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第118話 6年前の記憶 1
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その日帰宅して帰ってくると、父は既に仕事から帰宅していた。
馬に蹴られて脳震盪を起こしたことは既に学院から連絡が入っていたようで、両親からは夕食の最中もずっと質問の嵐だった。
一体何故、また馬に蹴られてしまったのか理由を問い詰められたけれども決して理由を明かさなかった。
ブラッドリーと話をするまでは迂闊なことは口に出来ないと思ったからだ――。
****
「ふ~……今日は散々な目に遭ったな……」
両親から質問攻めの夕食後、ようやく解放されたので入浴する為に自室に備え付けてあるバスルームの扉を開けた。
バスルームの壁には大きな鏡が掛けてあるけれども、今まで一度だって鏡を気にしたことは無かった。
「本当に背中に傷が残っているのかな……?」
上半身の服を脱ぐと、早速鏡に背中を向けた。
首を無理に捻って背中を確認すると、丁度背中の真ん中付近に大きな傷跡が残っている。
「うわ……この傷だったのか……。今まで全然気づかなかったよ」
それにしてもよく見れば結構深い傷跡になって残っている。
これは……かなり痛かったに違いない。
その時、エディットの言葉が蘇って来た。
『小さかった頃…私のせいで大怪我をした方に手当をしたことがあったのですけど……慣れていなくて、包帯も満足に巻けなかったことがあったんです』
「あれは……ブラッドリーのことじゃない。きっと僕のことだったんだ……」
鏡の前で僕はポツリと呟いた――。
****
今日は学院で馬に蹴られて脳震盪を起こしてしまったので、早めにベッドに入ることにした。
明日、ブラッドリーと会ったら何から話をしよう……。
そんなことを考えながら僕は眠りについた。
****
その日の夜、僕は再び夢を見た。
それは6年前、初等部の卒業記念パーティの頃の夢だった――。
男子生徒は女子生徒よりも準備が早く終わる為、先にパーティー会場へと入っていた。
女子生徒たちがやって来るのを皆で待っていると、隣に立っていたブラッドリーが話しかけて来た。
「アドルフ、俺たちもいよいよ来月から中等部に入学することになるんだな」
「うん、そうだね。中等部からは成績順にクラス分けが行われるからプレッシャーだよ」
するとブラッドリーが唇を尖らせた。
「何言ってるんだよ、お前やエディットは頭がいいから同じクラスになれるだろう~羨ましいぜ。俺なんかいくら勉強しても頭に全然入ってこないからな~。でもお前達と一緒のクラスになれるよう頑張るよ」
いつも勉強に後ろ向きなブラッドリーにしては珍しいことだった。
「へ~ブラッドリー。偉いね。よし、それじゃ僕も勉強頑張らないと。エディットと3人で同じクラスになれるように頑張ろう」
僕は知っていた。
ブラッドリーがずっとエディットに恋していたことを。僕も彼女のことは好きだけども、ブラッドリーは大切な親友だからずっと何処か遠慮していた。
「なぁ、親友のお前にだから話すんだけど……俺の話、聞いてくれるか?」
突然ブラッドリーが小声で耳打ちしてきた。
「いいよ、どんな話?」
「絶対誰にも言わないって約束するか?」
妙に念押ししてくるブラッドリー。
「分かった、誰にも言わないよ。それでどんな話?」
「うん……。俺、今日の卒業パーティーで……エディットに告白しようと思っているんだ。中等部に上がったら……彼女として付き合って貰いたいって。お前もエディットのこと好きだろう?だから先に伝えて置きたくて……」
申し訳なさそうにブラッドリーは僕を見ている。
「え……?」
その言葉に胸がズキリと痛んだけれども、あらかじめ覚悟は出来ていた。
「僕はエディットのことは友達として好きなんだよ。だから僕に遠慮しないで告白するといいよ。応援してるから」
僕は笑顔でブラッドリーに頷いた。
それが後程、どんな結果になるのか考えもせずに――。
馬に蹴られて脳震盪を起こしたことは既に学院から連絡が入っていたようで、両親からは夕食の最中もずっと質問の嵐だった。
一体何故、また馬に蹴られてしまったのか理由を問い詰められたけれども決して理由を明かさなかった。
ブラッドリーと話をするまでは迂闊なことは口に出来ないと思ったからだ――。
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「ふ~……今日は散々な目に遭ったな……」
両親から質問攻めの夕食後、ようやく解放されたので入浴する為に自室に備え付けてあるバスルームの扉を開けた。
バスルームの壁には大きな鏡が掛けてあるけれども、今まで一度だって鏡を気にしたことは無かった。
「本当に背中に傷が残っているのかな……?」
上半身の服を脱ぐと、早速鏡に背中を向けた。
首を無理に捻って背中を確認すると、丁度背中の真ん中付近に大きな傷跡が残っている。
「うわ……この傷だったのか……。今まで全然気づかなかったよ」
それにしてもよく見れば結構深い傷跡になって残っている。
これは……かなり痛かったに違いない。
その時、エディットの言葉が蘇って来た。
『小さかった頃…私のせいで大怪我をした方に手当をしたことがあったのですけど……慣れていなくて、包帯も満足に巻けなかったことがあったんです』
「あれは……ブラッドリーのことじゃない。きっと僕のことだったんだ……」
鏡の前で僕はポツリと呟いた――。
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今日は学院で馬に蹴られて脳震盪を起こしてしまったので、早めにベッドに入ることにした。
明日、ブラッドリーと会ったら何から話をしよう……。
そんなことを考えながら僕は眠りについた。
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その日の夜、僕は再び夢を見た。
それは6年前、初等部の卒業記念パーティの頃の夢だった――。
男子生徒は女子生徒よりも準備が早く終わる為、先にパーティー会場へと入っていた。
女子生徒たちがやって来るのを皆で待っていると、隣に立っていたブラッドリーが話しかけて来た。
「アドルフ、俺たちもいよいよ来月から中等部に入学することになるんだな」
「うん、そうだね。中等部からは成績順にクラス分けが行われるからプレッシャーだよ」
するとブラッドリーが唇を尖らせた。
「何言ってるんだよ、お前やエディットは頭がいいから同じクラスになれるだろう~羨ましいぜ。俺なんかいくら勉強しても頭に全然入ってこないからな~。でもお前達と一緒のクラスになれるよう頑張るよ」
いつも勉強に後ろ向きなブラッドリーにしては珍しいことだった。
「へ~ブラッドリー。偉いね。よし、それじゃ僕も勉強頑張らないと。エディットと3人で同じクラスになれるように頑張ろう」
僕は知っていた。
ブラッドリーがずっとエディットに恋していたことを。僕も彼女のことは好きだけども、ブラッドリーは大切な親友だからずっと何処か遠慮していた。
「なぁ、親友のお前にだから話すんだけど……俺の話、聞いてくれるか?」
突然ブラッドリーが小声で耳打ちしてきた。
「いいよ、どんな話?」
「絶対誰にも言わないって約束するか?」
妙に念押ししてくるブラッドリー。
「分かった、誰にも言わないよ。それでどんな話?」
「うん……。俺、今日の卒業パーティーで……エディットに告白しようと思っているんだ。中等部に上がったら……彼女として付き合って貰いたいって。お前もエディットのこと好きだろう?だから先に伝えて置きたくて……」
申し訳なさそうにブラッドリーは僕を見ている。
「え……?」
その言葉に胸がズキリと痛んだけれども、あらかじめ覚悟は出来ていた。
「僕はエディットのことは友達として好きなんだよ。だから僕に遠慮しないで告白するといいよ。応援してるから」
僕は笑顔でブラッドリーに頷いた。
それが後程、どんな結果になるのか考えもせずに――。
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