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3-7 騎士と雑巾
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昼食後―
アリアドネは他の使用人たちとは少し離れた作業場所で1人雑巾縫いをしていた。頭の中には先程のセリアの話がこびりついて離れない。
『ランベール様と言うのはエルウィン様のお父様の腹違いの弟なのよ。母親は妾だったそうよ』
(ランベール様と言う方が娼館から女性を引き抜いて、ここのメイドに選び…更に越冬期間の間は娼婦達をこの城に住まわせて、エルウィン様を苛立たせている…。あの方が私を妾腹の娘と言って軽蔑するのは無理も無い話だったのだわ…)
アリアドネは思い悩んでいた。エルウィンからはこの城を出て行けと言われたにも関わらず、自分の我儘でシュミットにこの城に下働きとして置かせてもらっている。もし自分がここにいる事がエルウィンにバレてしまえば、恐らくシュミットはただでは済まないだろう。
(私って…結局、何処に行っても迷惑な存在なのだわ…。決めた。越冬期間が終わったら、やっぱりこの城を出る事にしましょう。ヨゼフさん…一緒に来てくれるかしら…?もし、ここに残りたいとヨゼフさんが願っていたら…)
物思いにふけっていたアリアドネは作業場の中で騒ぎが起こっていることに全く気づいていなかった。
当然背後から近付いてくる人の気配にも―。
「アリアドネ様」
突然背後から名前を呼ばれ、アリアドネは驚いて左の人差し指を針をで刺してしまった。
「痛っ!」
途端に小さな赤いシミが縫っていた雑巾に滲む。
「え?!も、申し訳ございません!」
慌てた声を上げたのはシュミットだった。
「あ…シュミット様。それにスティーブ様…」
アリアドネは刺してしまった指を握りしめながら背後を振り向いた。するとそこにはオロオロした様子のシュミットと、驚き顔のスティーブが立っていた。
「アリアドネ?!指を怪我したのか?」
スティーブがシュミットを押しのけてアリアドネに近付いてきた。
「スティーブ様…あ、あの。大丈夫ですから…」
「お、おい!スティーブ!」
シュミットは声を掛けるがあっさり無視される。
「いいから、見せてみろよ」
スティーブに言われ、アリアドネは仕方無しに怪我した左手を差し出した。
「…」
スティーブはアリアドネの傷をじっと見ていたが、上着のポケットからハンカチを取り出すと、いきなり細長く切り裂き、大袈裟な程にアリアドネの指に巻き始める。
「え?あ、あの?」
「…」
しかし、スティーブはアリアドネの指に切り裂いたハンカチを巻くのに集中し、返事をしない。
やがて…。
「よし、これでもう大丈夫だ。怪我をしたらすぐに治さないとな」
「「…」」
アリアドネとシュミットは人差し指に巻かれたハンカチを見た。大袈裟に巻かれた指は、もはや仕事に差し支えるレベルだった。
「あ、あの…スティーブ様…」
アリアドネは戸惑いながら声を掛ける。
「うん?どうしたんだ?」
笑みを浮かべるスティーブ。
するとシュミットが言った。
「スティーブ、これではアリアドネ様のお仕事に差し支えが出てしまうだろう?」
「何だって?お前はアリアドネが怪我をしたのに働かせるのか?」
スティーブが真面目な顔でシュミットに尋ねてくる。
「スティーブ、お前という奴は…」
シュミットは左手で自分の額を押さえるとため息をついた。
「あの、折角この様に丁寧に治療して頂いて有り難いのですが…これでは雑巾が縫えませんので…」
「何?雑巾を縫うだって?よし、なら怪我をしたアリアドネの代わりに俺が縫ってやろう」
「「え?」」
スティーブはアリアドネとシュミットの戸惑いを他所に、空いている椅子にドカッと座ると早速アリアドネに手を差し出した。
「ほら、アリアドネ。今手にしている雑巾をよこせよ」
「え?で、でも…あの…」
そこへシュミットが声を掛けた。
「いいではありませんか。アリアドネ様、スティーブに縫いかけの雑巾を渡して下さい」
「は、はい…分かりました…」
アリアドネはおとなしくスティーブに雑巾を手渡すと彼は嬉しそうに言った。
「よし、任せろ」
「では頼むぞ。スティーブ。アリアドネ様、参りましょう」
スティーブはアリアドネに声を掛けた。
「え?ど、どこへ?」
「おい!アリアドネを何処に連れて行くんだ?!」
アリアドネとシュミットが同時に声を上げた。
「アリアドネ様に大事なお話があります。少し場所を変えましょう、後は宜しくな。スティーブ」
シュミットはスティーブの顔を見ることもなく、アリアドネに声を掛けた。
「え?で、でも…」
「ああ、彼なら大丈夫です。何しろ代わりに仕事すると申し出たのですから」
「は、はい…」
シュミットに強引に促され、アリアドネは頷いた。
「お、おい!シュミットッ!」
「後の事は頼んだぞ?さ、アリアドネ様」
「申し訳ございません。スティーブ様」
アリアドネは頭を下げた。
「彼の事はいいんですよ。では早速参りましょう」
そしてシュミットは呆気に取られるスティーブをその場に残し、アリアドネを連れて作業場を出て行ってしまった―。
アリアドネは他の使用人たちとは少し離れた作業場所で1人雑巾縫いをしていた。頭の中には先程のセリアの話がこびりついて離れない。
『ランベール様と言うのはエルウィン様のお父様の腹違いの弟なのよ。母親は妾だったそうよ』
(ランベール様と言う方が娼館から女性を引き抜いて、ここのメイドに選び…更に越冬期間の間は娼婦達をこの城に住まわせて、エルウィン様を苛立たせている…。あの方が私を妾腹の娘と言って軽蔑するのは無理も無い話だったのだわ…)
アリアドネは思い悩んでいた。エルウィンからはこの城を出て行けと言われたにも関わらず、自分の我儘でシュミットにこの城に下働きとして置かせてもらっている。もし自分がここにいる事がエルウィンにバレてしまえば、恐らくシュミットはただでは済まないだろう。
(私って…結局、何処に行っても迷惑な存在なのだわ…。決めた。越冬期間が終わったら、やっぱりこの城を出る事にしましょう。ヨゼフさん…一緒に来てくれるかしら…?もし、ここに残りたいとヨゼフさんが願っていたら…)
物思いにふけっていたアリアドネは作業場の中で騒ぎが起こっていることに全く気づいていなかった。
当然背後から近付いてくる人の気配にも―。
「アリアドネ様」
突然背後から名前を呼ばれ、アリアドネは驚いて左の人差し指を針をで刺してしまった。
「痛っ!」
途端に小さな赤いシミが縫っていた雑巾に滲む。
「え?!も、申し訳ございません!」
慌てた声を上げたのはシュミットだった。
「あ…シュミット様。それにスティーブ様…」
アリアドネは刺してしまった指を握りしめながら背後を振り向いた。するとそこにはオロオロした様子のシュミットと、驚き顔のスティーブが立っていた。
「アリアドネ?!指を怪我したのか?」
スティーブがシュミットを押しのけてアリアドネに近付いてきた。
「スティーブ様…あ、あの。大丈夫ですから…」
「お、おい!スティーブ!」
シュミットは声を掛けるがあっさり無視される。
「いいから、見せてみろよ」
スティーブに言われ、アリアドネは仕方無しに怪我した左手を差し出した。
「…」
スティーブはアリアドネの傷をじっと見ていたが、上着のポケットからハンカチを取り出すと、いきなり細長く切り裂き、大袈裟な程にアリアドネの指に巻き始める。
「え?あ、あの?」
「…」
しかし、スティーブはアリアドネの指に切り裂いたハンカチを巻くのに集中し、返事をしない。
やがて…。
「よし、これでもう大丈夫だ。怪我をしたらすぐに治さないとな」
「「…」」
アリアドネとシュミットは人差し指に巻かれたハンカチを見た。大袈裟に巻かれた指は、もはや仕事に差し支えるレベルだった。
「あ、あの…スティーブ様…」
アリアドネは戸惑いながら声を掛ける。
「うん?どうしたんだ?」
笑みを浮かべるスティーブ。
するとシュミットが言った。
「スティーブ、これではアリアドネ様のお仕事に差し支えが出てしまうだろう?」
「何だって?お前はアリアドネが怪我をしたのに働かせるのか?」
スティーブが真面目な顔でシュミットに尋ねてくる。
「スティーブ、お前という奴は…」
シュミットは左手で自分の額を押さえるとため息をついた。
「あの、折角この様に丁寧に治療して頂いて有り難いのですが…これでは雑巾が縫えませんので…」
「何?雑巾を縫うだって?よし、なら怪我をしたアリアドネの代わりに俺が縫ってやろう」
「「え?」」
スティーブはアリアドネとシュミットの戸惑いを他所に、空いている椅子にドカッと座ると早速アリアドネに手を差し出した。
「ほら、アリアドネ。今手にしている雑巾をよこせよ」
「え?で、でも…あの…」
そこへシュミットが声を掛けた。
「いいではありませんか。アリアドネ様、スティーブに縫いかけの雑巾を渡して下さい」
「は、はい…分かりました…」
アリアドネはおとなしくスティーブに雑巾を手渡すと彼は嬉しそうに言った。
「よし、任せろ」
「では頼むぞ。スティーブ。アリアドネ様、参りましょう」
スティーブはアリアドネに声を掛けた。
「え?ど、どこへ?」
「おい!アリアドネを何処に連れて行くんだ?!」
アリアドネとシュミットが同時に声を上げた。
「アリアドネ様に大事なお話があります。少し場所を変えましょう、後は宜しくな。スティーブ」
シュミットはスティーブの顔を見ることもなく、アリアドネに声を掛けた。
「え?で、でも…」
「ああ、彼なら大丈夫です。何しろ代わりに仕事すると申し出たのですから」
「は、はい…」
シュミットに強引に促され、アリアドネは頷いた。
「お、おい!シュミットッ!」
「後の事は頼んだぞ?さ、アリアドネ様」
「申し訳ございません。スティーブ様」
アリアドネは頭を下げた。
「彼の事はいいんですよ。では早速参りましょう」
そしてシュミットは呆気に取られるスティーブをその場に残し、アリアドネを連れて作業場を出て行ってしまった―。
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