婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
119 / 221

第119話 6年前の記憶 2

しおりを挟む
「え?ほ、本当に……俺とエディットの仲を応援してくれているのか?」

ブラッドリーが驚いた様子で尋ねて来た。

「当然じゃないか。エディットとブラッドリーはお似合いだと思うよ。現にエディットは僕と話すときはどこか、固い感じがするけどブラッドリーの前では自然な感じにみえるしね」

そう、それが僕の感じている寂しさだった。
エディットはどこか僕に遠慮しているように感じる。それはひょっとすると自分のせいで、僕の背中に一生消えない傷跡を作ってしまった負い目からなのだろうと僕は考えていた。
だからブラッドリーの前ではエディットは自然に振舞えるのかもしれない。
エディットもブラッドリーも僕の大切な親友で幼馴染。
そんな2人を応援するのは当然だと、この時の僕は考えていた。

「あ、おい!見ろよ!女子生徒たちがやってきたぞ!」

ブラッドリーパーティー会場の入り口に視線を向けて僕を肘で小突いてきた。

「うん、そうだね。うわぁ……やっぱり女の子はドレスが華やかで会場が明るく見えるね」

色とりどりなカラフルなドレスに大人びた化粧をした彼女たちはまるで普段と違っていた。
いつも隣で机を並べて勉強していた姿とまるで別人だ。

「皆、すごく綺麗になったね~」

遠巻きに見ながらブラッドリーに声を掛ける。

「ああ、そうだな。だけど他の女子なんかどうだっていいさ。俺はエディット一筋なんだから」

ジンジャーエールをグイッと飲み干しながらブラッドリーはキョロキョロ辺りを見渡している。

「ひょっとしてエディットを探しているの?」

「当然だろう?何と言っても最初のダンスパートナーになって貰うんだから」

「ダンスパートナーか……」

卒業パーティーで最初にダンスを踊った相手とはカップルになれる……なんて言い伝え?があるけれどもブラッドリーはそれを狙っているのかもしれない。

「だったら探してきたらどうだい?エディットは男子から人気があるから、他の人に最初のパートナーに申し込まれてしまうかもしれないよ?」

すると僕の言葉にブラッドリーが青ざめた。

「な、何だって?!それは大変だ!悪い、俺……エディットを探してくるよ!」

ブラッドリーは空になったグラスを握りしめたまま、エディットを探しに行ってしまった。

「……頑張れ。ブラッドリー」

彼の背中に応援の言葉を掛けると、立食テーブルへ向かった。

僕は誰ともダンスを踊る気はなかった。
何故なら僕もエディットのことが好きだからだ。

他の女の子と踊るくらいなら、誰とも踊らないで料理を食べてた方がずっといい。


****

「すごい……どれもすごく美味しそうだな……」

テーブルの上には様々な料理が乗っていた。フライドチキンにフライドポテト、グラタンにパスタ、カラフルなフルーツ盛り合わせにスイーツ迄。
中には夢で見たことのある、海苔巻きやたこ焼きまで乗っているのを見た時には流石に驚いたけれども。

「どれから食べようかな……」

お皿を持って迷っていると、突然背後から声を掛けられた。

「アドルフ様」

「え?」

振り向くと、そこにはドレスアップした10人前後のクラスメイトの女子たちが並んでいた。

「うわぁ~。誰かと思ったよ。皆すごく綺麗になったね。見違えたよ」

笑顔で正直に感想を述べると、女生徒たちが僕そっちのけで会話を始めた。

「見た?やっぱりアドルフ様は違うわね?」
「ええ。他の男子とは大違い」
「大人びて穏やかで素敵よね」
「本当、他の男子は皆子供で嫌だわ」

「あ、あの~……皆……?」

一体僕はどうしたらいいのだろう?

その時――。

「アドルフ様、こちらにいらしたのですか?」

背後から声を掛けられ、振り向いた。

するとそこには水色のドレスを着たいつも以上に可愛らしい姿のエディットが立っていた――。




しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...