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11-7 地下牢のロイ
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オズワルドはロイにとって、師匠のようでもあり、また父のような存在でもあった。
変わり者のオズワルドは『アイゼンシュタット城』での評判は良くなかった。
何を考えているのか分からない、不気味な男として騎士団長を勤めながらも周囲からは距離を置かれていた。
しかし、それでもロイに取っては姉の敵を討ってくれただけでなく、自分の命を救ってくれた相手であった。
だからこそロイはオズワルドの腹心として、周囲から煙たがられている彼の側を離れること無く、下された命令は忠実にこなしていた。
その矢先にいきなりミカエルとウリエルの護衛騎士に任命されたのである。
何故自分のような無愛想な者が護衛騎士に任命されたのか不明だったが、謎はすぐに解けた。
それがアリアドネの存在だったのだ。
ミカエルとウリエル2人の専属侍女だったゾーイがエルウィンの寝室に忍び込んだと言うことで、逆鱗に触れて侍女の人を解任された。
そして代わりに新しく専属メイドとして現れたのがアリアドネだった。
ロイは初めてアリアドネの姿を目にした時、我が目を疑った。
アリアドネは10年前に亡くなってしまった姉のミルバによく似ていたのだ。
長く美しい金の髪。
瞳の色こそ違えど、それを除けば本当に2人はそっくりだった。
そんなアリアドネにロイが固執するのは無理も無かった――。
亡くなった姉の代わりに、何があろうともアリアドネの側に身を置き、ずっと守っていこうと決めていたのに……あろうことか、オズワルドはダリウスにアリアドネを売ったのだ。
そして気づけば、ロイはオズワルドに剣を向けていた――。
****
牢屋に入れられて、すぐロイは自分の拘束された縄を隠し持っていたガラス片で断ち切っていた。
そしてわざと自分でゆるく縛っていつでも解けるような状態にしてある。
それだけではない。
牢屋番のすきを狙って服の中に忍ばせていた針金を使って牢屋の鍵を開けてあるのだ。その気になればいつでも逃げる事が出来る。
ロイはチャンスを狙っていたのだ。
いつでも脱獄できるチャンスを……。
「アリアドネ……」
ロイが何度目か、アリアドネの名を呟いたその時――。
不意に地下牢が騒がしくなった。
(何だ?誰か来たのか……?)
俯いていたロイは顔を上げた。
すると、ぞろぞろと下働きの者達がオズワルドの兵によって連れてこられてきた姿が目に飛び込んできた。
「貴様らは人質だ!とっとと歩けっ!」
威勢の良い兵士の声が地下牢に響き渡る。
「何だ?お前のその反抗的な目はっ!」
兵士たちが怒鳴りつけながら地下牢を進んできた時、不意に1人の兵士が地下牢に閉じ込められているロイの姿に気がついた。
「あ…!お、お前はロイ!…様…。な、何故こんな場所に…?」
騎士と兵士の上下関係は絶対だ。
いくらロイが年が若くとも、騎士である以上は兵士の上司に当たる。
兵士は馬鹿にした様子でロイを見ながら尋ねた。
「もしや、オズワルド様に捨てられたのですか?」
「あれ程可愛がられていたのに……お気の毒な話ですな?」
兵士たちはロイの実力を知らない。
彼等は下っ端の兵士なので、ロイはオズワルドに可愛がられているから騎士になれたのだとしか思っていなかったのだ。
そんな兵士たちとロイの様子を下働きの者達は黙って見つめていた。
「でも、もうお前も終わりだな。この地下牢でオズワルド様がアイゼンシュタットの城主になる姿を見ているといい」
すると、その言葉にセリアが反論した。
「いいえっ!アイゼンシュタットの城主はエルウィン様だけですっ!」
「何だとっ?!この……たかが下働きの女の癖に生意気なっ!」
兵士がセリアに手をあげようとした瞬間、ロイが動いた――。
変わり者のオズワルドは『アイゼンシュタット城』での評判は良くなかった。
何を考えているのか分からない、不気味な男として騎士団長を勤めながらも周囲からは距離を置かれていた。
しかし、それでもロイに取っては姉の敵を討ってくれただけでなく、自分の命を救ってくれた相手であった。
だからこそロイはオズワルドの腹心として、周囲から煙たがられている彼の側を離れること無く、下された命令は忠実にこなしていた。
その矢先にいきなりミカエルとウリエルの護衛騎士に任命されたのである。
何故自分のような無愛想な者が護衛騎士に任命されたのか不明だったが、謎はすぐに解けた。
それがアリアドネの存在だったのだ。
ミカエルとウリエル2人の専属侍女だったゾーイがエルウィンの寝室に忍び込んだと言うことで、逆鱗に触れて侍女の人を解任された。
そして代わりに新しく専属メイドとして現れたのがアリアドネだった。
ロイは初めてアリアドネの姿を目にした時、我が目を疑った。
アリアドネは10年前に亡くなってしまった姉のミルバによく似ていたのだ。
長く美しい金の髪。
瞳の色こそ違えど、それを除けば本当に2人はそっくりだった。
そんなアリアドネにロイが固執するのは無理も無かった――。
亡くなった姉の代わりに、何があろうともアリアドネの側に身を置き、ずっと守っていこうと決めていたのに……あろうことか、オズワルドはダリウスにアリアドネを売ったのだ。
そして気づけば、ロイはオズワルドに剣を向けていた――。
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牢屋に入れられて、すぐロイは自分の拘束された縄を隠し持っていたガラス片で断ち切っていた。
そしてわざと自分でゆるく縛っていつでも解けるような状態にしてある。
それだけではない。
牢屋番のすきを狙って服の中に忍ばせていた針金を使って牢屋の鍵を開けてあるのだ。その気になればいつでも逃げる事が出来る。
ロイはチャンスを狙っていたのだ。
いつでも脱獄できるチャンスを……。
「アリアドネ……」
ロイが何度目か、アリアドネの名を呟いたその時――。
不意に地下牢が騒がしくなった。
(何だ?誰か来たのか……?)
俯いていたロイは顔を上げた。
すると、ぞろぞろと下働きの者達がオズワルドの兵によって連れてこられてきた姿が目に飛び込んできた。
「貴様らは人質だ!とっとと歩けっ!」
威勢の良い兵士の声が地下牢に響き渡る。
「何だ?お前のその反抗的な目はっ!」
兵士たちが怒鳴りつけながら地下牢を進んできた時、不意に1人の兵士が地下牢に閉じ込められているロイの姿に気がついた。
「あ…!お、お前はロイ!…様…。な、何故こんな場所に…?」
騎士と兵士の上下関係は絶対だ。
いくらロイが年が若くとも、騎士である以上は兵士の上司に当たる。
兵士は馬鹿にした様子でロイを見ながら尋ねた。
「もしや、オズワルド様に捨てられたのですか?」
「あれ程可愛がられていたのに……お気の毒な話ですな?」
兵士たちはロイの実力を知らない。
彼等は下っ端の兵士なので、ロイはオズワルドに可愛がられているから騎士になれたのだとしか思っていなかったのだ。
そんな兵士たちとロイの様子を下働きの者達は黙って見つめていた。
「でも、もうお前も終わりだな。この地下牢でオズワルド様がアイゼンシュタットの城主になる姿を見ているといい」
すると、その言葉にセリアが反論した。
「いいえっ!アイゼンシュタットの城主はエルウィン様だけですっ!」
「何だとっ?!この……たかが下働きの女の癖に生意気なっ!」
兵士がセリアに手をあげようとした瞬間、ロイが動いた――。
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