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9-7 メイドたちの嫌がらせ
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執務室を出たエルウィンは自室に戻る為に廊下を歩いていると、前方からこちらに向って歩いてくるオズワルドに出会った。
「おや?エルウィン様。ひょっとしてミカエル様とウリエル様のお部屋に行かれるのですか?」
オズワルドはエルウィンに話しかけてきた。
「いや、自室に戻るところだ。ところで…何故お前がここにいる?今日は朝から騎士団の訓練をする予定では無かったのか?」
「ええ、実は本日は私用が出来てしまったのでロイに頼んだのです。その報告を今からエルウィン様に伝えに参りました」
「ロイに頼んだのか…?だが別に俺に報告に来るまでもないだろう?お前の騎士団なのだから、好きにすればよいだろう?」
「いえ、一応予定が変更したことはお伝えするべきかと思ったものですから」
オズワルドは笑みを浮かべた。
「ふ…ん。そうか、律儀なことだな」
「それでは私はこれにて失礼致します」
そしてオズワルドは一礼すると踵を返し、元来た廊下を歩き去って行った。
「…」
そんなオズワルドの背中をエルウィンは少しの間見守っていたが…ポツリと呟いた。
「そうか…ロイは今不在なのか…」
そしてエルウィンは自室へ戻る為、再び歩き始めた―。
****
午後2時―
ミカエルとウリエルはそれぞれ読書をしていた。
そしてアリアドネはその傍らで洗濯を終えた2人の衣類をクローゼットにしまっていた。
「あ~あ…ロイがいないと退屈だな…カードをする気になれないよ」
ミカエルが本を読みながらため息を付いた。
「うん、やっぱりカードゲームはロイがいたほうが面白いよね」
ウリエルは読んでいた本をとうとう閉じてしまった。
2人の様子を見ていたアリアドネが声を掛けた。
「お2人供、いつもならカードゲームでロイばかり勝ってズルいと仰っておられるのに、やはりロイがいたほうが良いのですか?」
「うん、それはそうだよ」
「いつかは勝ちたいからね。それにあれから一度もエルウィン様は遊びに来てくれないし…」
ウリエルとミカエルが交互に頷く。
いつしか、4人で一緒に過すのが当然のようになっていたのだ。
「ロイが今の話を聞けば喜ぶかもしれませんね。でも、確かにエルウィン様はこちらにいらっしゃいませんね…。きっとお忙しいのでしょうね」
アリアドネは何故エルウィンが一度もこの部屋に2人の様子を見に来ないのか…その理由に全く気付いていなかったのだ。
クローゼットに衣類をしまい終えると、アリアドネはミカエルとウリエルに声を掛けた。
「そろそろ午後のティータイムの時間なので、厨房に取りに行ってきますね」
アリアドネが部屋を出ていこうとした時、ミカエルが心配そうな表情でアリアドネを見た。
「リア、大丈夫?1人で行ける?」
「ええ、勿論です。地図がありますから。ご心配ありがとうございます。では行って参りますね」
アリアドネは会釈をすると、部屋を出て行った―。
****
厨房から戻ったアリアドネはワゴンを押して、ミカエルとウリエルのお茶とおやつをワゴンに乗せて運んでいた。
すると洗濯かごを持った3人のメイドたちが仲良さ気に話をしながら、長い廊下をこちらへ向って歩いてくる姿が目に入った。
そのうちの1人はゾーイであった。
(あ、あの人は…ゾーイさんだわ…!どうしょう…困ったことになったわ…)
ただでさえ、自分はゾーイに目を付けられている。
その上、メイドになったばかりなのにミカエルとウリエルの専属メイドになり、加えてロイが専属護衛騎士になったのだ。
自分が周囲から良く思われていないことは知っていた。
(どうか何事も起きませんように…)
しかしアリアドネの願いも虚しく、ゾーイたちはアリアドネの姿に気づくとクスクス笑いながら足早に近付いてきた。
「あら?誰かと思えば新人メイドじゃないの?」
ゾーイが真っ先に声を掛けてきた。
「確か、下働きの女だったでしょう?」
「オズワルド様があんたをミカエル様とウリエル様の専属メイドに指名したのよね?」
3人は意地悪そうな目でアリアドネを見た。
「一体…どんな手を使ってロイ様とエルウィン様を誘惑したのよ」
ゾーイはアリアドネを睨みつけてきた。
「え?そ、そんな!私は何もしておりません!」
何一つ心当たりが無かったアリアドネは首を振った。
「うるさいわね!あんたのせいで私は…こんな目に…!」
ゾーイはワゴンの上に乗せたティーカップセットを手で乱暴に振り払い、床の上に落とした。
ガチャーンッ!!
派手に食器が割れる音が廊下に響き渡った―。
「おや?エルウィン様。ひょっとしてミカエル様とウリエル様のお部屋に行かれるのですか?」
オズワルドはエルウィンに話しかけてきた。
「いや、自室に戻るところだ。ところで…何故お前がここにいる?今日は朝から騎士団の訓練をする予定では無かったのか?」
「ええ、実は本日は私用が出来てしまったのでロイに頼んだのです。その報告を今からエルウィン様に伝えに参りました」
「ロイに頼んだのか…?だが別に俺に報告に来るまでもないだろう?お前の騎士団なのだから、好きにすればよいだろう?」
「いえ、一応予定が変更したことはお伝えするべきかと思ったものですから」
オズワルドは笑みを浮かべた。
「ふ…ん。そうか、律儀なことだな」
「それでは私はこれにて失礼致します」
そしてオズワルドは一礼すると踵を返し、元来た廊下を歩き去って行った。
「…」
そんなオズワルドの背中をエルウィンは少しの間見守っていたが…ポツリと呟いた。
「そうか…ロイは今不在なのか…」
そしてエルウィンは自室へ戻る為、再び歩き始めた―。
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午後2時―
ミカエルとウリエルはそれぞれ読書をしていた。
そしてアリアドネはその傍らで洗濯を終えた2人の衣類をクローゼットにしまっていた。
「あ~あ…ロイがいないと退屈だな…カードをする気になれないよ」
ミカエルが本を読みながらため息を付いた。
「うん、やっぱりカードゲームはロイがいたほうが面白いよね」
ウリエルは読んでいた本をとうとう閉じてしまった。
2人の様子を見ていたアリアドネが声を掛けた。
「お2人供、いつもならカードゲームでロイばかり勝ってズルいと仰っておられるのに、やはりロイがいたほうが良いのですか?」
「うん、それはそうだよ」
「いつかは勝ちたいからね。それにあれから一度もエルウィン様は遊びに来てくれないし…」
ウリエルとミカエルが交互に頷く。
いつしか、4人で一緒に過すのが当然のようになっていたのだ。
「ロイが今の話を聞けば喜ぶかもしれませんね。でも、確かにエルウィン様はこちらにいらっしゃいませんね…。きっとお忙しいのでしょうね」
アリアドネは何故エルウィンが一度もこの部屋に2人の様子を見に来ないのか…その理由に全く気付いていなかったのだ。
クローゼットに衣類をしまい終えると、アリアドネはミカエルとウリエルに声を掛けた。
「そろそろ午後のティータイムの時間なので、厨房に取りに行ってきますね」
アリアドネが部屋を出ていこうとした時、ミカエルが心配そうな表情でアリアドネを見た。
「リア、大丈夫?1人で行ける?」
「ええ、勿論です。地図がありますから。ご心配ありがとうございます。では行って参りますね」
アリアドネは会釈をすると、部屋を出て行った―。
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厨房から戻ったアリアドネはワゴンを押して、ミカエルとウリエルのお茶とおやつをワゴンに乗せて運んでいた。
すると洗濯かごを持った3人のメイドたちが仲良さ気に話をしながら、長い廊下をこちらへ向って歩いてくる姿が目に入った。
そのうちの1人はゾーイであった。
(あ、あの人は…ゾーイさんだわ…!どうしょう…困ったことになったわ…)
ただでさえ、自分はゾーイに目を付けられている。
その上、メイドになったばかりなのにミカエルとウリエルの専属メイドになり、加えてロイが専属護衛騎士になったのだ。
自分が周囲から良く思われていないことは知っていた。
(どうか何事も起きませんように…)
しかしアリアドネの願いも虚しく、ゾーイたちはアリアドネの姿に気づくとクスクス笑いながら足早に近付いてきた。
「あら?誰かと思えば新人メイドじゃないの?」
ゾーイが真っ先に声を掛けてきた。
「確か、下働きの女だったでしょう?」
「オズワルド様があんたをミカエル様とウリエル様の専属メイドに指名したのよね?」
3人は意地悪そうな目でアリアドネを見た。
「一体…どんな手を使ってロイ様とエルウィン様を誘惑したのよ」
ゾーイはアリアドネを睨みつけてきた。
「え?そ、そんな!私は何もしておりません!」
何一つ心当たりが無かったアリアドネは首を振った。
「うるさいわね!あんたのせいで私は…こんな目に…!」
ゾーイはワゴンの上に乗せたティーカップセットを手で乱暴に振り払い、床の上に落とした。
ガチャーンッ!!
派手に食器が割れる音が廊下に響き渡った―。
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