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12.相談に乗る
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今日もロナが『フンフンフン~、馬のフン♪』と鼻歌交じりで馬小屋の掃除をしているとひょっこりとハヤシがお菓子を持って顔を出した。
「おい、ロナ。珍しい菓子が手に入ったんだ、一緒に食ってみようぜ」
「ちょっと待ってくださいね。これを全部終わらせるからっと、」
そう言って残りの藁をフォークで移動してしまおうとすると、横からハヤシがロナが使っているフォークを取りさっさとやってくれる。
「ハヤシ、有り難う♪」
へにゃりと笑うロナを見て『別に』とぶっきらぼうな返事を返すハヤシ。
だがちょっと耳は赤くなっていた。
それに気づいたロナは耳の赤さを寒さから来ていると思い、
「最近寒くなってきましたから、お互い風邪には気を付けましょうね」
と優しい口調で声を掛ける。
ハヤシは慌てて『ゴッホン、ゴッホン』と風邪気味のふりをして誤魔化す。
な、なにを俺は慌てているんだ…。
別にロナを見て赤くなったわけではないだろうがっ!
そしていつものようにくだらない話で盛り上がりながら美味しいお菓子を二人で食べている。
「美味しいですわ~。これぞ幸せって感じです!」
「そうか。こんなことでそこまで喜ぶ女は珍しいな…」
ポツリと呟くハヤシ。
彼の周りには菓子一つで喜ぶような女は誰もいなかった。寄って来るのは私利私欲に塗れた女、傍にいたのは淑女の仮面を被った悪魔だけ…。
だからハヤシにとって素朴なロナの存在は特別だった。
この気持ちが何なのか分かっていないが、大切な人だとは気づき始めていた。
「そうですか。美味しいものを食べると幸せになるのは当たり前ですよ。
私の母国は超がつくほど貧乏だったのでこんな洒落たお菓子はなかったですから」
「ではロナ、お前今は幸せか?」
「はい、幸せですよ♪
縁あってこの国に来ましたが、三食昼寝付きの好待遇のうえ新しい友人にも恵まれました。
でもそれゆえの悩みも出てきましたがね…」
ロナは悲しそうに顔を俯かせる。
な、なんだ…この気持は?
ロナのこんな顔見ると居た堪れない。
力になってやりたい、この俺が。
友の相談に乗るのは当然とばかりにハヤシは言う。
「ロナ、俺で良かったら相談に乗るぞ!一人より二人で悩んだ方が解決策が見つかるやもしれん。
遠慮せずに話してみろ」
ハヤシの温かい言葉に感動し、ロナは相談してみることにした。
「実はですね、私今かなり恵まれた環境にいるんですよ。でも与えられるばかりで何の対価も払っていない状況が心苦しくって…。
周りからは貧乏性って言われるんですけど、どうにも気になって気になって。
でもお金はないし、どうすれば恩を返せるのか分からなくって悩んでいるんです。
ハヤシ、どうすればいいでしょうか?」
うん?ロナは優雅な後宮の生活を申し訳なく思っているのか…。
そんなことで悩む側妃なんて聞いたことが無いぞ。
ふっ、こんなことで悩んで可愛い奴だなぁ。
おもわず顔がにやけそうになり、ハヤシは誤魔化す為に手を口元に当てて考えるふりをする。
「うーん、そうだな。別に無理をしなくていいと思うが。
でもそれじゃあロナの気が済まないんだな…。
なら無理せずできる…つまり得意なことで相手を喜ばせることはあるか?」
「得意な事ですか、う~ん…」
悩むロナにハヤシは助け舟を出す。
「歌を歌うとか、花を活けるとかなんでもいいと思うぞ」
(王族の姫の得意なことの定番なんかどうだ?)
「あっ、ひとつありましたわ!
母国でも流石と褒められていましたの。
私家畜の繁殖が得意なんですよ。
そうね、その手がありましたわ!
それを活かしてしっかり恩返ししますわ。
ハヤシ、有り難う。貴方のお陰で名案が浮かびました♪」
「ち、ちょっと待て。家畜の繁殖?それはどう活かすんだ…」
な、んか…まずいことになりそうな予感がする…。
ロナの憂いは晴れたようで嬉しいが、なぜかハヤシは背中が薄ら寒くなったように感じる。
…それは優れた直観力だな、皇帝ハヤンよ。
「えっへっへ、実はですね。子宝に恵まれない人達が周りにたくさんいるんです。ですから家畜の繁殖技術を取り入れ手助けしようかと思っています!
善は急げですから早速、実行しますわ♪
ハヤシ、良い報告を待っていてくださいね」
「ま、待って、」
ハヤシの制止の言葉は無情にも届かず、ロナは駆けて行ってしまった。
こ、これはまずい、まずい。
子宝に恵まれない人?恩を返す?
絶対に後宮つまり俺絡みじゃんか!
焦るハヤシの後ろから、いつの間にやら現れたトム爺がそっと声を掛ける。
「今までのツケを払うことになりそうですね、皇帝陛下。
まあ頑張ってください。きっとたくさん溜まっているはずですしお若いから乗り切れるでしょう」
皇帝ハヤンは25歳、確かに生殖能力が盛んなお年頃だ。トム爺の言葉は間違ってはいない…?が個人差も考えてあげよう!
クルリと後ろを向き、皇帝ハヤンはトム爺を怒鳴りつける。
「溜まってねーよ!それに他人事だと思って勝手なことほざくなっ」
「他人事ですから」
きっぱりと言うトム爺は将軍時代よりも清々しかった。
「おい、ロナ。珍しい菓子が手に入ったんだ、一緒に食ってみようぜ」
「ちょっと待ってくださいね。これを全部終わらせるからっと、」
そう言って残りの藁をフォークで移動してしまおうとすると、横からハヤシがロナが使っているフォークを取りさっさとやってくれる。
「ハヤシ、有り難う♪」
へにゃりと笑うロナを見て『別に』とぶっきらぼうな返事を返すハヤシ。
だがちょっと耳は赤くなっていた。
それに気づいたロナは耳の赤さを寒さから来ていると思い、
「最近寒くなってきましたから、お互い風邪には気を付けましょうね」
と優しい口調で声を掛ける。
ハヤシは慌てて『ゴッホン、ゴッホン』と風邪気味のふりをして誤魔化す。
な、なにを俺は慌てているんだ…。
別にロナを見て赤くなったわけではないだろうがっ!
そしていつものようにくだらない話で盛り上がりながら美味しいお菓子を二人で食べている。
「美味しいですわ~。これぞ幸せって感じです!」
「そうか。こんなことでそこまで喜ぶ女は珍しいな…」
ポツリと呟くハヤシ。
彼の周りには菓子一つで喜ぶような女は誰もいなかった。寄って来るのは私利私欲に塗れた女、傍にいたのは淑女の仮面を被った悪魔だけ…。
だからハヤシにとって素朴なロナの存在は特別だった。
この気持ちが何なのか分かっていないが、大切な人だとは気づき始めていた。
「そうですか。美味しいものを食べると幸せになるのは当たり前ですよ。
私の母国は超がつくほど貧乏だったのでこんな洒落たお菓子はなかったですから」
「ではロナ、お前今は幸せか?」
「はい、幸せですよ♪
縁あってこの国に来ましたが、三食昼寝付きの好待遇のうえ新しい友人にも恵まれました。
でもそれゆえの悩みも出てきましたがね…」
ロナは悲しそうに顔を俯かせる。
な、なんだ…この気持は?
ロナのこんな顔見ると居た堪れない。
力になってやりたい、この俺が。
友の相談に乗るのは当然とばかりにハヤシは言う。
「ロナ、俺で良かったら相談に乗るぞ!一人より二人で悩んだ方が解決策が見つかるやもしれん。
遠慮せずに話してみろ」
ハヤシの温かい言葉に感動し、ロナは相談してみることにした。
「実はですね、私今かなり恵まれた環境にいるんですよ。でも与えられるばかりで何の対価も払っていない状況が心苦しくって…。
周りからは貧乏性って言われるんですけど、どうにも気になって気になって。
でもお金はないし、どうすれば恩を返せるのか分からなくって悩んでいるんです。
ハヤシ、どうすればいいでしょうか?」
うん?ロナは優雅な後宮の生活を申し訳なく思っているのか…。
そんなことで悩む側妃なんて聞いたことが無いぞ。
ふっ、こんなことで悩んで可愛い奴だなぁ。
おもわず顔がにやけそうになり、ハヤシは誤魔化す為に手を口元に当てて考えるふりをする。
「うーん、そうだな。別に無理をしなくていいと思うが。
でもそれじゃあロナの気が済まないんだな…。
なら無理せずできる…つまり得意なことで相手を喜ばせることはあるか?」
「得意な事ですか、う~ん…」
悩むロナにハヤシは助け舟を出す。
「歌を歌うとか、花を活けるとかなんでもいいと思うぞ」
(王族の姫の得意なことの定番なんかどうだ?)
「あっ、ひとつありましたわ!
母国でも流石と褒められていましたの。
私家畜の繁殖が得意なんですよ。
そうね、その手がありましたわ!
それを活かしてしっかり恩返ししますわ。
ハヤシ、有り難う。貴方のお陰で名案が浮かびました♪」
「ち、ちょっと待て。家畜の繁殖?それはどう活かすんだ…」
な、んか…まずいことになりそうな予感がする…。
ロナの憂いは晴れたようで嬉しいが、なぜかハヤシは背中が薄ら寒くなったように感じる。
…それは優れた直観力だな、皇帝ハヤンよ。
「えっへっへ、実はですね。子宝に恵まれない人達が周りにたくさんいるんです。ですから家畜の繁殖技術を取り入れ手助けしようかと思っています!
善は急げですから早速、実行しますわ♪
ハヤシ、良い報告を待っていてくださいね」
「ま、待って、」
ハヤシの制止の言葉は無情にも届かず、ロナは駆けて行ってしまった。
こ、これはまずい、まずい。
子宝に恵まれない人?恩を返す?
絶対に後宮つまり俺絡みじゃんか!
焦るハヤシの後ろから、いつの間にやら現れたトム爺がそっと声を掛ける。
「今までのツケを払うことになりそうですね、皇帝陛下。
まあ頑張ってください。きっとたくさん溜まっているはずですしお若いから乗り切れるでしょう」
皇帝ハヤンは25歳、確かに生殖能力が盛んなお年頃だ。トム爺の言葉は間違ってはいない…?が個人差も考えてあげよう!
クルリと後ろを向き、皇帝ハヤンはトム爺を怒鳴りつける。
「溜まってねーよ!それに他人事だと思って勝手なことほざくなっ」
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