50 / 98
4 過去の夢?
しおりを挟む
血なまぐさい匂いで我に返った。
そこは大広間で、天窓から差し込む満月の光によって青白く照らされている。
『ここは……?』
何故、私はこんなところにいるのだろう? それに頭がぼんやりして記憶が曖昧だった。
『確か……私は自分の部屋で眠っていたはず……』
そして何気なく手元を見たときに……
『ヒッ!!』
思わず悲鳴を上げた。驚いたことに、右手には血に染まった剣が握りしめられていたのだ。
『キャアッ!!』
驚いて剣を落としてしまった。
カラーンッ!
大広間に音が響き渡る。
『な、何……? 一体これは……?』
自分の身に何が起こっているのかさっぱり見当がつかなかった。薄明かりの中、目を凝らしてみると、人が床に倒れているの様子がかろうじて見えた。
私はゴクリと息を呑むと、ゆっくりと倒れている人物に近づき……
ピチャ……
足元に何か生暖かい、液体を踏みつけてしまった。
『え……?』
目を落とすと、それは真っ赤な血溜まりだったのだ。
『キャアアアアアアアッ!!』
私は激しく絶叫し……そして血溜まりの中に倒れているのが、自分の父であることに気づいた。
『え……? お、お父様……? お父様っ!』
そのとき――
『悲鳴が聞こえたぞ!』
『こっちだ!!』
何者かの声と同時にバタバタと足音がこちらへ近づいてくる。
そして、通路の奥から駆けつけてきたのは近衛兵たちだった。
『あ! あなたは……ミレーユ姫様ではありませんか!』
『何故ここにいるのです!? 北の塔に幽閉されていたはずでは!?』
『待て! 何か……様子がおかしい……あ! あれは……陛下!』
『大変だ!!』
近衛兵たちは、父に駆けつけ……首を振った。
『なんてことだ……亡くなられている……』
「まさか……ミレーユ様か!?』
近衛兵たちが一斉に憎悪の目を向ける。
『違う!! 私じゃないわ!!』
『何が違うというのです!!』
『そのように血まみれの姿で……しかも、足元には剣が落ちているではありませんか!!』
1人の近衛兵が私の足元に落ちていた剣を指差す。
『そ、そんな……ほ、本当に何も覚えていないのよ……』
ガタガタ震えながら訴えるも、誰も聞き入れてくれない。
『ミレーユ様、国王陛下殺害容疑で捕らえさせて頂きす』
その言葉と同時に近衛兵達が近づいてくる。
『イヤ……こっちに……来ないで!』
捕まったら……今度こそ逃げられない!
私は右手を差し出した。するとその手に紋章が浮かび、怪しく光り輝く。
『気をつけろ! 炎の魔法だ!』
『しまった……! 拘束具が外れている!』
近衛兵たちのたじろぐ声が聞こえてくる。
『私は……これ以上、戦争に加担するのはイヤよ!』
叫ぶと、右腕から火柱がほとばしる。
『ぎゃあああ!』
『熱い! 火が!』
『こ、この……魔女め!』
炎に包まれる兵士達の悲鳴を聞きながら、私は背を向けるとその場を走り去った――
そこは大広間で、天窓から差し込む満月の光によって青白く照らされている。
『ここは……?』
何故、私はこんなところにいるのだろう? それに頭がぼんやりして記憶が曖昧だった。
『確か……私は自分の部屋で眠っていたはず……』
そして何気なく手元を見たときに……
『ヒッ!!』
思わず悲鳴を上げた。驚いたことに、右手には血に染まった剣が握りしめられていたのだ。
『キャアッ!!』
驚いて剣を落としてしまった。
カラーンッ!
大広間に音が響き渡る。
『な、何……? 一体これは……?』
自分の身に何が起こっているのかさっぱり見当がつかなかった。薄明かりの中、目を凝らしてみると、人が床に倒れているの様子がかろうじて見えた。
私はゴクリと息を呑むと、ゆっくりと倒れている人物に近づき……
ピチャ……
足元に何か生暖かい、液体を踏みつけてしまった。
『え……?』
目を落とすと、それは真っ赤な血溜まりだったのだ。
『キャアアアアアアアッ!!』
私は激しく絶叫し……そして血溜まりの中に倒れているのが、自分の父であることに気づいた。
『え……? お、お父様……? お父様っ!』
そのとき――
『悲鳴が聞こえたぞ!』
『こっちだ!!』
何者かの声と同時にバタバタと足音がこちらへ近づいてくる。
そして、通路の奥から駆けつけてきたのは近衛兵たちだった。
『あ! あなたは……ミレーユ姫様ではありませんか!』
『何故ここにいるのです!? 北の塔に幽閉されていたはずでは!?』
『待て! 何か……様子がおかしい……あ! あれは……陛下!』
『大変だ!!』
近衛兵たちは、父に駆けつけ……首を振った。
『なんてことだ……亡くなられている……』
「まさか……ミレーユ様か!?』
近衛兵たちが一斉に憎悪の目を向ける。
『違う!! 私じゃないわ!!』
『何が違うというのです!!』
『そのように血まみれの姿で……しかも、足元には剣が落ちているではありませんか!!』
1人の近衛兵が私の足元に落ちていた剣を指差す。
『そ、そんな……ほ、本当に何も覚えていないのよ……』
ガタガタ震えながら訴えるも、誰も聞き入れてくれない。
『ミレーユ様、国王陛下殺害容疑で捕らえさせて頂きす』
その言葉と同時に近衛兵達が近づいてくる。
『イヤ……こっちに……来ないで!』
捕まったら……今度こそ逃げられない!
私は右手を差し出した。するとその手に紋章が浮かび、怪しく光り輝く。
『気をつけろ! 炎の魔法だ!』
『しまった……! 拘束具が外れている!』
近衛兵たちのたじろぐ声が聞こえてくる。
『私は……これ以上、戦争に加担するのはイヤよ!』
叫ぶと、右腕から火柱がほとばしる。
『ぎゃあああ!』
『熱い! 火が!』
『こ、この……魔女め!』
炎に包まれる兵士達の悲鳴を聞きながら、私は背を向けるとその場を走り去った――
55
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!
MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!
笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる