19 / 221
第19話 ヒロインを助ける悪役令息
しおりを挟む
店の外へ出るとすぐにエディットの姿を探した。けれども人が多くて中々見つけられない。
エディット…どこにいるんだ…?!
「おい、アドルフ。エディットを見つけたぞ」
するとブラッドリーが先に彼女を見つけて声を掛けて来た。
「え?どこにっ?!」
「ほら、あそこの靴屋の前あたりだ」
ブラッドリーの指さした先にはエディットの前に2人の青年が行く手を阻むように立っていた。
エディットの顔には困惑とも、恐怖ともとれる表情が浮かんでいる。
「あの表情……どう見ても知り合い同士には見えないな」
ブラッドリーは一目瞭然な言葉を口にした。
「当然だよ!早く助けに行かないと!」
「そうだな!」
急いでエディットに駆け寄ろうとして‥‥。
「あ」
あることに気付いて足を止めた。
すると、はずみですぐ後ろを走っていたブラッドリーが僕の背中にぶつかって来た。
「い、いっでーっ!お、おひっ!おまへ‥‥何突然立ち止まるんだよっ!」
ブラッドリーは鼻を押さえながら文句を言ってきた。どうやら彼は顔面から僕の背中にぶつかり、したたかに鼻を打ち付けたようだ。
余程痛かったのだろう。その目には涙が浮かんでいる。
「ご、ごめん……ちょっと大事なことを思い出して…」
ブラッドリーの方を振り向き、慌てて彼に謝罪する。
「何だよ?大事なことって。それより早く助けに行った方がいいんじゃないのか?」
「うん……そうなんだけど……」
僕たちは再びエディットに視線を移した。
相変わらずエディットは青年2人に何か話しかけられ、すっかり怯えきっている。
うん、間違いない。
これは‥‥あの漫画に出て来たシーンと同じだ。
ヒロインのエディットは1人で町に買い物に訪れた時に見知らぬ2人の青年に声を掛けられ、一緒に遊びに行こうと強引な誘いを受ける。
青年達の強引な誘いに恐怖で震えているエディットを助けに現れるのが変装してお忍びで町に来ていたヒーローの王子だった。
彼は青年たちの前に立ち、『僕の婚約者に何か用かい?』と言って彼らを追い払ってエディットを助けるんだっけ。
これが2人の初めての出会いになるのだけど、この時はエディットがヒーローに感謝を述べるだけで大きな進展は無かったんだよな……。
「おい、あのまま放っておいていいのかよ?いくら気に食わないからと言っても仮にもエディットはお前の婚約者なんだろう?涙目になってるぞ?!」
ブラッドリーはやきもきしたように僕に訴えてくる。
「うん……分かってるんだけど‥‥」
でも、本当に僕が助けに入ってもいいのだろうか?僕が介入することで、今後の話の展開に支障をきたしたりしないだろうか?
多分、そろそろ彼が現れるはずなのに…。
その時——。
何と、嫌がるエディットの腕を1人の青年が掴んだ。
「おい!エディットが腕を掴まれたぞ!」
「分かってる!」
もうこれ以上見過ごすなんて出来ない。
ブラッドリーの声と同時に僕はエディットの元へ走った。この際、ストーリーの展開なんてどうでも良かった。
エディットを早く助けなければ!
婚約者とかは関係なしに、困っている女性を助けるのは当然だ。
「エディットッ!」
彼女の名前を大声で呼びながら、駆け寄った。
「あ…アドルフ様っ!」
一瞬エディットの目が驚きで見開かれ……次の瞬間涙目になって僕の名を叫んだ。
「え?な、何だ?」
「誰だ?お前は」
突然現れた僕に驚いた様子を見せる青年たち。
「彼女は僕の大切な婚約者なんだ。その手を離してもらおうか?」
「うっ…わ、分かった…よ…」
声を掛けながらエディットの腕を掴んでいた青年の手首を強く握りしめると、余程痛かったのだろう。
青年は痛みで顔をしかめながらエディットの腕を離した。
その一瞬のスキをつき、エディットを自分の背後に隠すと文句を言いたげな青年たちの前に立ちはだかり…ジロリと睨みつけてやった。
悪役令息のアドルフはとても背が高く、中々目つきの鋭い男だ。
自分たちよりも背が高く、目つきの鋭い男に睨まれるのは中々堪えるものがあるのだろう。
「わ、悪かったよ…まさか連れがいるとは思わなかったからさ…」
「あ、ああ。そ、そうなんだ。い、行こうぜ」
そのまま逃げるように走り去って行く2人。
全く……何て奴等だ。
「エディット、大丈夫だったかい……え?」
背後にいるエディットに声を掛けて振り返ろうとした時……突然エディットが僕の服を掴んで縋り付いてきた。
「こ、こわか‥‥った‥‥」
縋り付くエディットの身体が小刻みに震えている。
「エディット…」
なんて可愛そうなことをしてしまったのだろう。こんなに震えているなら、もっと早くに助けに来れば良かった。
酷い罪悪感にかられてしまう。
「ごめん、エディット。助けに来るのが遅くなって…‥」
静かな声で語りかけると、エディットは顔を上げた。
「アドルフ様‥‥」
エディットは目に涙を溜めて僕を見つめている。
僕はそっとエディットの頭を撫で…もう一度「ごめん」と謝った――。
エディット…どこにいるんだ…?!
「おい、アドルフ。エディットを見つけたぞ」
するとブラッドリーが先に彼女を見つけて声を掛けて来た。
「え?どこにっ?!」
「ほら、あそこの靴屋の前あたりだ」
ブラッドリーの指さした先にはエディットの前に2人の青年が行く手を阻むように立っていた。
エディットの顔には困惑とも、恐怖ともとれる表情が浮かんでいる。
「あの表情……どう見ても知り合い同士には見えないな」
ブラッドリーは一目瞭然な言葉を口にした。
「当然だよ!早く助けに行かないと!」
「そうだな!」
急いでエディットに駆け寄ろうとして‥‥。
「あ」
あることに気付いて足を止めた。
すると、はずみですぐ後ろを走っていたブラッドリーが僕の背中にぶつかって来た。
「い、いっでーっ!お、おひっ!おまへ‥‥何突然立ち止まるんだよっ!」
ブラッドリーは鼻を押さえながら文句を言ってきた。どうやら彼は顔面から僕の背中にぶつかり、したたかに鼻を打ち付けたようだ。
余程痛かったのだろう。その目には涙が浮かんでいる。
「ご、ごめん……ちょっと大事なことを思い出して…」
ブラッドリーの方を振り向き、慌てて彼に謝罪する。
「何だよ?大事なことって。それより早く助けに行った方がいいんじゃないのか?」
「うん……そうなんだけど……」
僕たちは再びエディットに視線を移した。
相変わらずエディットは青年2人に何か話しかけられ、すっかり怯えきっている。
うん、間違いない。
これは‥‥あの漫画に出て来たシーンと同じだ。
ヒロインのエディットは1人で町に買い物に訪れた時に見知らぬ2人の青年に声を掛けられ、一緒に遊びに行こうと強引な誘いを受ける。
青年達の強引な誘いに恐怖で震えているエディットを助けに現れるのが変装してお忍びで町に来ていたヒーローの王子だった。
彼は青年たちの前に立ち、『僕の婚約者に何か用かい?』と言って彼らを追い払ってエディットを助けるんだっけ。
これが2人の初めての出会いになるのだけど、この時はエディットがヒーローに感謝を述べるだけで大きな進展は無かったんだよな……。
「おい、あのまま放っておいていいのかよ?いくら気に食わないからと言っても仮にもエディットはお前の婚約者なんだろう?涙目になってるぞ?!」
ブラッドリーはやきもきしたように僕に訴えてくる。
「うん……分かってるんだけど‥‥」
でも、本当に僕が助けに入ってもいいのだろうか?僕が介入することで、今後の話の展開に支障をきたしたりしないだろうか?
多分、そろそろ彼が現れるはずなのに…。
その時——。
何と、嫌がるエディットの腕を1人の青年が掴んだ。
「おい!エディットが腕を掴まれたぞ!」
「分かってる!」
もうこれ以上見過ごすなんて出来ない。
ブラッドリーの声と同時に僕はエディットの元へ走った。この際、ストーリーの展開なんてどうでも良かった。
エディットを早く助けなければ!
婚約者とかは関係なしに、困っている女性を助けるのは当然だ。
「エディットッ!」
彼女の名前を大声で呼びながら、駆け寄った。
「あ…アドルフ様っ!」
一瞬エディットの目が驚きで見開かれ……次の瞬間涙目になって僕の名を叫んだ。
「え?な、何だ?」
「誰だ?お前は」
突然現れた僕に驚いた様子を見せる青年たち。
「彼女は僕の大切な婚約者なんだ。その手を離してもらおうか?」
「うっ…わ、分かった…よ…」
声を掛けながらエディットの腕を掴んでいた青年の手首を強く握りしめると、余程痛かったのだろう。
青年は痛みで顔をしかめながらエディットの腕を離した。
その一瞬のスキをつき、エディットを自分の背後に隠すと文句を言いたげな青年たちの前に立ちはだかり…ジロリと睨みつけてやった。
悪役令息のアドルフはとても背が高く、中々目つきの鋭い男だ。
自分たちよりも背が高く、目つきの鋭い男に睨まれるのは中々堪えるものがあるのだろう。
「わ、悪かったよ…まさか連れがいるとは思わなかったからさ…」
「あ、ああ。そ、そうなんだ。い、行こうぜ」
そのまま逃げるように走り去って行く2人。
全く……何て奴等だ。
「エディット、大丈夫だったかい……え?」
背後にいるエディットに声を掛けて振り返ろうとした時……突然エディットが僕の服を掴んで縋り付いてきた。
「こ、こわか‥‥った‥‥」
縋り付くエディットの身体が小刻みに震えている。
「エディット…」
なんて可愛そうなことをしてしまったのだろう。こんなに震えているなら、もっと早くに助けに来れば良かった。
酷い罪悪感にかられてしまう。
「ごめん、エディット。助けに来るのが遅くなって…‥」
静かな声で語りかけると、エディットは顔を上げた。
「アドルフ様‥‥」
エディットは目に涙を溜めて僕を見つめている。
僕はそっとエディットの頭を撫で…もう一度「ごめん」と謝った――。
31
あなたにおすすめの小説
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。
愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。
ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。
ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。
二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。
時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し……
全ては、愛する人と幸せになるために。
他サイトと重複投稿しています。
全面改稿して投稿中です。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」
ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。
竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。
そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。
それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。
その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた!
『ママ! 早く僕を産んでよ!』
「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」
お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない!
それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――!
これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。
設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる