婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第15話 愛想を振りまく悪役令息

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 翌日――

今日も6時半に起床すると、朝の支度を全て自分で済ませた。

「あと15分で7時か…。今朝はダイニングルームに食事の用意がされているかな?」

一応、昨夜のうちにフットマンのジミーに翌朝は7時に朝食を用意してもらうように頼んだものの、きちんと伝わっているだろうか…?

「よし、とりあえず、ダイニングルームに行ってみるか。用意がで出来ていなければ、また戻ってくればいいだけのことだし」


そして部屋を出るとダイニングルームへ足を向けた――。



**

「おはよう、今朝も良い天気だね」

廊下で本日7人目のメイドさんに挨拶した。

「お、お、おはようございますっ!アドルフ様っ!」

途端にメイドさんの顔が真っ青になる。彼女の身体はまるでチワワのようにプルプル震えていた。

そしてその目は…涙目だ。

「あ…ご、ごめん。突然声を掛けられたら誰だって驚くよね?悪気は無かったんだ。それじゃあね」

「は、はい…失礼致します…」

笑ってごまかすと、僕は足早にその場を後にした。

しかし……。

困ったな。
自分の悪いイメージを払拭する為に使用人の人達に挨拶しているのに、すればするほど墓穴を掘っている気がする。

いっそ、自分から声を掛けるのをやめにするか……?

いいや、駄目だ。日本人として生きていた時、教わったじゃないか。
挨拶は基本中の基本だって。

毎日、笑顔でこちらから挨拶を続ければ、きっと皆僕が無害な人間だと分かってくれるだろう。

何しろ、周囲の好感度を上げておかなければ僕が将来的に追放されてしまう要因に繋がってしまうかもしれないのだから。

「よし、これからめげずに毎日自分から笑顔で挨拶するぞ」

口に出して、決意を新たにした。

自分の身の保身の為に――。



****

 ダイニングルームに行くと、2人のフットマンが忙しそうにテーブルセッティングをしてくれていた。

お?ちゃんと彼等に僕の言葉が通じていたのか。良かった…。
よし、こちらから元気に声をかけよう。

「おはよう、2人とも。朝食の準備をしてくれてありがとう」

声をかけながらダイニングルームへ足を踏み入れた。

すると……。

「ヒッ!!」
「うわぁっ!!」

彼等は大げさなくらいに大きな声を出し、いきなり頭を下げてきた。

「も、申し訳ございませんっ!ダイニングルームにお見えになりしだい、すぐに朝食を食べられるようにしておけませんでしたっ!た、直ちに、大至急ご用意させて戴きますので、どうかクビだけはお許し下さいっ!」

「決して言い訳するつもりではありませんが、アドルフ様の指定されたお時間は7時丁度。そして今は6時53分。7時まで後7分ありましたので、まだお料理を並べておきませんでした。何故かと申しますと、今並べてしまえばお料理が冷めてしまうかと思ったからです。で、ですから……平にご容赦下さいっ!」

まるでマシンガントークを見ている様だ。
2人のフットマンは言葉を並べ立て続けなければ命でも取られるとでも思っているのだろうか?
ひとしきり、喋った後…ようやく2人は口を閉ざしてくれた。

「あ、あの…。もう僕が喋ってもいいかな……?」

喋り疲れたのだろうか?肩で息をしている2人のフットマンに声を掛けた。

「は、はいっ!」
「どうぞっ!」

2人のフットマンを見ていると、まるで自分が軍隊の鬼軍曹にでもなってしまったかのような錯覚を覚える。

「別に、食事の準備が出来ていなくても並べられていても大丈夫だから。僕はそれくらいのことで文句を言ったりしないよ。それじゃ、用意してもらってもいいかな?」

出来るだけ愛想笑いをしながら2人を交互に見た。

「はい!」
「直ちに!」

そして2人はその後は僕を待たせてはいけないとでも思ったのか、もの凄い速さで準備を始め…5分後には出来立て湯気のたつ料理がテーブルの前に並べられていた。

「どうもありがとう、それじゃ後は1人で食べるから2人は別の仕事をしてきてもらって構わないよ?食べ終えた食器もワゴンの上に乗せておくから」

「えっ……?」
「ほ、本当に……宜しいのですか……?」

2人は信じられないと言わんばかりに目を見開いている。

「うん、本当に本当だよ」

第一、誰かに見られながら食事なんて落ち着かなくて仕方が無い。

「あ、ありがとうございます」
「それでは失礼致します」

お辞儀をし、背を向けて急ぎ出て行こうとする2人に、聞きたいことがあったことを思い出した。

「あ…ちょっと、いいかな?」

「はい!」
「な、何でしょうかっ?!」

大げさなほどに肩を跳ね上げさせて振り返る2人。

「父と母は…食事には来ないのかな?」

やはり朝食は家族と一緒に取るべきじゃないだろうか?

「そ、それが…旦那さまと奥様は…」
「昨夜のアルコールで少々気分が悪いとのことでした…」

申し訳無さげに僕に報告する2人。
ああ…なるほど。つまり、あれだ。二日酔いになったのだろう。

「そうか、分かったよ。ありがとう、悪かったね。引き止めてしまって」

最後にもう一度、愛想笑いをする。

「いえ、とんでもございません」
「どうぞごゆっくり召し上がって下さい」

2人は「失礼致します」と頭を下げ、足早にダイニングルームを去っていった。


「ふぅ……。やっと1人になれた」

まぁ、最後は自分で引き止めてしまったわけだけど…。
何故だろう?
使用人の人達と会話をすればするほどに気疲れするのは…。

「まぁ…いいか。それではいただくことにしようかな…」

そして目の前に並べられた料理を改めて見つめた。

スフレオムレツにボイルドウィンナーとカリカリベーコン。
色鮮やかなグリーンサラダにポタージュスープ。
スコーンにマフィン、そしてテーブルパン。

…どれも洋食ばかりだ。

はぁ~…和食が食べたい……。

仕方無しに目の前の料理に手を伸ばし、今日の予定を思い浮かべながら食事を始めた。

「昨日は教科書を半分読み込んだからな…。午前中に残りの半分を読み終えて、午後は重要な要点をノートに書き出すか…。よし、そうと決まれば早く食事を食べ終えないとな」

そしてその後は黙々と食事を食べ進めた。


何としても歴史のテストでは高得点を取らなければ。大丈夫、やれば出来るはずだ。

しかし…僕の立てた予定はものの見事に崩れてしまう。
何故なら後ほど、とんでもない邪魔者?が僕の元を訪ねてくるからだった――。
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