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2.せめて牛150頭で…
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牛100頭は大国である隣国にとっては大した支出にはならないが、貧乏小国であるこの国ではそうではない。
一人どころか家族全員が一生遊んで暮らせることが出来る価値がある。
『ただより高いものはない』この言葉がロナ姫の脳裏に過ぎる。
うーん…解せませんわ。
こんな美味しい話おかしいですから。
絶対になにかある…!
「父上、これはどうして隣国から貰えたのですか…?我が国から隣国へ輸出しているものなど何もないはずですよね。それともとうとう我が国自体を隣国に売りましたか?
う~ん、でもこんな辺鄙で貧しい土地を欲しがるとは思えませんが…」
ロナ姫の言葉に家臣一同大きく頷いている。驕ることなく自国の価値を正しく理解している優秀な者達である。
「ハッハッハ、その通り!こんな貧乏な国は誰も欲しがらんさ。本当は誰かに押し付けたいぐらいだが誰も貰ってはくれんだろう。
その証拠に、儂が無防備でいても他国から差し向けられた暗殺者に襲われたことは一度もないだろう~。国王に生まれたのだから一回くらいハラハラドキドキの場面を味わってみたいんだがなー」
暗殺者ウェルカム発言している馬鹿な国王に周りは呆れたような目を向けているが、本人は気づいていないので幸せである。
そんな国王を『えいやっ!』とばかりに古株の侍女が一刀両断する。
「国王様、確か10年前にブタに後ろからド突かれて肥溜めに落ちて溺死しそうになっていましたよ。
糞尿で溺死寸前なんて十分ハラハラドキドキした体験ではないでしょうか。それともそれ以上のハラハラ体験をお求めですか?
ふぅー、困りましたね。あれ以上となるとなんでしょうか、熊に追われて肥溜めへダイブバージョンですか?」
『ああそんな事もあったな』とみんな一斉に頷いて、その隣では自分の黒歴史を思い出した国王がまた瀕死の状態になっている。
この国が平和なのは良く分かるが……、これでいいのだろうか。
…きっと良くないだろう。
話が進まないことに痺れを切らした宰相は隠れていた柱の後ろからそっと出てきて国王の代わりに事の次第を話し出す。
(((そんなところにいたのか宰相よ!)))
みんなの視線が一斉に宰相に向けられる。
「えっとですね。実は一ヶ月ほど前に隣国から牛50頭と引き換えに皇帝の後宮に入らないかと話しがありました。そんな失礼な話があるかと憤慨した国王様と私は交渉に交渉を重ね牛50頭の提示を、なんと牛100頭にしたんですよ!」
得意げな様子で話す宰相と寝耳に水の話に啞然とする一同。
「えっ……。後宮?牛100頭?誰が入るの?
ち、父上ですか…??」
「まさか!いくらあの皇帝の後宮とはいえこんな親父が入れるわけないじゃないですか。
ぷぷっぷ。相手から選ぶ権利を奪ってはいけませんよ、姫様」
宰相の言葉を聞いたロナ姫はもう嫌な予感しかしない。
まさか…まさか…この私…?
「……ではだ・れ・な・の?」
「もちろん我が国のたった一人の姫であるロナ様ですよ」
宰相の言葉に頷いているのはいつの間にやら復活した国王ただ一人。
家臣達はハッとして息を呑み、ロナ姫の顔色は見る見るうちに青ざめてくる。
(((お労しや…姫様、ぐっすん)))
そんなロナ姫を見て家臣一同涙ぐんでいる。
だがその後すぐにロナ姫の叫び声が執務室に響き渡る。
「た、たったの牛100頭…!!
なんでですか!しょぼくれた親父である父上の価値がそれくらいなら分かります。
ですがピッチピッチな17歳の私がたったの牛100頭ですって?!
せめて、せめて牛150頭の価値はあるはずですよー!
どうしてたったの100頭で手を打ったんですかなんですか!最低でも牛150頭と交換して欲しかった…ですわ……」
(((突っ込むところはそこかいっ!)))
項垂れるロナ姫を前にして家臣達は気にするところはそこではないと心のなかで盛大な突っ込みをいれる。
そう、家臣達の思考が正しい。
こういう場合、牛何頭というよりも自分が父親と宰相に身売りのようなことをされたことをまずは嘆くべきだろう。
だがそんなまともな家臣達をよそにロナ姫、国王、宰相の三人は『牛何頭問題』『国王しょぼくれ問題』ついでに『焼き鳥問題』についてギャーギャー騒いでいる。
そんな様子を見て、『自分達の大切な姫が隣国の後宮に送られてしまうのか』という家臣達の心に芽生えた悲壮感は一瞬でどこかに吹き飛んでしまった。
(((あの時の私達の涙を返せ!!)))
その代わり『この姫ならどこでも逞しく生きていくだろう』と妙に納得してしまっている。
こうしてロナ姫は牛100頭と交換され隣国の後宮に側妃として嫁ぐことになってしまった。
一人どころか家族全員が一生遊んで暮らせることが出来る価値がある。
『ただより高いものはない』この言葉がロナ姫の脳裏に過ぎる。
うーん…解せませんわ。
こんな美味しい話おかしいですから。
絶対になにかある…!
「父上、これはどうして隣国から貰えたのですか…?我が国から隣国へ輸出しているものなど何もないはずですよね。それともとうとう我が国自体を隣国に売りましたか?
う~ん、でもこんな辺鄙で貧しい土地を欲しがるとは思えませんが…」
ロナ姫の言葉に家臣一同大きく頷いている。驕ることなく自国の価値を正しく理解している優秀な者達である。
「ハッハッハ、その通り!こんな貧乏な国は誰も欲しがらんさ。本当は誰かに押し付けたいぐらいだが誰も貰ってはくれんだろう。
その証拠に、儂が無防備でいても他国から差し向けられた暗殺者に襲われたことは一度もないだろう~。国王に生まれたのだから一回くらいハラハラドキドキの場面を味わってみたいんだがなー」
暗殺者ウェルカム発言している馬鹿な国王に周りは呆れたような目を向けているが、本人は気づいていないので幸せである。
そんな国王を『えいやっ!』とばかりに古株の侍女が一刀両断する。
「国王様、確か10年前にブタに後ろからド突かれて肥溜めに落ちて溺死しそうになっていましたよ。
糞尿で溺死寸前なんて十分ハラハラドキドキした体験ではないでしょうか。それともそれ以上のハラハラ体験をお求めですか?
ふぅー、困りましたね。あれ以上となるとなんでしょうか、熊に追われて肥溜めへダイブバージョンですか?」
『ああそんな事もあったな』とみんな一斉に頷いて、その隣では自分の黒歴史を思い出した国王がまた瀕死の状態になっている。
この国が平和なのは良く分かるが……、これでいいのだろうか。
…きっと良くないだろう。
話が進まないことに痺れを切らした宰相は隠れていた柱の後ろからそっと出てきて国王の代わりに事の次第を話し出す。
(((そんなところにいたのか宰相よ!)))
みんなの視線が一斉に宰相に向けられる。
「えっとですね。実は一ヶ月ほど前に隣国から牛50頭と引き換えに皇帝の後宮に入らないかと話しがありました。そんな失礼な話があるかと憤慨した国王様と私は交渉に交渉を重ね牛50頭の提示を、なんと牛100頭にしたんですよ!」
得意げな様子で話す宰相と寝耳に水の話に啞然とする一同。
「えっ……。後宮?牛100頭?誰が入るの?
ち、父上ですか…??」
「まさか!いくらあの皇帝の後宮とはいえこんな親父が入れるわけないじゃないですか。
ぷぷっぷ。相手から選ぶ権利を奪ってはいけませんよ、姫様」
宰相の言葉を聞いたロナ姫はもう嫌な予感しかしない。
まさか…まさか…この私…?
「……ではだ・れ・な・の?」
「もちろん我が国のたった一人の姫であるロナ様ですよ」
宰相の言葉に頷いているのはいつの間にやら復活した国王ただ一人。
家臣達はハッとして息を呑み、ロナ姫の顔色は見る見るうちに青ざめてくる。
(((お労しや…姫様、ぐっすん)))
そんなロナ姫を見て家臣一同涙ぐんでいる。
だがその後すぐにロナ姫の叫び声が執務室に響き渡る。
「た、たったの牛100頭…!!
なんでですか!しょぼくれた親父である父上の価値がそれくらいなら分かります。
ですがピッチピッチな17歳の私がたったの牛100頭ですって?!
せめて、せめて牛150頭の価値はあるはずですよー!
どうしてたったの100頭で手を打ったんですかなんですか!最低でも牛150頭と交換して欲しかった…ですわ……」
(((突っ込むところはそこかいっ!)))
項垂れるロナ姫を前にして家臣達は気にするところはそこではないと心のなかで盛大な突っ込みをいれる。
そう、家臣達の思考が正しい。
こういう場合、牛何頭というよりも自分が父親と宰相に身売りのようなことをされたことをまずは嘆くべきだろう。
だがそんなまともな家臣達をよそにロナ姫、国王、宰相の三人は『牛何頭問題』『国王しょぼくれ問題』ついでに『焼き鳥問題』についてギャーギャー騒いでいる。
そんな様子を見て、『自分達の大切な姫が隣国の後宮に送られてしまうのか』という家臣達の心に芽生えた悲壮感は一瞬でどこかに吹き飛んでしまった。
(((あの時の私達の涙を返せ!!)))
その代わり『この姫ならどこでも逞しく生きていくだろう』と妙に納得してしまっている。
こうしてロナ姫は牛100頭と交換され隣国の後宮に側妃として嫁ぐことになってしまった。
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