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2章 1 ウィスタリア
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夜明け近くに、私達は無事に『ウィスタリア』地区に程近い川岸に到着した。
「ユリアナ。ここから先は歩いて行こう。このまま川を下ると、別の地区に行くことになってしまう」
船を川辺近くに生えている巨木に縄で固定しながらジェイクが提案した。
「はい、分かりました」
ジェイクの手を借りながら船を降りると、何を思ったのか突然ジェイクが巨木と船を繋いでいた縄を解いてしまった。
そしてそのまま船は川を進んで流れていく。
「ジェイクさん⁉ 一体何故船を手放したのですか⁉」
彼の考えが分からず、つい語気が強くなってしまう。
「もうあの船は必要ないだろう?ユリアナの目的地はここだ。それに、もうあの船を使って『ナース』地区へ戻ることはできない。あの葦船で川を上るのは流石に無理だ。第一船がアレば『ウィスタリア』地区へ余所者がやってきたと知らせるようなものだからな」
「余所者が『ウィスタリア』地区へ行くのはまずいのですか?」
「あの地区はもはや無法地帯だ。十年前の事件で町ごと焼き払われ、人々は住む場所を失って他の地区へと移り住んだ。代わりに、お尋ね者やならず者達が移り住んでいるんだ」
「そうなのですか……」
私はジェイクをじっと見つめた。それにしても何故ジェイクはこんなにも他の地区のことまで詳しく知っているのだろう? それとも……今の私があまりにもこの世の中を知らなすぎなのだろうか?
「どうしたんだ?」
ジェイクが首を傾げて私に声を掛けてきた。
「い、いえ。何でもありません。では行きましょうか?」
「そうだな。ところで知り合いの隠れ家の場所は分かるのかい?」
「はい、分かります。尤も、まだその場所が残っていればですけど」
何しろ私の記憶は十年前のものなのだ。
「とりあえず行ってみれば分かるだろう。それじゃ案内してくれ」
ジェイクがナップザックを背負った。
「はい、行きましょう」
私もナップザックを背負うと、かつてベルンハルト家が所有していた隠れ家へ向かって歩き始めた。
****
「隠れ家は町の中にはありません」
地平線から太陽が登り始めた頃、私とジェイクは森の中を歩いていた。
『ウィスタリア』地区は水と緑溢れる美しい場所だった。市街地を離れると、山々がある。裾野には森が広がり、全てベルンハルト家の所有する土地であった。
そしてその森の奥に隠れ家があるのだ。勿論隠れ家のことを知るのは一族と、側近たちだけであった。
「こんな森の奥に隠れ家が本当にあるのか?」
私の後をついて歩くジェイクが心配そうに声を掛けてくる。
「はい、記憶が正しければあるはずです」
隠れ家に行きつけるように、私は徹底的に道順を父や兄たちから頭に叩き込まれてきた。
十年前だとしても、私にとってはつい最近の過去でしか無い。
よく目を凝らさなければ気づかないような道標をたどり……ついに、私は隠れ家への入り口に到着した――
「ユリアナ。ここから先は歩いて行こう。このまま川を下ると、別の地区に行くことになってしまう」
船を川辺近くに生えている巨木に縄で固定しながらジェイクが提案した。
「はい、分かりました」
ジェイクの手を借りながら船を降りると、何を思ったのか突然ジェイクが巨木と船を繋いでいた縄を解いてしまった。
そしてそのまま船は川を進んで流れていく。
「ジェイクさん⁉ 一体何故船を手放したのですか⁉」
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「余所者が『ウィスタリア』地区へ行くのはまずいのですか?」
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「そうなのですか……」
私はジェイクをじっと見つめた。それにしても何故ジェイクはこんなにも他の地区のことまで詳しく知っているのだろう? それとも……今の私があまりにもこの世の中を知らなすぎなのだろうか?
「どうしたんだ?」
ジェイクが首を傾げて私に声を掛けてきた。
「い、いえ。何でもありません。では行きましょうか?」
「そうだな。ところで知り合いの隠れ家の場所は分かるのかい?」
「はい、分かります。尤も、まだその場所が残っていればですけど」
何しろ私の記憶は十年前のものなのだ。
「とりあえず行ってみれば分かるだろう。それじゃ案内してくれ」
ジェイクがナップザックを背負った。
「はい、行きましょう」
私もナップザックを背負うと、かつてベルンハルト家が所有していた隠れ家へ向かって歩き始めた。
****
「隠れ家は町の中にはありません」
地平線から太陽が登り始めた頃、私とジェイクは森の中を歩いていた。
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そしてその森の奥に隠れ家があるのだ。勿論隠れ家のことを知るのは一族と、側近たちだけであった。
「こんな森の奥に隠れ家が本当にあるのか?」
私の後をついて歩くジェイクが心配そうに声を掛けてくる。
「はい、記憶が正しければあるはずです」
隠れ家に行きつけるように、私は徹底的に道順を父や兄たちから頭に叩き込まれてきた。
十年前だとしても、私にとってはつい最近の過去でしか無い。
よく目を凝らさなければ気づかないような道標をたどり……ついに、私は隠れ家への入り口に到着した――
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