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15-18 波乱の夜会 16
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「そうです、アリアドネ。ここで一歩前に進んで、足を閉じる……。その調子です。うん、中々お上手だ。筋が良いですね」
アリアドネの右手を取り、腰に手を当てて引き寄せながら王子が満足そうに笑みをうかべる。
「は、はい……ありがとうございます」
ダンスを踊るのは中々楽しかったが、思った以上に相手と至近距離で踊らなければならないことにアリアドネは戸惑いを感じていた。
それに、1人立食テーブルに残してきたエルウィンのことも気がかりだった。
(エルウィン様‥‥…今頃どうされているのかしら……?)
けれど、人混みに紛れて当然エルウィンの姿など見えるはずもない。
すると突然耳元で王子に囁かれた。
「どうしたのですか?アリアドネ嬢」
吐息が首筋にあたり、アリアドネはビクリとした。
「い、いえ。何でもありません」
思わず距離を取ろうとしたものの、グイッと腕を強く引かれて気付けば王子の腕に囚われていた。
「あ、あの……は、離して下さい……」
気恥ずかしさよりも、エルウィンのことばかりが頭を占めていたアリアドネは王子の腕の中でもがいた。
すると……。
「嫌です」
「え?」
耳を疑うようなセリフが王子の口から飛び出した。
「こ、困ります。わ、私は……」
「辺境伯のことを気にされているのですか?」
「!」
その言葉にアリアドネはビクリと反応した。
「貴女と辺境伯は婚約者同士と聞きましたが、どうにも2人の間には不自然な物を感じます。本当は違うのではないですか?」
「そ、そんなことはありません……私とエルウィン様は……」
するとその時、音楽が変わった。
「あぁ、音楽が変わりましたね。それでは次のダンスを踊りましょうか?」
「え?あ、あの!」
しかし王子はアリアドネの訴えに耳を貸さず、再び抱き寄せるとステップを踏み始めた――。
****
「全く……不愉快だ……」
1人残されたエルウィンは立食テーブルでワインを飲みながら人々の踊る様子を眺めていた。
そこへ、1人の若い女性が近づいて来た。
「あ、あの……もしよろしければ私と踊って頂けませんか?」
顔を赤らめて自分を見つめる女性にエルウィンは軽蔑した目を向けた。
「……失せろ」
「え?」
「俺は今ワインを楽しんでいるんだ。香水の匂いを振りまきながら近づいてくるな。折角のワインがまずくなる」
吐き捨てるように言うと、エルウィンは再びワインを飲み始めた。
「そ、そんな……!」
女性は目に涙を溜め、まるで逃げるように立ち去って行った。
(全く鬱陶しい……一体何人目だ?声を掛けてきたのは……)
エルウィンはため息をついた。
7人目までは数を数えていた。しかしそれも面倒になり、数を数える事すらやめてしまった。
乱暴にワインを煽るように飲みながら、エルウィンは夜会に参加してしまったことを激しく後悔していた。
「……もう我慢出来ん!」
飲み干したワイングラスを乱暴にテーブルに置くと、エルウィンはダンスが行われているホールへ向かった。
アリアドネと王子の姿を探す為に――。
アリアドネの右手を取り、腰に手を当てて引き寄せながら王子が満足そうに笑みをうかべる。
「は、はい……ありがとうございます」
ダンスを踊るのは中々楽しかったが、思った以上に相手と至近距離で踊らなければならないことにアリアドネは戸惑いを感じていた。
それに、1人立食テーブルに残してきたエルウィンのことも気がかりだった。
(エルウィン様‥‥…今頃どうされているのかしら……?)
けれど、人混みに紛れて当然エルウィンの姿など見えるはずもない。
すると突然耳元で王子に囁かれた。
「どうしたのですか?アリアドネ嬢」
吐息が首筋にあたり、アリアドネはビクリとした。
「い、いえ。何でもありません」
思わず距離を取ろうとしたものの、グイッと腕を強く引かれて気付けば王子の腕に囚われていた。
「あ、あの……は、離して下さい……」
気恥ずかしさよりも、エルウィンのことばかりが頭を占めていたアリアドネは王子の腕の中でもがいた。
すると……。
「嫌です」
「え?」
耳を疑うようなセリフが王子の口から飛び出した。
「こ、困ります。わ、私は……」
「辺境伯のことを気にされているのですか?」
「!」
その言葉にアリアドネはビクリと反応した。
「貴女と辺境伯は婚約者同士と聞きましたが、どうにも2人の間には不自然な物を感じます。本当は違うのではないですか?」
「そ、そんなことはありません……私とエルウィン様は……」
するとその時、音楽が変わった。
「あぁ、音楽が変わりましたね。それでは次のダンスを踊りましょうか?」
「え?あ、あの!」
しかし王子はアリアドネの訴えに耳を貸さず、再び抱き寄せるとステップを踏み始めた――。
****
「全く……不愉快だ……」
1人残されたエルウィンは立食テーブルでワインを飲みながら人々の踊る様子を眺めていた。
そこへ、1人の若い女性が近づいて来た。
「あ、あの……もしよろしければ私と踊って頂けませんか?」
顔を赤らめて自分を見つめる女性にエルウィンは軽蔑した目を向けた。
「……失せろ」
「え?」
「俺は今ワインを楽しんでいるんだ。香水の匂いを振りまきながら近づいてくるな。折角のワインがまずくなる」
吐き捨てるように言うと、エルウィンは再びワインを飲み始めた。
「そ、そんな……!」
女性は目に涙を溜め、まるで逃げるように立ち去って行った。
(全く鬱陶しい……一体何人目だ?声を掛けてきたのは……)
エルウィンはため息をついた。
7人目までは数を数えていた。しかしそれも面倒になり、数を数える事すらやめてしまった。
乱暴にワインを煽るように飲みながら、エルウィンは夜会に参加してしまったことを激しく後悔していた。
「……もう我慢出来ん!」
飲み干したワイングラスを乱暴にテーブルに置くと、エルウィンはダンスが行われているホールへ向かった。
アリアドネと王子の姿を探す為に――。
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