身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
182 / 376

11-8 反乱

しおりを挟む
 突然縄を解いて立ち上がったロイを見た兵士達の間に動揺が走った。

「な、何っ?!縄がっ!」
「いつの間に解いたのだっ!」

ロイはそのまま勢いよく駆け出し、地下牢の鉄の扉を蹴った。

ガシャーンッ!!

扉が乱暴に開かれる音が地下牢に響き渡る。
ロイはそのまま兵士たちの元へ突っ込んでゆく。

「貴様っ!」
「や、奴を止めろっ!」
「馬鹿め!武器も持たないくせに!」

兵士達は剣を抜くとロイに切りかかってゆく。それを物ともせずにロイは身軽な動きで攻撃を避け、兵士たちの腕めがけて手刀を振り下ろして腹を蹴り上げる。

「ぐあああぁつ!!」
「うっ!」
「ゴフッ!」

体術も得意なロイに取って、下っ端の兵士たちは所詮敵にすらならなかった。
ロイは気を失い、床に転がっている兵士たちから全ての武器を奪った。

「俺は剣が1本だけあればいい」

ロイは手近にいた拘束されている男の縄を解くと命じた。

「全員の拘束をとき、兵士たちを地下牢へ押し込めておけ」

「は、はい……分かりました」

男が頷く様子を見たロイはそのまま踵を返して地下牢へ出ようとしたところへビルが声を掛けた。

「騎士様っ!」

「…何だ?」

「あ、貴方は…エルウィン様たちとは敵対する東塔の騎士様ですよね?何故我らを助けたのですか?我々はエルウィン様に加勢しようとしていたのですよ?」

するとロイは振り向き…答えた。

「東も南も関係ない。俺はただアリアドネを誘拐させたオズワルドが許せないだけだ」

「え?アリアドネ…」
「アリアドネの為に…?」
「まさか…」

ロイの口からアリアドネの名前が出てきたことで、下働きの者達の間でざわめきが起きた。

「もう捕まるなよ」

ロイはそれだけ言い残すと、剣を握りしめたまま地下牢を走り去っていった――。



****

一方、城内では激しい戦いが起こっていた。

突然東塔の騎士や兵士たちが武装して南塔に乗り込み、次々と襲いかかってきたのだ。
南塔では激しい言い争いと剣を交わす音が響き渡っていた。

「な、何だっ!貴様らっ!東塔の兵士だろうっ?!」

「黙れっ!今日からこの城はオズワルド様のものだっ!!」

「オズワルド様に従わないもののは全員殺してやるっ!」

「そうはさせるかっ!」

今や南と東に分かれた仲間内の激しい乱闘が城内で繰り広げられていた――。


****

 オズワルドの反乱は作戦会議室にいたシュミットとエデルガルトにすぐに伝えられた。

「そうか……やはり、奴らめ襲ってきおったか……」

兵士から報告を受けたエデルガルトが唸った。

「はい、奴等は武器庫から相当数の武器を持ち出し、完全武装しております」

兵士は状況を説明している。

「やはり、エルウィン様の不在を狙って襲ってきましたね」

シュミットの言葉にエデルガルトは頷く。

「ああ、だが我ら南塔の騎士団のほうが実戦経験を積んでいる。そう簡単には我らは陥落などせぬ」

その時、1人の騎士が慌てたように作戦会議室に飛び込んできた。

「た、大変ですっ!ミカエル様とウリエル様のお2人が部屋からいなくなりました!どうやら人質に連れて行かれたようです!フットマンが目撃していたそうですっ!」


「「何だってっ?!」」

シュミットとエデルガルトが同時に声を上げた――。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

処理中です...