでも』とリズが言ったから渋々招き入れてた。
「本当にめでたい事だな。エリザベスの子供の誕生が今から楽しみだ。きっと愛し合うお前達からはロザリンの子より魔力の高い優秀な子が生まれるはずだ。
そうなったら、あちらの子は廃嫡してエリザベスの子を嫡男にしなくてはな。
なあに、私がすべて上手くやるからお前達は何もしなくていい。
ワッハッハ、礼などいらんぞ。可愛い孫の為なんだからこれぐらい当然だ」
「エリザベス、妊娠中は気を付けなさいね。お腹の子は侯爵家の跡継ぎになるのだからちゃんと産むのよ。
子爵家出身のロザリンよりきっとあなたの方が優秀な子を産めるはず、だって伯爵家出身ですものね」
勝手にやって来て、勝手な事ばかり言う二人に心底怒りが沸いてくる。
こいつらどうしてくれようかっ!
証拠を残さない方法…消し炭でいいか。
目の前で消し炭になる侯爵夫妻を想像し、自然と笑みが零れる。それを見て馬鹿なあいつらは増々図に乗って捲し立ててくる。
やはり、やるか。
そんな俺を見て隣にいるリズが口元を片手で隠しながら口パクでなにか言っている。
『だ・め・よ・ア・レ・ク』
やはりリズには敵わない、俺の物騒な考えはお見通しのようだ。腕を俺の手に絡ませ落ち着かせようとしてくれている。
ああなんて可愛いんだ。
困ったようでいて少し怒っているのか?
そんな表情もリズなら最高だ。
うん、天使だな!
目の前の屑よりも隣の天使を優先する、決まりだ!
「胎教に悪いのでもうお引き取りをお願いします」
そう言って彼らが座っている椅子の脚を魔力で折ると、転げ落ちた彼らは慌てて別邸から去って行った。
これで平穏が戻った、愛するリズとの時間を満喫できる。
「もうアレク。あんな事をしては駄目でしょう」
「いいだろう、あれくらい。あいつらは口で言っても理解できないから仕方がないのさ」
「お腹の赤ちゃんもびっくりしているわよ。
お父様が乱暴なのは嫌よね?そうでしょう?赤ちゃん」
リズが母親の顔をして最近膨らみ始めたお腹に向かって優しく声を掛けている。
その声は俺に掛ける声よりも格段に優しくて少し妬けてしまうが、俺達の子なので我慢する。
俺もお腹に顔を寄せて声を掛ける。
「そんなことはないよな。あんな奴らは嫌いだよな?
うんそうか!同じ気持ちか!偉いぞ、流石俺達の子だ」
「生まれる前から親ばかになって…」
「仕方がないだろう、こんなに可愛いんだから」
リズがお腹を撫でている手に自分の手を重ね、一緒に優しく撫でる。
自然とお互いに顔を寄せ合い、軽く口づけを交わす。リズと結婚して愛する人を得た。これ以上の幸せなんてないと思っていたけど、まだまだ彼女となら幸せを増やすことが出来るのを知った。
127
あなたにおすすめの小説
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。
王太子殿下との思い出は、泡雪のように消えていく
木風
恋愛
王太子殿下の生誕を祝う夜会。
侯爵令嬢にとって、それは一生に一度の夢。
震える手で差し出された御手を取り、ほんの数分だけ踊った奇跡。
二度目に誘われたとき、心は淡い期待に揺れる。
けれど、その瞳は一度も自分を映さなかった。
殿下の視線の先にいるのは誰よりも美しい、公爵令嬢。
「ご一緒いただき感謝します。この後も楽しんで」
優しくも残酷なその言葉に、胸の奥で夢が泡雪のように消えていくのを感じた。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」「エブリスタ」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎泡雪 / 木風 雪乃
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる