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第16話 悪役令息の悪友登場
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午前10時――
カチコチ
カチコチ‥‥
時計の秒針を刻む音と、時折ページをめくる音だけが静かな室内に聞こえている。
僕は全神経を集中させて歴史の教科書を読んでいた。
重要そうなページには赤鉛筆で線を引き、ノートに走り書きをする。
走り書きしたノートは後できちんと、まとめとして清書する。
この勉強法は僕が日本人だった時に勉強していた方法と同じだ。
エディットが教えてくれたテスト範囲のページは読み終えるのに残り5ページ。
「よし。残りの5ページをお昼の時間までに読み終えてしまおう。昼の食事は今日も時短する為にサンドイッチにしてもらおうかな」
ここで一度大きく伸びをした。
「う~ん‥‥」
そして凝り固まった首をコキコキ動かし、再び勉強する為に教科書に目を落とした。
その時―。
コンコン
扉のノック音が部屋に響き渡った。
「…誰だろう?」
立ち上がって、扉に向かうとノブを回した。
カチャ‥‥
「ヒッ!!」
扉を開けると、フットマンのジミーが立っていた。
その眼は大きく見開かれ、まるで幽霊でも見たかのような驚愕の表情を浮かべている。
「ジミーか。何か用?どうしてそんなに驚いているんだい?」
そこまで尋ねてピンときた。もしかして勉強を頑張る僕にお茶でも淹れてきてくれたのかもしれない。
「あ…い、いえ…。ま、まさか‥‥アドルフ様自身が扉を開けて下さるとは…その、思いも…し、しませんでした‥‥ので」
舌を噛みながらジミーは自分が驚いた理由を述べる。
「そうだったのか?それは驚かせて悪かったね。それで…お茶でも淹れて来てくれたのかな?」
すると…。
「も、申し訳ございませんっ!ア、アドルフ様の専属フットマンで…あ、ありながら…全く気が利かず…ほ、本当に大変し、失礼致しました‥‥」
小刻みになってブルブル震えながら僕に謝罪をするジミー。
本当にイヤになってくる。
これでは傍から見れば僕がフットマンを虐めているように思われてしまいそうだ。
「ねぇ、僕は別に君に対して怒っているわけじゃないからね?」
こんな場面を何も事情が知らない人が見たら‥‥。
「何だ?アドルフ。お前、また使用人を虐めているのか?」
突然声が聞こえて来た。
そう、こんな風に勘違いされてしまうんだよ‥‥って‥‥。
「え?今の声は?」
すると開かれた扉の陰から、赤毛の青年が現れた。
「全く、お前は本当に懲りない奴だな。相変わらず使用人虐めをしてるのか?何人辞めさせれば気が済むんだよ?10人か?20人か?」
そして赤毛の青年は快活な笑い声を立てた。
「僕はもう、そんな真似はしないと決めたんだよ」
返事をしながら、目まぐるしく頭の中を整理してみた。
え…と…目の前の青年は何て名前だっけ…?
顔は見覚えがあるのに、どうにも名前が思い出せない。喉まで出かかってるんだけどな…。
すると、ここでジミーが助け船?を出してきた。
「そ、それでは御学友のブラッドリー様をご案内させて頂きましたので、失礼致しますっ!」
ジミーは頭を下げると逃げるように去って行った。
「やれやれ…お前の専属フットマン、涙目になって逃げて行ったぜ?それじゃ部屋に入らせてもらうぞ」
赤毛青年は僕の脇をすり抜け、部屋の中に入ってしまった。
うん?ブラッドリー…赤毛の青年‥‥。
「あ…!思い出したっ!ブラッドリー・モーガンッ!伯爵家の長男で僕の友人だ!」
思わずソファに座ったブラッドリーを指さしてしまった。
「どうしたんだよ?その何処か説明がかった話し方といい……おまけに『僕』だって?鳥肌が立っちまったじゃねぇか?」
それにしてもブラッドリーは本当に伯爵家の人間なのだろうか?あまりにも柄が悪すぎる。まるでチンピラのような口調だ。
「おいおい…何だよ、さっきから柄が悪すぎるとか、チンピラだとか…」
気に障ったのか、少しむっとした顔で僕を見る彼。
「えっ?!またしても僕の心の声が駄々洩れになっていたなんて!」
思わず両手で頭を抱えてしまった。
「全く、さっきから変な奴だな…女みたいにナヨナヨした口調になったり、心の声が駄々洩れになっているとか、さっきから訳の分からない事ばかり言いやがって…。あ…‥そう言えばお前、確か馬に蹴られたんじゃなかったか?もしかして馬に蹴られた後遺症か?それで少しおかしくなっちまったのか?本当に大丈夫かよ?」
ブラッドリーは心配そうに尋ねて来た。
うん、ガラは悪いけど‥‥彼は良い人なのかもしれない。
「あははは…うん。大丈夫だよ、まだ記憶は色々曖昧なところがあるけどね」
笑ってごまかすことにした。
「何だ。そうかよ…全く心配かけさせやがって…まぁ大丈夫っていうなら出かけられそうだな」
え?出掛ける?
その言葉に耳を疑う。
「出かけるって‥‥一体何処へ?」
「はぁ?お前、何言って…って。あ、そうか…記憶が曖昧って言ってたもんな?」
ブラッドリーは髪の毛をかき上げ、「はぁっ」とため息をつくと僕を見た。
「今日は一緒に町に行って、記念式典パーティーに着ていくスーツの下見に行く約束してただろう?だから誘いに来たんじゃないか」
「え…?何だって?駄目だよっ!今日は明日の試験の為に勉強をしなくちゃならないんだから!」
とんでもない誘いだ。絶対に行くものか。
「はぁ?試験勉強だって?お前やっぱり頭がイカレちまったのか?今まで試験勉強なんかしたこと無かったじゃないかよ。それにな、今回はお前から誘ってきたんだからな。今さら行かないなんて言わせないからな?」
じろりと睨みつけてくるブラッドリー。
そんな‥…今日は1日勉強する予定だったのに…。
だけど、自分から言い出したのなら……約束は守らなければ。
何しろわざわざ迎えに来てくれているのだし。
「分かったよ…それじゃ、出かけようか?」
暗記する範囲は残り5ページ。
午後3時までに帰宅すれば間に合うかもしれない…と言うか、間に合わすしかない。
「よし、それじゃ行こうぜ!」
嬉しそうに笑うブラッドリー。
こうしてブラッドリーと2人で、予定外の外出をすることになってしまった。
そして、この後思いがけない出来事に巻き込まれ…‥ますます僕の予定は狂っていくのだった――。
カチコチ
カチコチ‥‥
時計の秒針を刻む音と、時折ページをめくる音だけが静かな室内に聞こえている。
僕は全神経を集中させて歴史の教科書を読んでいた。
重要そうなページには赤鉛筆で線を引き、ノートに走り書きをする。
走り書きしたノートは後できちんと、まとめとして清書する。
この勉強法は僕が日本人だった時に勉強していた方法と同じだ。
エディットが教えてくれたテスト範囲のページは読み終えるのに残り5ページ。
「よし。残りの5ページをお昼の時間までに読み終えてしまおう。昼の食事は今日も時短する為にサンドイッチにしてもらおうかな」
ここで一度大きく伸びをした。
「う~ん‥‥」
そして凝り固まった首をコキコキ動かし、再び勉強する為に教科書に目を落とした。
その時―。
コンコン
扉のノック音が部屋に響き渡った。
「…誰だろう?」
立ち上がって、扉に向かうとノブを回した。
カチャ‥‥
「ヒッ!!」
扉を開けると、フットマンのジミーが立っていた。
その眼は大きく見開かれ、まるで幽霊でも見たかのような驚愕の表情を浮かべている。
「ジミーか。何か用?どうしてそんなに驚いているんだい?」
そこまで尋ねてピンときた。もしかして勉強を頑張る僕にお茶でも淹れてきてくれたのかもしれない。
「あ…い、いえ…。ま、まさか‥‥アドルフ様自身が扉を開けて下さるとは…その、思いも…し、しませんでした‥‥ので」
舌を噛みながらジミーは自分が驚いた理由を述べる。
「そうだったのか?それは驚かせて悪かったね。それで…お茶でも淹れて来てくれたのかな?」
すると…。
「も、申し訳ございませんっ!ア、アドルフ様の専属フットマンで…あ、ありながら…全く気が利かず…ほ、本当に大変し、失礼致しました‥‥」
小刻みになってブルブル震えながら僕に謝罪をするジミー。
本当にイヤになってくる。
これでは傍から見れば僕がフットマンを虐めているように思われてしまいそうだ。
「ねぇ、僕は別に君に対して怒っているわけじゃないからね?」
こんな場面を何も事情が知らない人が見たら‥‥。
「何だ?アドルフ。お前、また使用人を虐めているのか?」
突然声が聞こえて来た。
そう、こんな風に勘違いされてしまうんだよ‥‥って‥‥。
「え?今の声は?」
すると開かれた扉の陰から、赤毛の青年が現れた。
「全く、お前は本当に懲りない奴だな。相変わらず使用人虐めをしてるのか?何人辞めさせれば気が済むんだよ?10人か?20人か?」
そして赤毛の青年は快活な笑い声を立てた。
「僕はもう、そんな真似はしないと決めたんだよ」
返事をしながら、目まぐるしく頭の中を整理してみた。
え…と…目の前の青年は何て名前だっけ…?
顔は見覚えがあるのに、どうにも名前が思い出せない。喉まで出かかってるんだけどな…。
すると、ここでジミーが助け船?を出してきた。
「そ、それでは御学友のブラッドリー様をご案内させて頂きましたので、失礼致しますっ!」
ジミーは頭を下げると逃げるように去って行った。
「やれやれ…お前の専属フットマン、涙目になって逃げて行ったぜ?それじゃ部屋に入らせてもらうぞ」
赤毛青年は僕の脇をすり抜け、部屋の中に入ってしまった。
うん?ブラッドリー…赤毛の青年‥‥。
「あ…!思い出したっ!ブラッドリー・モーガンッ!伯爵家の長男で僕の友人だ!」
思わずソファに座ったブラッドリーを指さしてしまった。
「どうしたんだよ?その何処か説明がかった話し方といい……おまけに『僕』だって?鳥肌が立っちまったじゃねぇか?」
それにしてもブラッドリーは本当に伯爵家の人間なのだろうか?あまりにも柄が悪すぎる。まるでチンピラのような口調だ。
「おいおい…何だよ、さっきから柄が悪すぎるとか、チンピラだとか…」
気に障ったのか、少しむっとした顔で僕を見る彼。
「えっ?!またしても僕の心の声が駄々洩れになっていたなんて!」
思わず両手で頭を抱えてしまった。
「全く、さっきから変な奴だな…女みたいにナヨナヨした口調になったり、心の声が駄々洩れになっているとか、さっきから訳の分からない事ばかり言いやがって…。あ…‥そう言えばお前、確か馬に蹴られたんじゃなかったか?もしかして馬に蹴られた後遺症か?それで少しおかしくなっちまったのか?本当に大丈夫かよ?」
ブラッドリーは心配そうに尋ねて来た。
うん、ガラは悪いけど‥‥彼は良い人なのかもしれない。
「あははは…うん。大丈夫だよ、まだ記憶は色々曖昧なところがあるけどね」
笑ってごまかすことにした。
「何だ。そうかよ…全く心配かけさせやがって…まぁ大丈夫っていうなら出かけられそうだな」
え?出掛ける?
その言葉に耳を疑う。
「出かけるって‥‥一体何処へ?」
「はぁ?お前、何言って…って。あ、そうか…記憶が曖昧って言ってたもんな?」
ブラッドリーは髪の毛をかき上げ、「はぁっ」とため息をつくと僕を見た。
「今日は一緒に町に行って、記念式典パーティーに着ていくスーツの下見に行く約束してただろう?だから誘いに来たんじゃないか」
「え…?何だって?駄目だよっ!今日は明日の試験の為に勉強をしなくちゃならないんだから!」
とんでもない誘いだ。絶対に行くものか。
「はぁ?試験勉強だって?お前やっぱり頭がイカレちまったのか?今まで試験勉強なんかしたこと無かったじゃないかよ。それにな、今回はお前から誘ってきたんだからな。今さら行かないなんて言わせないからな?」
じろりと睨みつけてくるブラッドリー。
そんな‥…今日は1日勉強する予定だったのに…。
だけど、自分から言い出したのなら……約束は守らなければ。
何しろわざわざ迎えに来てくれているのだし。
「分かったよ…それじゃ、出かけようか?」
暗記する範囲は残り5ページ。
午後3時までに帰宅すれば間に合うかもしれない…と言うか、間に合わすしかない。
「よし、それじゃ行こうぜ!」
嬉しそうに笑うブラッドリー。
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