嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
344 / 566

第4章 10 合流

しおりを挟む
 翌朝、午前7時―

ルドルフは1人、トランクケースを持って『ロータス』駅に向かう馬車に揺られていた。防寒コートのポケットには昨日ヒルダから受け取ったお守りが入っている。ルドルフはそれを手に取り、じっと見つめ…思った。

(絶対にカウベリーに着いたら刑事さんと一緒にヒルダ様が教会を燃やしてしまった犯人では無いと言うことを証明するんだ。その為にはグレースの家に行っておばさんにはっきり伝えないと。とりあえず一番最初はグレースの家を尋ねることにしよう。ヒルダ様…来年は2人で一緒に里帰りをしましょうね。僕…頑張りますから…。)

そして馬車の窓から外を眺めながら、昨日ヒルダと2人で過ごした甘い時間を思い出し、駅につくまでの間ルドルフは幸せに浸るのだった―。



****

11時半―

ルドルフを乗せたロータス発の汽車が『コックス』駅に到着すると、ボストンバッグを片手に持ったクロード警部補が車内に乗り込んできた。

「え~と…確かルドルフくんの乗っている列車は3号車だったかな」

次が終着駅である車内はガラガラで乗っている人数は人影もまばらだった。

「さて、ルドルフ君はどこかな…?」

3号車にやってきたクロード警部補はいきなり呼ばれた。

「刑事さんっ!」

見ると後部座席でルドルフが立ち上がって笑顔で手を振っている。

「やあ。ルドルフ君。また会えたね?」

クロード警部補は笑顔でルドルフの元へ向かうと2人は握手を交わした。そしてルドルフの向かい側の席に座ると、早速口を開いた。

「悪かったね、ルドルフ君。君を呼び出すような真似をしてしまって」

「いえ、そんな事はありません。むしろ僕からお礼を言わせて下さい。刑事さんのお陰でヒルダ様の無実が証明できそうなのですから。」

「いや…それについては、私は警察としてあの事件の調査に関わってはいなかったけれども、謝罪させてもらいたいよ。きちんと捜査をしていればフィールズ家の令嬢が犯人では無いことが分かっただろうに、あのときは令嬢の証言だけで捜査を終わらせてしまったみたいなものだからね」

「そうだったんですね…僕はあの事件の時は殆どヒルダ様とは関わっていないので」

「あの時はもう婚約は解消してしまっていたので…。でも刑事さん。」

ルドルフは顔を上げてクロード警部補を見た。

「今回、ヒルダ様の無実が証明されて、ハリス様にヒルダ様が許されたなら…僕は再びヒルダ様と婚約させて下さいとお願いするつもりなんです」

「え?!そうなのかい?」

クロード警部補は驚いた。まさかルドルフがフィールズ家の当主に婚約のお願いをするつもりだとは夢にも思っていなかった。だが、幸せそうなルドルフを見ていると応援したくなってきた。

「そうかい、うまくいくといいね。その為にはまずグレースの母親から話を聞かなくてはな。素直に話に応じてくれると良いが…」

クロード警部補に一抹の不安があった。目の前で夫によって我が子を殺害される様をみてしまったショックで精神に異常を来たし、つい最近まで入院していたグレースの母親。そんな彼女からまともに話を聞く事が出来るのだろうか?だが、希望に満ちた顔で窓の外の景色を眺めているルドルフには伝える事が出来なかった。

(何、俺がついているのだから大丈夫だろう。大きな問題はおこらないはずだ)


「それじゃ、ルドルフ君。カウベリーについた後の予定を決めておこう」

「はい」

そして2人はカウベリーにつくまでの間、本日の予定を話し合うのだった―。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

【完結】お世話になりました

⚪︎
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

処理中です...