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第41話 挙動不審な男
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「おい、メイド」
私の前をキャリーケースを引きずって歩きながらデニムが声を掛けてきた。
「はい、何でしょう?」
「お前の名前、何て言うんだ?」
「え?私の名前ですか?」
デニムが使用人の名前を知りたがるとは珍しい。
「メイです」
メイドのメイから取った適当に付けた名前を名乗る。
「そうか・・メイか。お前は中々変わったメイドだよな?」
「そうでしょうか?」
まあ、元々メイドじゃないしね。
「うん、お前…俺の専属メイドになるか?」
「はい?」
聞き間違いだろうか?それとも何か変な物を食べて、脳内麻痺でも起こしたか?
「何故私を専属メイドにしたいと思ったのですか?」
いつの間にか私とデニムは立ち止まり、向かい合って立っていた
「…」
「…」
デニムが黙って私を見つめているので、私も無言でデニムを見る。すると…。
カァッ!
不意にデニムの顔が真っ赤になり、口元を抑えて私から視線をそらせた。そしてくるりと背中を向けてしまった。はあ?!一体この男は何がしたいのだろう?意味不明だ。
「…分からん」
デニムがポツリと呟く。いやいや、分からないのはむしろ私の方なんですけど?
そしてデニムは再び私の方をチラリと見ると、前を向いて首を傾げる。
「やっぱり分からん」
そして首をひねる。分からないのはむしろ私の方である。
「それより、デニム様。早くお部屋に戻りませんか?もう今日は外出も出来ませんので。お茶とおやつにしましょう」
そして、これを口にして身悶えする様を見せて頂戴!
「あ、ああ。そうだな、お前が俺の為に折角用意してくれたお茶とおやつなのだからな…」
「ええ、そうです。デニム様の為だけのスペシャルドリンク&スペシャルフードですから」
そう『刺激たっぷりジンジャークッキー』と『苦味強すぎドクダミティー』をね!
「そ、そうか…俺の為だけのスペシャルドリンク&スペシャルフードか…」
何故か耳を赤く染めて嬉しそうに言うデニム。なるほど…そんなにこのメニューが気になるのだな?
「よし、では部屋に戻るぞ!」
デニムは再び重そうなキャリーケースをずりずりと引きずりながら、私は軽い足取りでデニムの部屋へと向かった―。
****
部屋に戻ると、やはり中は相変わらず凄まじい状況になっていた。それこそ足の踏み場もないほどの状況だ。
「チッ!使用人たちの誰もが俺の部屋を片付けていないとは全く…」
デニムは自分で部屋をグッチャグチャにしたくせに、部屋が片付けられていないことにイライラしている。全くこの男は…。
「自分で散らかしたのだから、自分で片付けるのが筋なんじゃないの?」
思わず本音が出てしまった。小声で言ったつもりだったのに、ばっちりデニムに聞かれてしまったようで、私の事をすごい勢いで振り返る。あ…また怒鳴るかな?しかしこの男に怒鳴られようが罵られようが、私は少しも動じない。何故ならこれから私はもっともっとデニムに仕返しをしてやるつもりだからだ。
さあ、怒鳴りければ怒鳴りなさい。どんと構えていたのだが、デニムは予想外の行動にでた。
「あ、ああ…確かにそうだな。お前の言う通りだ。自分で散らかしたのだから、自分で片付けるのが筋が通っているな」
え?聞き間違いだろうか?
「あの…デニム様?今、何とおっしゃいましたか?」
「あ?ああ。自分で片付けると言った」
へ?嘘でしょう?しかし、デニムは私の戸惑いをよそに、慣れない手付きで床に落ちてた衣類や下着を拾い始めた。この男…本気で1人で片付ける気なのだろうか?
「デニム様。お一人で片付けられるのですよね?」
「ああ、そうだ。考えてみれば少しは自分の身の回りのことくらい、自分で出来なければな」
言いながら再びチラリと私を横目で見るとすぐに視線をそらせた。全く持って今のデニムは挙動不審だ。だが…。
「デニム様。それではお湯を入れ直してまいります。お持ちするのは1時間後位でよろしいでしょうか?」
「ああ!1時間以内に片付け終わるからな?必ず戻って来いよ!」
今度は私の事をガン見してくる。そんなにこのお茶が楽しみなのだろうか…?
「かしこまりました。では1時間後に戻って参ります」
私は頭を下げるとデニムの部屋を後にすると、首をひねりながら厨房へ向かうのだった―。
私の前をキャリーケースを引きずって歩きながらデニムが声を掛けてきた。
「はい、何でしょう?」
「お前の名前、何て言うんだ?」
「え?私の名前ですか?」
デニムが使用人の名前を知りたがるとは珍しい。
「メイです」
メイドのメイから取った適当に付けた名前を名乗る。
「そうか・・メイか。お前は中々変わったメイドだよな?」
「そうでしょうか?」
まあ、元々メイドじゃないしね。
「うん、お前…俺の専属メイドになるか?」
「はい?」
聞き間違いだろうか?それとも何か変な物を食べて、脳内麻痺でも起こしたか?
「何故私を専属メイドにしたいと思ったのですか?」
いつの間にか私とデニムは立ち止まり、向かい合って立っていた
「…」
「…」
デニムが黙って私を見つめているので、私も無言でデニムを見る。すると…。
カァッ!
不意にデニムの顔が真っ赤になり、口元を抑えて私から視線をそらせた。そしてくるりと背中を向けてしまった。はあ?!一体この男は何がしたいのだろう?意味不明だ。
「…分からん」
デニムがポツリと呟く。いやいや、分からないのはむしろ私の方なんですけど?
そしてデニムは再び私の方をチラリと見ると、前を向いて首を傾げる。
「やっぱり分からん」
そして首をひねる。分からないのはむしろ私の方である。
「それより、デニム様。早くお部屋に戻りませんか?もう今日は外出も出来ませんので。お茶とおやつにしましょう」
そして、これを口にして身悶えする様を見せて頂戴!
「あ、ああ。そうだな、お前が俺の為に折角用意してくれたお茶とおやつなのだからな…」
「ええ、そうです。デニム様の為だけのスペシャルドリンク&スペシャルフードですから」
そう『刺激たっぷりジンジャークッキー』と『苦味強すぎドクダミティー』をね!
「そ、そうか…俺の為だけのスペシャルドリンク&スペシャルフードか…」
何故か耳を赤く染めて嬉しそうに言うデニム。なるほど…そんなにこのメニューが気になるのだな?
「よし、では部屋に戻るぞ!」
デニムは再び重そうなキャリーケースをずりずりと引きずりながら、私は軽い足取りでデニムの部屋へと向かった―。
****
部屋に戻ると、やはり中は相変わらず凄まじい状況になっていた。それこそ足の踏み場もないほどの状況だ。
「チッ!使用人たちの誰もが俺の部屋を片付けていないとは全く…」
デニムは自分で部屋をグッチャグチャにしたくせに、部屋が片付けられていないことにイライラしている。全くこの男は…。
「自分で散らかしたのだから、自分で片付けるのが筋なんじゃないの?」
思わず本音が出てしまった。小声で言ったつもりだったのに、ばっちりデニムに聞かれてしまったようで、私の事をすごい勢いで振り返る。あ…また怒鳴るかな?しかしこの男に怒鳴られようが罵られようが、私は少しも動じない。何故ならこれから私はもっともっとデニムに仕返しをしてやるつもりだからだ。
さあ、怒鳴りければ怒鳴りなさい。どんと構えていたのだが、デニムは予想外の行動にでた。
「あ、ああ…確かにそうだな。お前の言う通りだ。自分で散らかしたのだから、自分で片付けるのが筋が通っているな」
え?聞き間違いだろうか?
「あの…デニム様?今、何とおっしゃいましたか?」
「あ?ああ。自分で片付けると言った」
へ?嘘でしょう?しかし、デニムは私の戸惑いをよそに、慣れない手付きで床に落ちてた衣類や下着を拾い始めた。この男…本気で1人で片付ける気なのだろうか?
「デニム様。お一人で片付けられるのですよね?」
「ああ、そうだ。考えてみれば少しは自分の身の回りのことくらい、自分で出来なければな」
言いながら再びチラリと私を横目で見るとすぐに視線をそらせた。全く持って今のデニムは挙動不審だ。だが…。
「デニム様。それではお湯を入れ直してまいります。お持ちするのは1時間後位でよろしいでしょうか?」
「ああ!1時間以内に片付け終わるからな?必ず戻って来いよ!」
今度は私の事をガン見してくる。そんなにこのお茶が楽しみなのだろうか…?
「かしこまりました。では1時間後に戻って参ります」
私は頭を下げるとデニムの部屋を後にすると、首をひねりながら厨房へ向かうのだった―。
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