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第5章 8 アイリスとレイフ
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中庭には、誰もいなかった。
「よし、ここなら誰にも邪魔されずに話ができるな?」
レイフは私に背を向け、辺りを見渡しながら満足そうに言うが、こちらとしては全く生きた心地がしない。何せオスカーには内緒でここまで来てしまったのだ。おそらく今頃は私が教室から忽然と姿を消したことに対して激怒しているかもしれない。
「ねえ、レイフ。話は手短に終わらせて。早く戻らないとオスカー様に怒られてしまうから。」
レイフに懇願するように言う。
「そう、それだ。」
レイフは私の方を振り返ると言う。
「それ・・って何?」
「アイリス・・・そんなにオスカー王子に対してビクビクしているなら、さっさと婚約を破棄してもらうんだ。イリヤ家からの申し出があればこの婚約は無しに出来るんだ。もともとは強引にウィンザード家から提案された婚約なんだから。」
「レイフ・・・それは・・・。」
思わず口ごもるとレイフが声を荒げた。
「何故だっ?!アイリス・・お前、ひょっとしてオスカー王子の事が好きなのか?!」
「ちょっと待って?何故そこまで話が飛躍するの?好き嫌いで決められるような・・・単純な話では無いのよ?」
そう・・・ここで今婚約を取り消したとしても逃げ場がない。だって私を本当に狙っているのは国王陛下なのだから。今回あの王宮から逃げられたのだってオスカーの尽力があってこそだ。今のところオスカー以外・・あの国王に対抗する力を持つ者はいないだろう。あの国王陛下から私を守ってもらうには・・・今、オスカーの傍を離れるわけにはいかない。最もオスカーを全面的に信用してはいけない事は百も承知だ。
レイフはふいに黙り込んでしまった私に業を煮やしたのか、突然両肩を掴み、私の顔を覗き込むように語り掛けてきた。
「アイリス、よく聞け。俺はまだ数日しかオスカー王子の様子を見ていないから、はっきりとは言えないが・・オスカー王子はこの辺り一帯の界隈では何と言われているか知っているのか?クレイジープリンスなんて呼ばれているんだぞ?何でか分かるか?オスカー王子は・・・。」
「時折、人が変わったように変貌するから・・・でしょう?」
私の言葉にレイフは息を飲んだ。
「アイリス・・お前、その事知っていたのか・・?」
「え、ええ・・・。一応私はオスカー様の婚約者だから・・。噂の一つや二つくらい耳にしてるわ。」
適当な言葉を並べて私はごまかした。まさか王宮に囚われ、エルトリアの呪いに侵されたもう1人のオスカーに命を狙われた・・・等と話すわけにはいかない。第一これ程重要なウィンザード家の秘密を漏らすわけにはいかないからだ。
「だったら!」
突然レイフが大声を上げた。
「だったら・・尚更、婚約を取り消すべきだろう?お前・・・もし発狂したオスカー王子に・・命を狙われたりした場合・・・どうするんだ?」
「レイフ・・。」
レイフの目は真剣みを帯びている。
「大丈夫よ・・・ 多分・・・。いくら何でも命を狙われるまでは・・・。」
そんな確証はどこにも無かったが・・・自分の身の保全を考えれば、オスカーの婚約は破棄すべきではないと思ったのだ。
「ア、アイリス・・・!お前は・・・人の気も知らずに・・・っ!」
突然レイフは私の右腕を掴んで引き寄せると強く抱きしめてきた。腕を掴まれた時、レイフの思考が流れ込んできた。
< そうだ・・・!俺が強引にでも・・アイリスを奪ってしまえば・・もうアイリスはオスカー王子との婚約を白紙撤回せざるを得ない・・・! >
私はレイフの考えを知り、恐ろしくなった。
「アイリスッ!俺はずっと前から・・変わらずお前の事を・・・っ!」
レイフは私の顔を両手で挟み、唇を近づけてくる。
「や、やめてっ!レイフッ!」
必死で抵抗しようとしたその時・・・。
「おいっ!貴様・・・アイリスに何をするっ!」
オスカーが中庭へ飛びこんできた―。
「よし、ここなら誰にも邪魔されずに話ができるな?」
レイフは私に背を向け、辺りを見渡しながら満足そうに言うが、こちらとしては全く生きた心地がしない。何せオスカーには内緒でここまで来てしまったのだ。おそらく今頃は私が教室から忽然と姿を消したことに対して激怒しているかもしれない。
「ねえ、レイフ。話は手短に終わらせて。早く戻らないとオスカー様に怒られてしまうから。」
レイフに懇願するように言う。
「そう、それだ。」
レイフは私の方を振り返ると言う。
「それ・・って何?」
「アイリス・・・そんなにオスカー王子に対してビクビクしているなら、さっさと婚約を破棄してもらうんだ。イリヤ家からの申し出があればこの婚約は無しに出来るんだ。もともとは強引にウィンザード家から提案された婚約なんだから。」
「レイフ・・・それは・・・。」
思わず口ごもるとレイフが声を荒げた。
「何故だっ?!アイリス・・お前、ひょっとしてオスカー王子の事が好きなのか?!」
「ちょっと待って?何故そこまで話が飛躍するの?好き嫌いで決められるような・・・単純な話では無いのよ?」
そう・・・ここで今婚約を取り消したとしても逃げ場がない。だって私を本当に狙っているのは国王陛下なのだから。今回あの王宮から逃げられたのだってオスカーの尽力があってこそだ。今のところオスカー以外・・あの国王に対抗する力を持つ者はいないだろう。あの国王陛下から私を守ってもらうには・・・今、オスカーの傍を離れるわけにはいかない。最もオスカーを全面的に信用してはいけない事は百も承知だ。
レイフはふいに黙り込んでしまった私に業を煮やしたのか、突然両肩を掴み、私の顔を覗き込むように語り掛けてきた。
「アイリス、よく聞け。俺はまだ数日しかオスカー王子の様子を見ていないから、はっきりとは言えないが・・オスカー王子はこの辺り一帯の界隈では何と言われているか知っているのか?クレイジープリンスなんて呼ばれているんだぞ?何でか分かるか?オスカー王子は・・・。」
「時折、人が変わったように変貌するから・・・でしょう?」
私の言葉にレイフは息を飲んだ。
「アイリス・・お前、その事知っていたのか・・?」
「え、ええ・・・。一応私はオスカー様の婚約者だから・・。噂の一つや二つくらい耳にしてるわ。」
適当な言葉を並べて私はごまかした。まさか王宮に囚われ、エルトリアの呪いに侵されたもう1人のオスカーに命を狙われた・・・等と話すわけにはいかない。第一これ程重要なウィンザード家の秘密を漏らすわけにはいかないからだ。
「だったら!」
突然レイフが大声を上げた。
「だったら・・尚更、婚約を取り消すべきだろう?お前・・・もし発狂したオスカー王子に・・命を狙われたりした場合・・・どうするんだ?」
「レイフ・・。」
レイフの目は真剣みを帯びている。
「大丈夫よ・・・ 多分・・・。いくら何でも命を狙われるまでは・・・。」
そんな確証はどこにも無かったが・・・自分の身の保全を考えれば、オスカーの婚約は破棄すべきではないと思ったのだ。
「ア、アイリス・・・!お前は・・・人の気も知らずに・・・っ!」
突然レイフは私の右腕を掴んで引き寄せると強く抱きしめてきた。腕を掴まれた時、レイフの思考が流れ込んできた。
< そうだ・・・!俺が強引にでも・・アイリスを奪ってしまえば・・もうアイリスはオスカー王子との婚約を白紙撤回せざるを得ない・・・! >
私はレイフの考えを知り、恐ろしくなった。
「アイリスッ!俺はずっと前から・・変わらずお前の事を・・・っ!」
レイフは私の顔を両手で挟み、唇を近づけてくる。
「や、やめてっ!レイフッ!」
必死で抵抗しようとしたその時・・・。
「おいっ!貴様・・・アイリスに何をするっ!」
オスカーが中庭へ飛びこんできた―。
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