69 / 152
第5章 9 レイフの反抗
しおりを挟む
「これはこれはオスカー王子・・・よくここが分かりましたね?」
レイフは私を抱きしめたまま、オスカーから距離を取る。
「ああ、そうだ。お前たち2人が教室を出ていくのを偶然目にしたからな・・必死で後を追いかけたんだ。途中で見失ってしまったが、アイリスの悲鳴が聞こえてきたから、ここにいる事が分かったんだ。」
そしてオスカーはレイフに手を伸ばすと言った。
「レイフッ!アイリスは俺の婚約者だっ!その手を放せっ!」
「婚約者・・・笑わせないで頂きたい。もともとはウィンザード家が勝手にイリヤ家に申し込んできた話ではありませんか?第一2人は仮婚約の関係です。アイリスが拒否すればいつでも婚約解消出来るんですよね?」
私は信じられなかった。70年前はレイフはオスカーに忠誠を誓い、私を平気でオスカーに引き渡したのに、今はそのオスカーに対して反抗しているのだから。
それよりも・・レイフは自分がどれほどの強さで私を抱き締めているのか気付いていないのだろうか。骨がきしむほどの強さで目がクラクラしてくる。
「レ、レイフ・・・く・苦しいわ・・離して・・・。」
するとレイフは一瞬ハッとなり私を抱き締める腕を緩めた。い、今のうちに・・・!
レイフの腕を振りほどくと、オスカーめがけて駆け寄った。私はレイフが怖かったからだ。一瞬流れ込んできたレイフの黒い思考・・・。まさかあんな恐ろしい事を考えているとは思わなかった。
「し、しまったっ!行くなっ!アイリスッ!」
レイフの腕が私に伸びる。
「オスカー様っ!」
私は必死でオスカーに手を伸ばすと、オスカーはぐいっと私の左腕を掴み、自分の胸に抱き寄せると、後を追ってきたレイフの胸を蹴り上げた。
ドスッ!!
鈍い音とともに、声も無く地面に崩れ落ちるレイフ。
「ゴホッ!ゴホッ!」
地面に崩れ落ちたレイフは激しく咳込んでいる。
「レイフ・・・。」
苦し気にうずくまり、咳込むレイフが心配になり思わず声を掛けた。
するとオスカーは言う。
「心配するな。あいつは王宮騎士団に籍をおく男だ。身体は十分鍛えているからこれぐらいはどうって事は無い。とりあえず、あいつはあのままここに捨て置けばいい。」
「で、ですが・・・。」
オスカーはいまだに私を抱き寄せたまま離さない。
「ア・・アイリス・・。」
一方のレイフは苦しげな様子で私を見上げている。
「お願です、オスカー様。レイフをこのままにしておくわけには・・。」
しかし、オスカーは有無を言わさず、私の右腕を掴むと言った。
「アイリス!あの男はほっておいてもしばらくすれば回復する。それよりも行くぞ!昼休みが終わってしまう!」
そして私の頭の中にはオスカーの言葉とは別の思考が流れ込できた。
< くそっ!あの男・・・俺のアイリスに狼藉を働こうとするなんて・・!アイリスの目の前でなければ切り殺してやるところだったのに! >
私はオスカーの思考を読んで、ぞっとした。頭の中で考えている事は嘘など付けないはず。と言う事は・・・まさか本当にオスカーは私がいなければレイフを殺すつもりだったのだろうか?
この時、私は悟った。エルトリアの呪いに侵されているオスカーには私が対応に注意しなければ・・・最悪犠牲者が出てしまうかもしれないのだと言う事を。
だからオスカーに手を引かれながら私は言った。
「オスカー様・・・申し訳ございませんでした。」
「ああ、そうだ。アイリス・・・あの幼馴染の男は危険だ。今後はあの男とは2人きりでは会うな?分かったか?」
「はい・・・。分かりました。」
ごめんなさい・・レイフ。
私は心の中でレイフに謝罪した―。
レイフは私を抱きしめたまま、オスカーから距離を取る。
「ああ、そうだ。お前たち2人が教室を出ていくのを偶然目にしたからな・・必死で後を追いかけたんだ。途中で見失ってしまったが、アイリスの悲鳴が聞こえてきたから、ここにいる事が分かったんだ。」
そしてオスカーはレイフに手を伸ばすと言った。
「レイフッ!アイリスは俺の婚約者だっ!その手を放せっ!」
「婚約者・・・笑わせないで頂きたい。もともとはウィンザード家が勝手にイリヤ家に申し込んできた話ではありませんか?第一2人は仮婚約の関係です。アイリスが拒否すればいつでも婚約解消出来るんですよね?」
私は信じられなかった。70年前はレイフはオスカーに忠誠を誓い、私を平気でオスカーに引き渡したのに、今はそのオスカーに対して反抗しているのだから。
それよりも・・レイフは自分がどれほどの強さで私を抱き締めているのか気付いていないのだろうか。骨がきしむほどの強さで目がクラクラしてくる。
「レ、レイフ・・・く・苦しいわ・・離して・・・。」
するとレイフは一瞬ハッとなり私を抱き締める腕を緩めた。い、今のうちに・・・!
レイフの腕を振りほどくと、オスカーめがけて駆け寄った。私はレイフが怖かったからだ。一瞬流れ込んできたレイフの黒い思考・・・。まさかあんな恐ろしい事を考えているとは思わなかった。
「し、しまったっ!行くなっ!アイリスッ!」
レイフの腕が私に伸びる。
「オスカー様っ!」
私は必死でオスカーに手を伸ばすと、オスカーはぐいっと私の左腕を掴み、自分の胸に抱き寄せると、後を追ってきたレイフの胸を蹴り上げた。
ドスッ!!
鈍い音とともに、声も無く地面に崩れ落ちるレイフ。
「ゴホッ!ゴホッ!」
地面に崩れ落ちたレイフは激しく咳込んでいる。
「レイフ・・・。」
苦し気にうずくまり、咳込むレイフが心配になり思わず声を掛けた。
するとオスカーは言う。
「心配するな。あいつは王宮騎士団に籍をおく男だ。身体は十分鍛えているからこれぐらいはどうって事は無い。とりあえず、あいつはあのままここに捨て置けばいい。」
「で、ですが・・・。」
オスカーはいまだに私を抱き寄せたまま離さない。
「ア・・アイリス・・。」
一方のレイフは苦しげな様子で私を見上げている。
「お願です、オスカー様。レイフをこのままにしておくわけには・・。」
しかし、オスカーは有無を言わさず、私の右腕を掴むと言った。
「アイリス!あの男はほっておいてもしばらくすれば回復する。それよりも行くぞ!昼休みが終わってしまう!」
そして私の頭の中にはオスカーの言葉とは別の思考が流れ込できた。
< くそっ!あの男・・・俺のアイリスに狼藉を働こうとするなんて・・!アイリスの目の前でなければ切り殺してやるところだったのに! >
私はオスカーの思考を読んで、ぞっとした。頭の中で考えている事は嘘など付けないはず。と言う事は・・・まさか本当にオスカーは私がいなければレイフを殺すつもりだったのだろうか?
この時、私は悟った。エルトリアの呪いに侵されているオスカーには私が対応に注意しなければ・・・最悪犠牲者が出てしまうかもしれないのだと言う事を。
だからオスカーに手を引かれながら私は言った。
「オスカー様・・・申し訳ございませんでした。」
「ああ、そうだ。アイリス・・・あの幼馴染の男は危険だ。今後はあの男とは2人きりでは会うな?分かったか?」
「はい・・・。分かりました。」
ごめんなさい・・レイフ。
私は心の中でレイフに謝罪した―。
31
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完】隣国に売られるように渡った王女
まるねこ
恋愛
幼いころから王妃の命令で勉強ばかりしていたリヴィア。乳母に支えられながら成長し、ある日、父である国王陛下から呼び出しがあった。
「リヴィア、お前は長年王女として過ごしているが未だ婚約者がいなかったな。良い嫁ぎ先を選んでおいた」と。
リヴィアの不遇はいつまで続くのか。
Copyright©︎2024-まるねこ
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜
タイトルちょっと変更しました。
政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。
それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。
なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。
そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。
そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。
このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう!
そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。
絶望した私は、初めて夫に反抗した。
私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……?
そして新たに私の前に現れた5人の男性。
宮廷に出入りする化粧師。
新進気鋭の若手魔法絵師。
王弟の子息の魔塔の賢者。
工房長の孫の絵の具職人。
引退した元第一騎士団長。
何故か彼らに口説かれだした私。
このまま自立?再構築?
どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい!
コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる