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14−20 怯える来賓客達
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アリアドネが離宮でベアトリス王女の専属メイド達に嫌がらせを受けていた事実が明るみになった頃――。
国王が設けた晩餐会は一種異様な雰囲気に包まれていた。
「エルウィン様、我が城の食事はお口に合いますか?」
シンと静まり返った部屋で、ベアトリスが隣の席で食事をするエルウィンに親しげに話しかけている。
「ええ、そうですね。美味しいです」
エルウィンは内心イライラしながらも、何とか作り笑いを浮かべて返事をする。
「それは良かったです。この城の厨房で働く者達は全員選りすぐりの料理の腕を持ち合わせていますから。特にこのメインディッシュの肉料理は私の一番のお気に入りのメニューで……」
ベアトリスの話は止まらない。
エルウィンに話しかけるのにすっかり夢中で、料理にはまだ殆ど手をつけてはいなかった。
そしてエルウィンに夢中になっているベアトリスは全く知る由も無かったが、他の来賓客たちは彼の苛立ちに気付いていた。
(まずいぞ。辺境伯はかなり苛立っている)
(あの戦場の暴君と呼ばれる辺境伯を怒らせたら大変だわ)
(今に暴れ出して剣を振り回したらどうしましょう……)
(腰に差したあの剣で相当殺しているに違いない)
常に戦いに身を置いているエルウィンは剣を手放せない性分だった。
そこでこの会場でも腰にはしっかり愛剣を携えている。
それもまた人々が怯える要因の一つでもあった。
何より一番彼を恐れて震えていたのは向かい側に座るステニウス伯爵だった。
(何ということだ……辺境伯のあの様子だと、恐らくアリアドネから自分の境遇を聞かされているに違いない……何より時折睨みつけて来る彼の表情がそれを物語っているじゃないか!)
エルウィンは自分を苛立たせているベアトリスに当たることも出来ず、その怒りの矛先は全てステニウス伯爵に向かっていたのだ。
時折、視線だけで射殺すような眼差しを向けられたステニウス伯爵にとってはたまったものでは無い。
(くそ……っ!それにしてもよく喋る王女だ。そのきつい香水の匂いのせいで味なんか分かるわけがない!)
さっさと食事を終わらせて、早く離宮に戻りたい。
その事だけを考えながらベアトリスの話に適当に相槌を打っていた時――。
「お食事中、失礼致します。陛下」
突然、側近のデニスが入室してきた。
「何事だ、デニス」
国王はデニスに顔を向ける。
「ええ……実は、陛下に大事なお話が……」
「話?話とは何だ?」
すると、デニスは素早く国王に近付くと耳元で何やら囁いた。
「な、何だとっ?!それは誠の話かっ?!」
国王の驚きの声に、その場にいた全員が注目する。
「お父様?一体何事ですか?」
ベアトリスは首を傾げて声を掛けた。
「……」
しかし、国王はそれには答えずにデニスに声を掛けた。
「連れて参れ」
「え……?で、ですが……」
戸惑うデニス。
「いいから連れて来るのだ、今すぐ!」
「は、はいっ!」
デニスは慌てて、走り去っていき……会場内は騒めいた。
「一体何があったのでしょうね?」
ベアトリスは隣にいるエルウィンに話しかけた。
「さぁ、私には分かりません」
(どうでもいいから俺に話しかけるな!)
何があろうと、彼は全く興味が無かったのだ。
自分の部下がこの会場に現れるまでは――。
国王が設けた晩餐会は一種異様な雰囲気に包まれていた。
「エルウィン様、我が城の食事はお口に合いますか?」
シンと静まり返った部屋で、ベアトリスが隣の席で食事をするエルウィンに親しげに話しかけている。
「ええ、そうですね。美味しいです」
エルウィンは内心イライラしながらも、何とか作り笑いを浮かべて返事をする。
「それは良かったです。この城の厨房で働く者達は全員選りすぐりの料理の腕を持ち合わせていますから。特にこのメインディッシュの肉料理は私の一番のお気に入りのメニューで……」
ベアトリスの話は止まらない。
エルウィンに話しかけるのにすっかり夢中で、料理にはまだ殆ど手をつけてはいなかった。
そしてエルウィンに夢中になっているベアトリスは全く知る由も無かったが、他の来賓客たちは彼の苛立ちに気付いていた。
(まずいぞ。辺境伯はかなり苛立っている)
(あの戦場の暴君と呼ばれる辺境伯を怒らせたら大変だわ)
(今に暴れ出して剣を振り回したらどうしましょう……)
(腰に差したあの剣で相当殺しているに違いない)
常に戦いに身を置いているエルウィンは剣を手放せない性分だった。
そこでこの会場でも腰にはしっかり愛剣を携えている。
それもまた人々が怯える要因の一つでもあった。
何より一番彼を恐れて震えていたのは向かい側に座るステニウス伯爵だった。
(何ということだ……辺境伯のあの様子だと、恐らくアリアドネから自分の境遇を聞かされているに違いない……何より時折睨みつけて来る彼の表情がそれを物語っているじゃないか!)
エルウィンは自分を苛立たせているベアトリスに当たることも出来ず、その怒りの矛先は全てステニウス伯爵に向かっていたのだ。
時折、視線だけで射殺すような眼差しを向けられたステニウス伯爵にとってはたまったものでは無い。
(くそ……っ!それにしてもよく喋る王女だ。そのきつい香水の匂いのせいで味なんか分かるわけがない!)
さっさと食事を終わらせて、早く離宮に戻りたい。
その事だけを考えながらベアトリスの話に適当に相槌を打っていた時――。
「お食事中、失礼致します。陛下」
突然、側近のデニスが入室してきた。
「何事だ、デニス」
国王はデニスに顔を向ける。
「ええ……実は、陛下に大事なお話が……」
「話?話とは何だ?」
すると、デニスは素早く国王に近付くと耳元で何やら囁いた。
「な、何だとっ?!それは誠の話かっ?!」
国王の驚きの声に、その場にいた全員が注目する。
「お父様?一体何事ですか?」
ベアトリスは首を傾げて声を掛けた。
「……」
しかし、国王はそれには答えずにデニスに声を掛けた。
「連れて参れ」
「え……?で、ですが……」
戸惑うデニス。
「いいから連れて来るのだ、今すぐ!」
「は、はいっ!」
デニスは慌てて、走り去っていき……会場内は騒めいた。
「一体何があったのでしょうね?」
ベアトリスは隣にいるエルウィンに話しかけた。
「さぁ、私には分かりません」
(どうでもいいから俺に話しかけるな!)
何があろうと、彼は全く興味が無かったのだ。
自分の部下がこの会場に現れるまでは――。
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