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3-8 越冬期間が終わるまで
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アリアドネがシュミットに連れられてやって来たのは以前連れて来られた円筒の建物であった。
「ここまで足を運ばせてしまい、申し訳ございません」
シュミットは暖炉に火をくべながらアリアドネに詫びた。
「いえ、どうかお気になさらないで下さい。何か大事なお話があるのですよね?」
椅子に座ったアリアドネが尋ねて来た。
「ええ…大事な話と申しますか…。お詫びと申しますか…」
薪をくべ終えたシュミットはテーブルを挟んでアリアドネの向かい側に座った。
「お詫び…ですか?」
アリアドネは首を傾げた。
(シュミット様が私にお詫びする事なんてあるのかしら?むしろお詫びをしなければならないのは私の方なのに?)
「はい、私のミスで…危うくアリアドネ様とエルウィン様を鉢合わせさせることになってしまった事です」
「あ…でもあれはシュミット様のせいではありませんよ?」
シュミットは首を振った。
「いえ、私のせいです。あの寄宿舎ならエルウィン様は足を運ぶことが無いと申し上げましたが、越冬期間に入るとエルウィン様が頻繁にそちらに赴くことを失念しておりました。その…色々事情がございまして…エルウィン様はこの期間はあまり…城内にいることを好みませんので…本当に申し訳ございません」
その事情をアリアドネに告げることはシュミットには出来なかった。
(まさか、越冬期間中は…娼婦たちが城内に住むからだとアリアドネ様に伝えるわけにもいかないし…もし、事情を聞かれたら…何とお答えしよう…?)
しかしシュミットの心配を他所に、アリアドネは理由を尋ねることはしなかった。
「いえ。そんな…本当に謝らないで下さい。ではこの先もエルウィン様はこちらに足を運ぶと言う事になるのですね?」
「はい、恐らくは…」
シュミットは申し訳なさげに頭を下げた。
「でも、ご安心下さい。もう二度とあのような事態にならないよう、私が最善の注意を払いますので!」
「ですが…シュミット様もお忙しい方でいらっしゃいますよね?」
アリアドネは静かに尋ねた。
「確かに…正直に申し上げれば忙しい身分ではありますが…」
「それでしたら、どうかご自身のお仕事を優先させて下さい」
「え?ですが…」
「シュミット様。この『アイデン』の地が越冬期間に入ると、外の天候はどうなるのですか?」
「アリアドネ様…?」
(どうされたのだろう?突然に天候の事を尋ねて来るなんて…)
シュミットは不思議に思いつつも、答えた。
「はい。ご承知の通り、この地は北部に位置し、また…高い山脈に周囲を囲まれておりますので、他の地域とは比較にならない寒さになります。マイナスの極寒の地域に1日中ブリザードが吹き荒れる日もあります。雪は高く降り積もり、この城は雪によって外界から完全に遮断されてしまいます」
「そうですか…」
シュミットの説明に、改めてアリアドネはこの土地がどれだけ過酷な環境に置かれているかを知った。
(でも…そのような環境なら…)
そこでアリアドネは言った。
「でしたら…もし仮に、エルウィン様に見つかってしまったとしても…いきなり追い出されてしまうような事はありませんよね?仮に追い出されるとしても、越冬期間を終えて…雪解けがみられる頃ですよね?」
「え…?アリアドネ様…一体何を…?」
シュミットは嫌な予感がした。
「私、越冬期間が終わった後…この城を出ようと思っています。これ以上皆様にご迷惑をお掛けするわけにもいきませんので」
「え?!アリアドネ様…本気で仰っていおられるのですか?」
エルウィンは耳を疑った。まさかアリアドネがこの城を出ることを考えているとは思わなかったからだ。
「もしや生活の上で不備がございましたか?あ…そもそもアリアドネ様をあのような場所に住まわせた挙げ句、働かせてしまっておりますし…本来であればエルウィン様の妻としてこちらにお越しいただいているのに…これではいくら何でも失礼でしたよね…申し訳ございませんでした」
シュミットは深々と頭を下げた。
「い、いえ。そういう事ではありません。私は…エルウィン様に初めてお会いした時、妾腹の娘と呼ばれて嫌悪されてしまいました。実は他の使用人の方たちから話を伺って…何故エルウィン様がそこまで妾腹にこだわっているのか…理由がわかりましたので…」
「アリアドネ様…」
(何て事だ…。アリアドネ様はもう分かってらしたのか…)
「シュミット様。私はエルウィン様にとって不快な存在だという事が改めて分かりました。なので…越冬期間が終わり次第、この城を出ていきます。その間までは…ここに置かせて下さい。宜しくお願い致します」
アリアドネはシュミットに頭を下げた―。
「ここまで足を運ばせてしまい、申し訳ございません」
シュミットは暖炉に火をくべながらアリアドネに詫びた。
「いえ、どうかお気になさらないで下さい。何か大事なお話があるのですよね?」
椅子に座ったアリアドネが尋ねて来た。
「ええ…大事な話と申しますか…。お詫びと申しますか…」
薪をくべ終えたシュミットはテーブルを挟んでアリアドネの向かい側に座った。
「お詫び…ですか?」
アリアドネは首を傾げた。
(シュミット様が私にお詫びする事なんてあるのかしら?むしろお詫びをしなければならないのは私の方なのに?)
「はい、私のミスで…危うくアリアドネ様とエルウィン様を鉢合わせさせることになってしまった事です」
「あ…でもあれはシュミット様のせいではありませんよ?」
シュミットは首を振った。
「いえ、私のせいです。あの寄宿舎ならエルウィン様は足を運ぶことが無いと申し上げましたが、越冬期間に入るとエルウィン様が頻繁にそちらに赴くことを失念しておりました。その…色々事情がございまして…エルウィン様はこの期間はあまり…城内にいることを好みませんので…本当に申し訳ございません」
その事情をアリアドネに告げることはシュミットには出来なかった。
(まさか、越冬期間中は…娼婦たちが城内に住むからだとアリアドネ様に伝えるわけにもいかないし…もし、事情を聞かれたら…何とお答えしよう…?)
しかしシュミットの心配を他所に、アリアドネは理由を尋ねることはしなかった。
「いえ。そんな…本当に謝らないで下さい。ではこの先もエルウィン様はこちらに足を運ぶと言う事になるのですね?」
「はい、恐らくは…」
シュミットは申し訳なさげに頭を下げた。
「でも、ご安心下さい。もう二度とあのような事態にならないよう、私が最善の注意を払いますので!」
「ですが…シュミット様もお忙しい方でいらっしゃいますよね?」
アリアドネは静かに尋ねた。
「確かに…正直に申し上げれば忙しい身分ではありますが…」
「それでしたら、どうかご自身のお仕事を優先させて下さい」
「え?ですが…」
「シュミット様。この『アイデン』の地が越冬期間に入ると、外の天候はどうなるのですか?」
「アリアドネ様…?」
(どうされたのだろう?突然に天候の事を尋ねて来るなんて…)
シュミットは不思議に思いつつも、答えた。
「はい。ご承知の通り、この地は北部に位置し、また…高い山脈に周囲を囲まれておりますので、他の地域とは比較にならない寒さになります。マイナスの極寒の地域に1日中ブリザードが吹き荒れる日もあります。雪は高く降り積もり、この城は雪によって外界から完全に遮断されてしまいます」
「そうですか…」
シュミットの説明に、改めてアリアドネはこの土地がどれだけ過酷な環境に置かれているかを知った。
(でも…そのような環境なら…)
そこでアリアドネは言った。
「でしたら…もし仮に、エルウィン様に見つかってしまったとしても…いきなり追い出されてしまうような事はありませんよね?仮に追い出されるとしても、越冬期間を終えて…雪解けがみられる頃ですよね?」
「え…?アリアドネ様…一体何を…?」
シュミットは嫌な予感がした。
「私、越冬期間が終わった後…この城を出ようと思っています。これ以上皆様にご迷惑をお掛けするわけにもいきませんので」
「え?!アリアドネ様…本気で仰っていおられるのですか?」
エルウィンは耳を疑った。まさかアリアドネがこの城を出ることを考えているとは思わなかったからだ。
「もしや生活の上で不備がございましたか?あ…そもそもアリアドネ様をあのような場所に住まわせた挙げ句、働かせてしまっておりますし…本来であればエルウィン様の妻としてこちらにお越しいただいているのに…これではいくら何でも失礼でしたよね…申し訳ございませんでした」
シュミットは深々と頭を下げた。
「い、いえ。そういう事ではありません。私は…エルウィン様に初めてお会いした時、妾腹の娘と呼ばれて嫌悪されてしまいました。実は他の使用人の方たちから話を伺って…何故エルウィン様がそこまで妾腹にこだわっているのか…理由がわかりましたので…」
「アリアドネ様…」
(何て事だ…。アリアドネ様はもう分かってらしたのか…)
「シュミット様。私はエルウィン様にとって不快な存在だという事が改めて分かりました。なので…越冬期間が終わり次第、この城を出ていきます。その間までは…ここに置かせて下さい。宜しくお願い致します」
アリアドネはシュミットに頭を下げた―。
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