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15-19 波乱の夜会 17
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エルウィンは苛々しながらダンスを踊る人々の様子を伺っていた。
(どこだ……?一体何処にいるんだ?)
そのとき、青いドレスの女性が目に入った。
「あれか?!」
視力に自信のあるエルウィンは迷うことなく、青いドレスの女性の元へ向かうと紛れも無くアリアドネだった。
王子は満足そうに踊っていたが、アリアドネの顔には困惑の表情が浮かんでいる。
「アリアドネ!」
「え?!」
驚いて声を上げるアリアドネに対し、王子は動きを止めると穏やかな口調でエルウィンに話しかけた。
「どうしたのですか?辺境伯。ダンスは踊らないのでは無かったのですか?」
「ええ、そうです。私はダンスは踊りません。アリアドネを迎えに来ただけですから。彼女を放して頂きましょうか?」
エルウィンは殺気を込めた目で王子を見た。
「やれやれ……分かりましたよ。一応アリアドネ嬢は辺境伯のパートナーですからね」
王子はアリアドネの方に向き直った。
「今宵は私のダンスパートナーになって頂き、ありがとうございました。おかげで楽しい時を過ごすことが出来ましたよ」
そしてアリアドネの手の甲にキスをした。
「「!!」」
この行動にアリアドネとエルウィンが驚いたのは言うまでもない。
「殿下!何をするのです?!」
エルウィンの声には怒気が混ざっていた。
「レディーにご挨拶をしただけですよ。それでは失礼」
王子はそれだけ告げると踵を返し、ダンスホールから去って行った。
「アリアドネ。俺達も行こう」
エルウィンは王子が立ち去るとすぐにアリアドネに声を掛けた。
「え?行くとは……?」
「決まっている。夜会には参加したのだ。陛下の顔も立てたし、これ以上ここにいる必要は無い。離宮へ戻ろう」
(例え、アリアドネが嫌がっても強引に離宮に連れ帰ってやる。これ以上、こんな不愉快な場所になどいられるものか)
「ええ、そうですね。私ももう、ここから帰りたいです」
「何?本当に……帰ってもいいのか?」
その言葉にエルウィンは目を見開いた。
「はい、正直に申し上げますと……こういう場は苦手なので」
「そうか、それを聞いて安心した。なら帰ろう」
エルウィンはアリアドネの手を取った。
「はい。帰りましょう」
そして2人はパーティー会場を後にした――。
****
ガラガラと走り続ける馬車の中、エルウィンは窓の外を眺めながら一言も口を聞かなかった。
そんなエルウィンをアリアドネは不安な気持ちで見つめていた。
(どうしたのかしら?エルウィン様……城を出た時は感じなかったけれども、やはり私が王太子様とダンスを踊ったことが気に入らなかったのかしら?)
そこでアリアドネは勇気を振り絞って、自分から声を掛けることにした。
「あの、エルウィン様……」
「楽しかったか?」
「え?」
「殿下とのダンスは……楽しかったか?」
エルウィンはアリアドネの方を向くことも無く、尋ねた。
「そ、そうですね。それなりに楽しかったです」
「そうか……それは良かったな」
ポツリと返事をするエルウィン。
だが実際の所、本当は王子とのダンスは苦痛だった。けれど、アリアドネは相手が王子だった為に正直な気持ちを答えることが出来なかったのだ。
自分の言葉が、エルウィンの心をどれだけ深く傷つけたのかも知らずに—―。
(どこだ……?一体何処にいるんだ?)
そのとき、青いドレスの女性が目に入った。
「あれか?!」
視力に自信のあるエルウィンは迷うことなく、青いドレスの女性の元へ向かうと紛れも無くアリアドネだった。
王子は満足そうに踊っていたが、アリアドネの顔には困惑の表情が浮かんでいる。
「アリアドネ!」
「え?!」
驚いて声を上げるアリアドネに対し、王子は動きを止めると穏やかな口調でエルウィンに話しかけた。
「どうしたのですか?辺境伯。ダンスは踊らないのでは無かったのですか?」
「ええ、そうです。私はダンスは踊りません。アリアドネを迎えに来ただけですから。彼女を放して頂きましょうか?」
エルウィンは殺気を込めた目で王子を見た。
「やれやれ……分かりましたよ。一応アリアドネ嬢は辺境伯のパートナーですからね」
王子はアリアドネの方に向き直った。
「今宵は私のダンスパートナーになって頂き、ありがとうございました。おかげで楽しい時を過ごすことが出来ましたよ」
そしてアリアドネの手の甲にキスをした。
「「!!」」
この行動にアリアドネとエルウィンが驚いたのは言うまでもない。
「殿下!何をするのです?!」
エルウィンの声には怒気が混ざっていた。
「レディーにご挨拶をしただけですよ。それでは失礼」
王子はそれだけ告げると踵を返し、ダンスホールから去って行った。
「アリアドネ。俺達も行こう」
エルウィンは王子が立ち去るとすぐにアリアドネに声を掛けた。
「え?行くとは……?」
「決まっている。夜会には参加したのだ。陛下の顔も立てたし、これ以上ここにいる必要は無い。離宮へ戻ろう」
(例え、アリアドネが嫌がっても強引に離宮に連れ帰ってやる。これ以上、こんな不愉快な場所になどいられるものか)
「ええ、そうですね。私ももう、ここから帰りたいです」
「何?本当に……帰ってもいいのか?」
その言葉にエルウィンは目を見開いた。
「はい、正直に申し上げますと……こういう場は苦手なので」
「そうか、それを聞いて安心した。なら帰ろう」
エルウィンはアリアドネの手を取った。
「はい。帰りましょう」
そして2人はパーティー会場を後にした――。
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ガラガラと走り続ける馬車の中、エルウィンは窓の外を眺めながら一言も口を聞かなかった。
そんなエルウィンをアリアドネは不安な気持ちで見つめていた。
(どうしたのかしら?エルウィン様……城を出た時は感じなかったけれども、やはり私が王太子様とダンスを踊ったことが気に入らなかったのかしら?)
そこでアリアドネは勇気を振り絞って、自分から声を掛けることにした。
「あの、エルウィン様……」
「楽しかったか?」
「え?」
「殿下とのダンスは……楽しかったか?」
エルウィンはアリアドネの方を向くことも無く、尋ねた。
「そ、そうですね。それなりに楽しかったです」
「そうか……それは良かったな」
ポツリと返事をするエルウィン。
だが実際の所、本当は王子とのダンスは苦痛だった。けれど、アリアドネは相手が王子だった為に正直な気持ちを答えることが出来なかったのだ。
自分の言葉が、エルウィンの心をどれだけ深く傷つけたのかも知らずに—―。
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